「推しを見つけて」テニスの国際大会に東京都が都民400人“無料招待”の理由 スポーツ施策推進の背景に“法律”の存在も

弁護士JP編集部

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「推しを見つけて」テニスの国際大会に東京都が都民400人“無料招待”の理由 スポーツ施策推進の背景に“法律”の存在も
コロンビア戦は有明テニスの森公園内の有明コロシアムで行われる(yama1221 / PIXTA)

東京都は9月14・15日に有明コロシアムで開催されるテニスの国別対抗戦「デビスカップ」の日本対コロンビア戦に、都内在住・在勤・在学の400人を無料で招待する。

東京都では今回のテニスだけでなく、さまざまなスポーツの観戦機会を提供する「スポーツ観戦事業」を進めており、今年はこれまでに卓球やハンドボールなどの試合で無料招待が行われている。

実際に「デビスカップ」の抽選に応募した、都内在住の男性Aさんは「招待がなければ試合を見に行こうとは思っていなかった」と話す。

しかし、一体なぜ東京都がスポーツの試合への無料招待を行っているのだろうか。

「推しスポーツを見つけていただきたい」

こうしたスポーツ観戦事業は、東京都の「推しスポーツProject」の一環として行われている。

同プロジェクトは、2025年に東京での開催が予定されている世界陸上と、耳の聞こえないアスリートのための国際スポーツ大会「デフリンピック」を盛り上げようと進められているものだ。

「推しスポーツProject」の“名称”について、東京都生活文化スポーツ局の担当者は「覚えてもらいやすいポップな名前を付けた」といい、取り組みの目的を次のように説明した。

「最近、○○推しといった言葉がよく使われているかと思います。

東京都としては、都民の方がさまざまなスポーツに親しむ機会を創出し、ひとりひとりに、自分の好みにあった“推しスポーツ”を見つけていただきたいと考えています。

そして、それぞれが、“推しスポーツ”に楽しく、継続して取り組むことで、心身の健康や都民の健康長寿、それからウェルネス向上を推進することが、『推しスポーツproject』の目的です」(東京都生活文化スポーツ局・担当者)

都のスポーツ施策、背景に国の基本法

東京都がこうしたスポーツに関する施策を実施している背景には、「法律」の存在がある。

スポーツ基本法第10条は、地方公共団体に対し、「(国の)スポーツ基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画を定めるよう務める」ことを定めている。

これを受けて東京都では「東京都スポーツ推進総合計画」を策定。前出の担当者は「この基本計画にもとづいて、『推しスポーツproject』を含め、さまざまなスポーツ振興施策を実施しています」と語った。

気になる予算は…?

実施の目的や背景はわかっても、東京五輪の汚職事件問題も記憶に新しく、その“費用”が気になるという人もいるだろう。

「デビスカップ」に応募した前出のAさんも「スポーツのすそ野を広げる意味では意義があると思いますが、税金の使い道としては正直微妙な気もします…」と話す。

観戦事業にかかる予算についてはどのように捻出されるのだろうか。

「観戦の招待や優待は、主催者の協力が得られる試合・大会を対象としていますから、東京都側でチケットの購入費用など、予算をつけて実施しているものではありません。

チケットの抽選や、当選の連絡、当日の対応などもすべて、主催している協会、団体にお願いしています。

ただし、東京都では国際スポーツ大会の開催支援や誘致支援のため、1億2000万円の予算を計上しており、観戦招待の枠を提供していただくことや、観戦客にも体を動かす機会を準備するなどの条件を満たした大会には、一大会最大で3000万円を支援しています」(東京都生活文化スポーツ局・担当者)

トップレベルのアスリートを見る機会に

観戦招待の対象となる試合や大会は、都内開催のもので、世界や全国レベルのトップアスリートが出場するような「見ていて楽しいもの」が選ばれているとのことだ。

また、五輪や国体で採用されているなど、競技の人口や認知度も基準になるといい、「主催者の方からお声がけをいただいたのちに、東京都の方でこうした基準を超えているかどうかを確認して実施しています」(前出・担当者)

前出のAさんも「トップレベルの試合を見ることは実際にプレーする上でも重要なので、とてもいい取り組みだと思いますし、今後も機会があればほかの競技を観戦してみたい」と期待を口にする。

「デビスカップ」の抽選応募は8月28日の正午で締め切りとなるが、東京都では推しスポーツProjectとして現在、J1のFC東京対サガン鳥栖戦の親子ペア招待を実施している。

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