夏のドライブ映えスポット「橋の上」は駐車禁止? うわさ検証でみえてきた意外な事実

山本 晋也

山本 晋也

夏のドライブ映えスポット「橋の上」は駐車禁止? うわさ検証でみえてきた意外な事実
こんな絶景ならつい駐車して撮影したくなるが原則NGが多い(やたがらす / PIXTA)

夏休み、サマーバケーションとなれば「映(ば)える場所」で撮影した愛車との写真をSNSなどに投稿する人も少なくない。確かに観光地的な認知度のある橋は眺めもよく、橋の上で愛車を駐車してツーショットを撮りたくもなる。

とはいえ、そうした写真をSNS等に載せると「橋の上は駐車禁止だ!」「違反行為を自ら晒(さら)して乙」といった違反を前提とした指摘コメントがつくことがある。果たして、橋の上に駐車することは本当に無条件に違反行為なのだろうか…。

橋を管理する人に聞いてみた

まずは東京都内随一の映えスポット、レインボーブリッジ(東京都港区)に確認してみた。同橋を管理する東京港管理事務所港湾道路管理課の回答は次の通りだった。

「レインボーブリッジは首都高速と一般道もありますが、どちらも駐車は禁止されています。もちろん、車両故障などやむを得ない場合はそれにあたりません」

レインボーブリッジは首都東京の真ん中を走っており、交通量も多い。そもそも路上に駐車する余裕はない。それでも時々、橋下の絶景みたさか駐車する車が見受けられるという。その場合は、「監視カメラがありますので、見つけた場合は遠隔で注意することもあります」とのことだった。

道交法上はどうなっているのか

同橋については、当然のように「駐車禁止」だったが、駐車違反に関する道路交通法の該当部分はどうなっているのだろうか。

第九節 停車及び駐車
(停車及び駐車を禁止する場所)

第四十四条 車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。

一 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
二 交差点の側端又は道路の曲がり角から五メートル以内の部分
三 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に五メートル以内の部分
四 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分
五 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から十メートル以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。)
六 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分

(駐車を禁止する場所)
第四十五条 車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。

一 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から三メートル以内の部分
二 道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から五メートル以内の部分
三 消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽そうの側端又はこれらの道路に接する出入口から五メートル以内の部分
四 消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽そうの吸水口若しくは吸管投入孔から五メートル以内の部分
五 火災報知機から一メートル以内の部分

以上のように、駐車禁止の標識がなくとも無条件に駐車や停車が禁じられているエリアは多いものの、道交法上はどうやら「橋の上」は無条件に駐停車禁止ではないようだ。

“橋の上駐車禁止説”はなぜ広まったのか

ではなぜ、「橋の上駐車禁止」説がまことしやかに流布したのか。

第一に、道交法には『当該車両の右側の道路上に3.5メートル(道路標識等により距離が指定されているときは、その距離)以上の余地がない場所においては、駐車してはならない』とある。日本に架かる橋のほとんどは欄干のない小さなもので道幅に余裕もなく、必然的にこの条件を満たしてしまう。そのため駐車禁止となりうる。結果、「橋の上は駐車禁止」がドライバー間で広まった――。

次に、冒頭のリンボーブリッジしかり、横浜ベイブリッジ(神奈川県)、明石海峡大橋(兵庫県)、伊良部大橋(沖縄県)など、映えスポットで知られる巨大ブリッジのほとんどが原則駐車禁止となっている。それらは訪れる人も多く、影響力もあり、「橋の上は駐車禁止」説が広く定着してしまった可能性がある。

さらに道交法では、坂の頂上付近は無条件で駐車禁止場所に指定されている。急勾配のある橋も一定数存在しており、その頂上付近は当然、駐車禁止だ。そうしたことを拡大解釈し、「橋の上は駐車禁止」がいつのまにか浸透したという説もある。

結局、橋の上での撮影はNGなの?

結局のところどうなのか…。「橋の上での駐車」は法律的にはOK。だが、原則駐車禁止にしている橋も多く、橋の大きさや形状によっては禁止の場所やケースもある。それらから、「橋の上は駐車禁止!」説が広まってしまった…。それがうわさの真相のようだ。

そうなると、橋の上での撮影は基本、問題なしに思えるが…。結論からいえば、安全面からは避けた方がいいといえる。

「橋の上は無条件に駐車禁止」。そう思っている人も少なからず存在している。一般的には「橋の上にクルマは止まっていない」という前提で車を走らせているドライバーが多いということだ。

そうなると、ドライバーの前方への注意が緩慢になりがちで追突事故の可能性が高まる。もし、橋の上に駐車して愛車とツーショット撮影中に追突されれば、弾みで撮影者が橋の下へ転落するなどのリスクもある。

せっかくの夏休み、気を緩めるのは結構だが、自分の身を守るという視点からいえば、不用意な行動はできる限り避け、最優先は「安全に楽しくドライブ」という意識だけはしっかりと持ち続けた方がいいだろう。

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