「バナー広告」「LINE」「振込払い」「60代男性」がキーワード…  SNS型特殊詐欺「1人平均被害額約1400万円」データが示す被害の実態

弁護士JP編集部

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「バナー広告」「LINE」「振込払い」「60代男性」がキーワード…  SNS型特殊詐欺「1人平均被害額約1400万円」データが示す被害の実態
今年に入り急増ぶりが際立つSNS型投資詐欺(警察庁HPより)

警察庁は1日、2023年1月~6月までのSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について発表した。両詐欺を合わせた認知件数は5068件で被害額は約660億2000万円。そのうち、SNS型投資詐欺の認知件数は3570件で、被害額は約506億3000万円だった。

報道等でも多くの被害が報じられているSNS型投資詐欺。その急増ぶりは明らかだが、2023年1月からの推移でみると、この6か月の被害状況は際立つ(上図)。

前年の1月~6月と比べると被害額は約7倍増。1人当たりの被害額は約1418万円にのぼる。3570人の被害者で最も多かったのは60代男性で570人で男性全体の30.5%におよんだ。女性では50代の被害者が最も多く、495人(29.2%)だった。

やりとりの92.4%がLINE

被害者たちは、どのように詐欺グループに搾取されていったのか。データから、その手口は鮮明になる。詐欺グループと被害者とはまず、バナー等の広告(51.6%)で接点を持つ。その後、インスタグラムのバナー等広告(31.4.3%)やダイレクトメッセージ(29.3%)でコンタクトし、引きずり込まれる。

被害時の連絡は、LINEが92.4%を占めており、ほとんどがLINEを介して、詐欺グループの術中にはめ込まれたとみられる。弁護士JP編集部に意を決して、SNS型投資詐欺被害について情報提供してくれた70代女性は、「LINEをなんとかしてほしい」と、悲痛な声を上げていたが、それもうなずける結果だ。

連絡ツールの9割を超えるLINE(警察庁HPより)

手軽なコミュニケーションインフラとして定着したLINEだけに、ある意味でLINE側も被害者ともいえる。一方で自民党の著名人にせ広告・なりすまし等問題対策ワーキングチームが「公式アカウント作成時に本人確認」などの対策を求めるなど、「なしすまし」の温床となっている責任を問う声があがっているのも事実だ。

LINEも対策を強化

こうした動きや情勢に呼応し、LINEヤフーはLINEにおける詐欺への注意喚起をより強化。ともだち以外のユーザーからのグループトーク追加時やオープンチャット参加時に、「LINEを悪用した詐欺にご注意ください」とのメッセージを表示するなど、利用者がズルズルとひき込まれない策を講じている。

もっとも、詐欺被害に詳しい佐久間大地弁護士は、「被害にあわせないための対策として注意喚起等といっても、詐欺被害に遭われる方はそもそもだまされていることに気づいていません。ですから、おかしいと思うきっかけをつくる他に、そもそもその状況にならないようにすることが大切です」と提言する。

確かにSNS型投資詐欺の被害は、名前を悪用された著名人などが「ニセモノだ」とメディア等を通じ、声高に訴え、インスタグラムやフェイスブック等へ訴訟提起を行うなど、目立つアクションを起こして初めて知らされることも多い。そのさなかでも、億単位の被害を受ける被害が発生しており、注意喚起だけでは心もとない…。

振込で支払うと被害回復が困難になる実状…

最新となる6月単月だけのデータでみると、被疑者が詐称した職業のうち、「その他著名人」は半年累月の17.6%から10%に減少しており、詐欺グループが著名人悪用に警戒している傾向もうかがえる。

「振込んでくれ」といわれた時点で疑うのが「正解」だ(警察庁HPより)

また、前出の佐久間弁護士は、「銀行振り込みで支払ってしまった場合、被害回復の方法が乏しいのが問題」とも指摘している。今回公表のデータで、被害金の交付形態をみると、「振込」は88.9%におよぶ。こうした実態を考慮しつつ、金融機関などがさらなる規制等を設けることも、被害拡大を防ぐうえで不可避といえそうだ。

シニア層を中心に急速に拡大するSNS型投資詐欺被害。かなり踏み込んだ対策でなければ、この先の根絶は難しく、法規制も含めたより強い対策が早急に求められる。

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