「東名あおり運転」裁判で懲役18年の判決も…“あおり運転”に遭遇した時の正しい対処法
「あおり運転」が世間に広く認知され、厳罰化のきっかけとなった2017年の「東名あおり運転事件」。神奈川県大井町の東名高速道路であおり運転をした末に家族4人が乗る乗用車を高速道路上で停止させ、後続のトラックによる追突事故で死傷させたものだ。
今年6月6日、I被告(30)の差し戻し審で横浜地裁は、危険運転致死傷罪(危険運転致死傷罪)を適用できるとして、懲役18年を言い渡したが、被告側は即日控訴。結審まではまだ時間がかかると見られている。
その後もあおり運転を巡る事件は頻出している。
ニュースやワイドショーの「あおり運転」動画は“鉄板”!?
2019年には、常磐自動車道で、M被告が、20代男性の車に幅寄せや割り込みを繰り返して停車させ、男性の顔を殴って軽傷を負わせたなどの罪で、強要罪や傷害罪などに問われた。2020年10月に懲役2年6か月(保護観察付き執行猶予4年)で結審している。テレビ局のワイドショー関係者は話す。
「犯人蔵匿・隠避の疑いで逮捕され罰金30万円の略式命令を受け釈放された同乗していたK被告も大いに話題となりました。共にサングラスをかけ、どう喝しているドライブレコーダーの映像が何度となくニュースやワイドショーで流された。逮捕時、M被告が『Kさーん、手つないで』と発言した印象的な映像も何度もリピートされた。
実は、この事件に限らず、ドライブレコーダーによる視聴者提供の〝あおり運転の恐怖の瞬間〟などの映像は、とにかく数字が取れる鉄板ネタなんです。さらにこの事件は〝サングラスをかけた謎の女同乗者〟の存在が興味の対象となり、圧倒的な視聴率を稼ぎました」
「危ないことをしていない」意識でも“妨害運転罪”にあたる可能性
あおり運転はそれだけ大衆的関心が高い訳だが、社会問題化していたことを受け、2020年6月末に道路交通法が改正され厳罰化された。
交通事故や刑事事件を扱うことも多いベリーベスト法律事務所立川オフィスの佐久間一樹弁護士はこう話す。
「令和2年6月30日に『妨害運転罪』が施行され、〝あおり運転〟は厳罰化されました。一定の違反行為をした場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、さらにその行為により相手を危険に晒(さら)した場合には5年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されるようになりました。
注意すべきポイントは、実際に誰かに怪我をさせたり、高速道路等で他の車両を停止させたりしなくても、一定の類型にあたれば罰則の対象となる点です。そのため、運転者自身が『危ないことをしていない』という意識だったとしても、妨害運転罪にあたる可能性があります」
「一定の違反行為」とは、具体的には、以下の行為があたる。
- 車間距離を詰める
- 幅寄せ
- 蛇行運転
- 前に回り込んでの急ブレーキ
- クラクションでの威嚇
- 必要のないハイビームやパッシング
さらに法改正により、妨害運転罪には「免許取り消し」という厳しい行政罰が課せられるようになった。ハンドルを握った際には〝一発免停〟になどならないよう、あおり運転をしないよう十分注意したいところだ。
「あおり運転は、公共の場所で許されるべきはない危険な行為です。『妨害運転罪』の施行を受けて、警察もあおり運転に対してはこれまで以上に厳正な指導取締をすることが予想されます」(佐久間弁護士)
「あおり運転」に遭遇した際の対処法
一方で、運転中にあおり運転の被害を受けてしまったらどうすべきか。
「あおり運転は後方から、あおられることがほとんどのようです。警察庁が2019年に実施したあおり運転に関するアンケートによれば、回答者のうちの35%が過去1年間にあおり運転された経験があると答えています。
場所は、約77%が一般道路、約23%が高速道路。内容は8割が『後方からの著しい接近』です。現在、前方に加え、後方も録画できるドライブレコーダーが売れているようですが、まずは、とにかくドライブレコーダーを付けておくことが対策の第1歩と言えそうです」(夕刊紙事件担当記者)
前出の佐久間弁護士はこう続ける。
「普段からできる対処としては、追い越しをきっかけにしてあおり運転をされることも多いので、追い越しをするときは特に気をつけて運転したいですね。この他にも、まわりのドライバーがいら立つことがないような運転を日頃から心がけることも大切でしょう。また、ドライブレコーダーを設置していることをアピールするステッカー等を利用することも考えられます。
あおり運転に遭遇した際の対処法については、警察庁や県警等のWEBページでも周知がされていますが、冷静に対処しつつ、①安全な場所に避難すること、②110番通報をすること③警察が来るまで車外にでないことを基本的な対応として考えておくとよいでしょう」
“最悪”のケースに陥ってしまったら…?
さらに、コワモテの相手が車から降りてきて、ドアをドンドンたたき、『ドアを開けろ!』などと脅されるという最悪のケースに陥ってしまった場合はどうすべきか。前出の夕刊紙記者はこう続ける。
「ドアロックをして、ウインドーガラスは絶対に開けずに、車内からスマホで動画を撮影。そして冷静に110番通報することが推奨されています。スマホの撮影は、1人の場合はパニックになってしまい上手にできないことも考えられるので、やはりドライブレコーダーは付けておくこと、その上、時たま動作チェックもしておいたほうがいいと思いますね」
〝その時〟のために、平常時からの冷静な準備と心構えが必要だ。
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