“特徴・肥満体型”“女児の危険行為を注意”…「不審者情報」の奇抜な言動・行動を“ネタ”扱いすべきではないワケ

弁護士JP編集部

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“特徴・肥満体型”“女児の危険行為を注意”…「不審者情報」の奇抜な言動・行動を“ネタ”扱いすべきではないワケ
全国各地の警察や自治体は、地域の安全のため「不審者」の情報を公表している(keyphoto / PIXTA)

8月10日、Xで島根県警の公式アカウントが、前日に同県松江市の路上で男が女性とすれ違う際に着ていたパーカーを広げ、上半身を露出したという事案が発生したとする不審者情報を投稿。

投稿には男の特徴として「肥満体型」と記載されていたことから、ネット上では「肥満だから不快なのか?」「見た側が不快感を抱いたら変質者になるんだろう」などのコメントがあった。また、上半身裸がトレードマークのお笑い芸人、とにかく明るい安村を連想させるとの声もあった。

警察や自治体が迷惑防止条例などの法令に違反する不審者の情報を発信しているのは、地域住民の安全を図るためだ。しかし、ネット上では不審者情報は「ネタ」として面白がられることが多く、不審者は地域の治安に対する脅威であるという事実が軽んじられる傾向も存在する。

当初は「いい人では?」と擁護された「水筒」事案

7月16日には、福岡県糸田町内で小学生の女子らが「首から水筒をかけたら危ないぞ」と男性に声をかけられる事案が発生。同県の田川警察署が防犯メールで注意喚起した。

水筒を首や肩からかける行為には転倒した際に腹部を強打する危険があることは、消費者庁なども注意喚起している。そのため、地元紙の「西日本新聞」がこの事案を報じたところ、SNSを中心に「危険な行為を注意する『いい人』ではないか」などと男性を擁護する声があがった。

タレントのフィフィも、同月18日この事案に触れ、「そりゃ危険な行為を見ても我関せずの世の中になりますよ…」と投稿。

ところが、23日にウェブメディア「J-CASTニュース」が福岡県警に取材した記事を公開。男性は女子にしつこく声をかけ続け、閉じた状態の傘に大量のお菓子を詰め込んでいたなど、不審な要素が多々あったことが判明。女子らが危険を感じて逃げたことから、県警は「注意喚起が必要」と判断して防犯メールを送信したという。

「首から水筒をかけたら危ないぞ」との発言がメールに記載されたのは、女子らは男性が何を言っているか理解できず、言葉として覚えているのがこの発言だけだったことが原因。また、防犯メールには文字数の制限があるため、他の特徴は記載されなかった。

「J-CASTニュース」による報道の後、Xでは、子を持つ母親のアカウントによる「実際防犯メール受け取ってる現役子持ちはだいたい皆『水筒の注意だけだったはずがない』って言ってたけど、その通りだったよ」との投稿もあった。

不審者情報が公表される基準は?

不審者情報をどのような基準で「注意喚起が必要」などと判断し公表しているかは、警察や自治体ごとに異なる。

全国の「不審者の出没情報」を収集・配信している「日本不審者情報センター」代表の佐藤裕一氏によると、公表された不審者情報のなかには、後日になって「事件性はなかった」「知人による声かけだった」などと判明するケースもあるという。

「ただし、ある不審者情報が、後日に『実際には危険がなかった』と判明しても、それは結果的なものでしかありません。

被疑者の逮捕後に初めて『同地域では以前から子どもを狙ったわいせつ事件が複数件あった』などの情報が出る事態のほうが、地域とっての危険が高いでしょう。

また、子どもに対する事案に関しては、一見問題のなさそうな声かけであっても、それを親や学校に伝えるに至った子どもの直感は無視できないとも考えます」(佐藤氏)

基本的には、「水筒」事案のように警察が公表したメールには書かれていない問題が潜んでいる可能性をふまえて、一見問題のなさそうな事案でも警察や自治体が公表した不審者情報には「警戒すべき何かがあったのだろう」と判断することが適切だ。

また、佐藤氏は「近隣を含めた地域一帯で、同種の事案が2回発生したら、とくに注意したほうがよい」と、普段から安全情報をこまめに確認することの重要性を語った。

不審者情報の流れとメディアの役割

インターネット上の「まとめサイト」には「不審者セリフクイズしようぜwwwwww」などのタイトルが付けられた、不審者情報を面白がる記事も多い。

そもそも不審者情報には奇抜な言動が含まれる場合が多いため、「ネタ」として面白がられることは避けられない面がある。

「人権侵害や、地域の平穏な日常生活に支障を生じさせるなど、被害が起きた事案を『ネタ』にする風潮は好ましいことではありません。

一方で、奇抜な言動がまったく『ネタ』にされない浄化された社会であったとしたら、そのことにも不安を感じます」(佐藤氏)

メディアも不審者情報を発信する際には、奇抜な事案をことさらに選んで「面白い話」として伝えないように注意する必要がある。

また、「水筒」事案のように、不審者情報の詳細や続報を取材して、警察や自治体のメールだけでは伝わらない実態を明らかにすることもメディアの役割だ。

「不審者情報の流れには、(1)子どもが親や学校に報告する、(2)親や学校が警察に報告する、(3)警察が住民に報告する、という段階があります。『水筒』事案では、(4)メディアの取材報告が加わりました。関係者のそれぞれが、やるべきことをやった、といえます。

そして、最後に、欠けていることがまだ多いのが(5)事案解決の報告です。事件性があった場合となかった場合のどちらにせよ、詳細な情報があることで、地域住民の警戒感の緩和につながると考えているためです。

とくに、事件性のなかった場合の解決情報は『危ない不審者はいなかった』と地域住民を安心させるのみならず、公表された行為者の名誉回復になることからも、とても重要だと思っています」(佐藤氏)

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