「袴田事件」9月26日の再審判決を前に大規模市民集会開催 「再審法改正」の実現を訴える

弁護士JP編集部

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「袴田事件」9月26日の再審判決を前に大規模市民集会開催 「再審法改正」の実現を訴える
会見に出席した(左から)新田渉世氏、周防正行氏、鴨志田祐美氏、金聖雄氏(9月10日都内/弁護士JP)

1966年に静岡県清水市で発生した、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された放火・強盗殺人事件。この事件で逮捕され死刑囚となった袴田巌(はかまだいわお)さん(88)の再審判決が9月26日に出される。

これに合わせて判決前の9月19日、市民集会「今こそ変えよう!再審法~カウントダウン袴田判決」が東京・日比谷公園 大音楽堂(日比谷野音)で開催される。集会の目的は、袴田事件で再審無罪を勝ち取り、再審法改正の実現につなげるというもの。

2023年再審開始が認められる

「袴田事件」と呼ばれるこの事件では、自白の強要があったと袴田さんは一貫して無実を訴えてきたが、1980年の最高裁で死刑が確定。しかし、2014年に静岡地裁が再審を開始、死刑および拘置の執行停止を決定、袴田さんは拘置所から釈放された。

その後、検察側の異議申し立てなどで引き延ばされたが、最高裁の差し戻し(高裁での審理へ)を経て、2023年3月13日に東京高裁により再審開始が認められた。再審決定の際、裁判のやり直しをめぐり争点となった「証拠」について、東京高裁・大善文男裁判長は「捜査機関の者による可能性が極めて高い」とねつ造の疑いについて踏み込んで言及した。

「日本の再審制度」の不備

袴田さんの再審(裁判のやり直し)まで、50年以上の年月が費やされたのはなぜか。その要因として指摘されているのが「日本の再審制度」の不備である。

10日、都内で開かれた前出の市民集会に関する記者会見には、鴨志田祐美氏(弁護士、日弁連再審法改正実現本部・本部長代行)、周防正行氏(映画監督、再審法改正をめざす市民の会共同代表)、金聖雄氏(映画監督)、新田渉世氏(日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会委員長)らが出席した。

鴨志田弁護士は26日の再審判決について、判決が袴田さんの長い戦いの終止符でなければならないが、これをゴールで終わらせてはならないとして次のように話した。

「お姉さんの袴田ひで子さんは、『巌(いわお)の48年を返してほしいなんていう野暮なことは言わない。でも、この48年を再審法の改正といった制度の改革につなげてほしい』と最近のさまざまな場面でこのようにおっしゃっています。 まさにこの袴田判決を、再審法改正、刑事司法の改革に向けたスタートにしなければいけない」(鴨志田弁護士)

「理不尽な状況を知ってほしい」

そもそも再審法という法律はない。刑事司法の手続きを定めた刑事訴訟法(刑訴法)の435条から453条までの「再審」に関する記載箇所を差しているもの。現状では、どのような場合に、具体的にどのような手続きを経て再審が行われるのかなど、明確なルールがないに等しく、担当した裁判官次第で不合理な格差が生じるなど、えん罪にも絡むさまざまな問題があるという。

「再審法改正を目指す市民の会」では、再審のルール作りのために、①再審のためのすべての証拠の開示 ②検察官の不服申立ての禁止 ③再審における手続きの整備、 の3つの改革を提言している。同会の共同代表、映画監督の周防正行さんは会見で、立ち上げから5年の思いと集会の意義について語った。

「日弁連の努力もあって、国会議員の方にはかなり浸透して再審法の改正の実現までもう少しというところまで来ました。ただし、やはり多くの市民の方への理解はまだまだ進んでない。ここに国会議員の方を後押しする形で、市民の方の賛同の声がどうしても必要だなという風にずっと考えてます。

袴田事件はよく知らないし、裁判のやり直しって何? という方もいると思います。僕が1番危惧してるのは、無罪判決が出ても、検察官が控訴すればまだ裁判が続くっていう現実があるということです。日本の刑事裁判の今の理不尽な状況を知っていただく、本当に入口になるような集会にしたいと思ってます」(周防さん)

「再審法改正問題を考える入口になる集会にしたい」と話す周防正行さん (9月10日都内/弁護士JP)

国会議員の中でも再審法改正の理解が広がるが

この6月、再審に関する法改正について、超党派の国会議員346人でつくる議員連盟によって要望書が法務大臣に提出された。その中でも、証拠開示の不十分さ、再審に関する手続きの規定が法律上ほとんどないことなどについて指摘がなされている。

国会議員の中でも再審法改正の理解が広がっていることは確かだが、一方で、政局に大きな変化が生じる可能性がある。奇しくも26日袴田事件の再審判決の3日前が立憲民主党の代表選挙、翌日が自民党の総裁選挙となった。

「誰が政権のリーダーになってもこの問題を政治主導でやってもらうことを働きかけていきます。そして、その後にあるかもしれない解散総選挙、国会に繋げていきたい。現在、国会内では、それなりに理解は広がっていますが、まだ一部の人たちにとどまっているように思います。法務省、検察も非常に抵抗が激しいです。やはり政治の力で今の勢いのそのままに、できれば秋の臨時国会、遅くとも次の通常国会には法案が出るというようなところまで持っていくために、(集会を起点に)働きかけたいです」(鴨志田弁護士)

19日の集会は、袴田さんのお姉さんひで子さんをはじめ、ユーチューバーのせやろがいおじさん、古舘伊知郎さん、衆議院議員の稲田朋美議員など各界からバラエティに富んだ人々が登壇、ショートムービー上映やミニライブも予定されている(雨天決行)。


市民集会「今こそ変えよう!再審法~カウントダウン袴田判決」
開催日時:2024年9月19日(木)午後5時~午後7時
場所:日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)(東京都千代田区日比谷公園1-5)
参加費・受講料:参加費無料・事前申込不要
詳細URL:
■日本弁護士連合会
https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2024/240919

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