衝撃に弱い「携帯用扇風機」もし落下させてしまったら? 火災、発火など「製品事故」防ぐ“チェックポイント”

弁護士JP編集部

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衝撃に弱い「携帯用扇風機」もし落下させてしまったら? 火災、発火など「製品事故」防ぐ“チェックポイント”
若者のみならず“全年齢層”に普及しつつある携帯用扇風機(DragonOne/PIXTA)

夏の厳しい暑さが続く中、体を冷やすウエットシートやスプレー、水にぬらすと冷たくなるタオルなどさまざまな暑さ対策グッズの進化も目覚ましい。

そんな対策グッズで、特に目にすることが増えたのは「携帯用扇風機(ハンディファン)」だろう。2019年頃から若者の間で流行し、最近では普及が加速している。

しかし、そんな携帯用扇風機には、強い衝撃を与えたり高温の中に置いたりすることで、破裂や発火という重大な“製品事故”が起きる可能性があるとして、経済産業省所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)では注意を呼び掛けている。

携帯用扇風機「製品事故」5年間で51件

携帯用扇風機の多くは、スマートフォンやパソコンのバッテリー、モバイル充電器などにも使用されている「リチウムイオン電池」が内蔵されている。小型で大容量の電力を蓄えることができるリチウムイオン電池は便利な一方で、衝撃や熱に弱いという特性を持っている。

リチウムイオン電池の内部は電解液という可燃性の液体で満たされ、プラス極とマイナス極がくっつかないようセパレーター(絶縁膜)が設置されているのだが、落下など強い衝撃が与えられて電池内部が損傷したり、直射日光が当たり続けるなどして電池内部が高温になったりすると、破裂や発火を起こす危険性がある。

NITE製品安全広報課の課長・宮川七重氏は「落下の衝撃や高温下での異常な反応で電池内部が壊れ、ショートして煙を吹いたり、燃えたりするような事故が実際に起こっています」と話す。

携帯用扇風機の普及しはじめた2019年度から昨年度までの5年間に、NITEには51件の製品事故の報告があったという。事故の内訳は、火災22件、発火9件、発煙15件、破裂2件、異常発熱3件だ。

NITEYouTubeチャンネルより「『リチウムイオン電池』NGまとめ」

強い衝撃与えてしまったらどうする?

万が一、落下などによって強い衝撃を与えてしまった場合、どうすればいいのだろうか。

宮川氏は「安全を考えると使用中止が一番」としつつも、「実際問題、一度落としたくらいで使用をやめろと言うのは難しい」として、次のように説明した。

「落としたからといって全ての製品が壊れてしまうわけでも、全ての製品が発火するわけでもありません。熱や衝撃に大変弱いことがわかっているからこそ、製品自ら動作を止めるなどの安全機能がついている製品もあります。これを踏まえて、まずは丁寧に扱うこと、その上で自分のものは大丈夫か、異常がないか、“観察”していただくことが大切です。観察の結果、少しでも異常を感じた際には、すぐに使用をやめてメーカーや販売店に連絡するようにしてください」

具体的には、周りに燃えやすいものがない場所に置き、落とす前よりも発熱していないか、製品本体が “ぷくっと”膨れていないか、異臭がしないかなど、しばらく様子を見ることが必要だという。

そして宮川氏は「特に注意するべきは、充電する時です」と強調する。

「充電中が一番電池に負荷のかかっている状態なので、ちょっとした電池内部の破損など不具合が顕在化しやすいです。落とした後に充電するときは、可燃物が近くにない状態で充電してください。

寝ている間に充電しておくという人も多いと思いますが、できれば起きているときに、異常が起こらないか定期的に確認しながら充電していただけるとより安全です。

また、少しでも異常を感じたら、空のクッキー缶など燃えない容器に入れて保管することが望ましいです」

不安なときはいざ発火しても燃え広がらないよう缶に入れておく(yasuyasu99 / PIXTA)

「極端に安い」「日本語が怪しい」要注意

また、これから携帯用扇風機の購入を考えているという人に向け、宮川氏は「携帯用扇風機に限らずリチウムイオン電池が使用されている製品では、極端に価格が安いものは、その分品質が劣ることが考えられますので注意してください」と呼びかける。

「ネットで購入する際は、外国の事業者が販売しているであろう『日本語がちょっと怪しい商品説明』にも注意していただきたいです。インターネットを通じて外国の事業者から購入するというのは『直接輸入(個人輸入)』に当たり、安全性は自己責任です。いざトラブルが起きた際も、連絡先が書かれていなかったとか、連絡したら日本語が通じなかったといった話も聞きますので、安心できる事業者から買うことを心がけてください」

極端に安い製品に使用されることが多い“非純正バッテリー”の表記には危険のヒントが…(NITE「『低価格・高リスク』の非純正バッテリーに注意」より)

なお、電気用品安全法に適合している製品に表示される「PSEマーク」については、安全性が高いというアピールに使われている側面があると宮川氏は指摘する。

「ネットを見ていると、PSEマークが付いているので、他の製品と比べても安全性が高いといった表現をしている商品説明等がありますが、そもそもPSEマークは『電気用品安全法を遵守しました』と製造事業者又は輸入事業者が自らつけるマークです。

電気用品安全法の対象となっている製品の場合は、PSEマークを付けて販売しなければ違法になります。付けているから安全というわけではなく、安全確認を行った結果の義務的な表示です。

ちなみに、リチウムイオン電池でもエネルギー密度によっては電気用品安全法の対象外になるものもありますし、正しい表示がされておらずに法を遵守しているか疑わしいものもあります。PSEマークの有無“だけ”でその製品の安全性を計ることは難しいと言えます」(宮川氏)

ごみ収集車や処理場火災の原因にも

先に述べたように、リチウムイオン電池は携帯用扇風機だけでなく、スマートフォンをはじめ私たちの身近な製品に多く使用されている。そのいずれも「衝撃」や「熱」に弱いという意識を持って取り扱うことが、自分の身を守るためにも大切だ。

また、リチウムイオン電池を使用した製品の処理については、通常のごみと同様に捨てることは絶対に避けるべきだろう。通常のごみとして捨てられた結果、ごみ収集車や処理場が火災になるケースが全国で頻発しているという。

「リチウムイオン電池を捨てる際は、かならず、家電量販店の収集ボックスを利用するか(※実施していない店舗もあるため要確認)、お住まいの自治体のルールに従うようにしてください」(宮川氏)

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