給与明細は「豊かな人生を送る第一歩」 元国税局芸人が「毎月確認」を推奨する理由
会社員にとって馴染みのある「給与明細」。「もらったままよく読まない」「どうせ毎月同じだからチェックもしない」という人もいるかもしれない。
しかし東京国税局に勤めていた芸人・さんきゅう倉田氏は、「給与明細は毎月確認してほしい」と呼び掛ける。自分の給料が正しく計算されているか、税金はいくらひかれているか…給与明細からわかる“情報”を同氏が解説する。
※この記事は、さんきゅう倉田氏の著作『元国税局芸人が教える わかる、得する!超やさしい税金の教科書』(学研)より一部抜粋・再構成しています。
給与のデジタル払いが解禁された
給与の支払いは、直接現金で支払うことと労働基準法で定められていますが、労使の合意がある場合は銀行振込も認められています。
令和5(2023)年4月からは、給与のデジタル払いが解禁されました。スマホ決済アプリや電子マネーによる給与の支払いができるようになったわけです。いろいろ問題点も指摘されていますが、選択肢が広がるのはよいことです。
給与明細書をもらったら中身を確認しよう
給与明細書は、給与の根拠となる勤怠状況や給与の支給額、控除額の内訳が記載されている書類です。
社会人として、自分がいくら稼いだか、そこから何がいくら差し引かれているか、知っておくことは大切なことです。
ぼくの友人や芸人仲間でも、そのあたりが無頓着な人がたくさんいます。
会社から出されているとはいえ、間違いがないとも限りません。自分が働いた時間と労力を一銭たりともむだにしない、そういう心がけが豊かな人生を送る第一歩になると思います。
月給は基本給+各種手当
勤怠状況には、出勤日数・欠勤日数・残業時間・有給日数・有給残日数などの項目があります。給与計算が時間給であれば、勤務時間数になっています。欠勤や遅刻、早退があった場合、その分の賃金は支払われない会社があります(勤怠控除)。
勤怠管理システムが導入されている会社であれば心配いりませんが、ズレが生じることもありますのでチェックしておきましょう。
次に支給額です。基本給はベースとなる給料で、昇給や降給がない限り毎月同額が支払われます。基本給に残業手当、通勤手当、住宅手当などの各種手当を加えたものが総支給額、いわゆる月給になります。
つまり、基本給と月給はまったく別物なのです。求人広告などで「基本給25万円」とあればこれに各種手当が加算されますが、「月給25万円」とあれば各種手当を含んだ総支給額が25万円ということです。求人を見る際は、基本給なのか月給なのか確認するようにしましょう。
保険料は給料から天引きされる
控除額は、給料から天引きされているものです。
控除をおおまかに分けると、社会保険料、労働保険料、所得税、住民税の4つになります。社会保険料はさらに、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料などに分かれます。
労働保険には、労災保険と雇用保険の2つがあります。
パート・アルバイト社員で1週間20時間以上の労働時間があり、31日以上の雇用期間が見込まれる場合、会社は雇用保険に加入する義務があります。
雇用保険に加入すると給料から保険料が天引きされますが、条件を満たせば失業手当や育児休業給付金などを受け取ることができるというメリットがあります。
条件を満たしているのに、はなから「パートやアルバイトは雇用保険に入れないよ」という会社もありますので注意しましょう。
給与総支給額からこれらの控除額を引いた差引支給額が、実際に手にするお金です。
新入社員は住民税の対象外
住民税は、前年の所得に対してかかります。その年の6月から翌年5月にかけて、12回に分割して給料から天引きという形で納めます。
ですから、前年に所得がなければ通常住民税は発生しません。新卒2年目の社員の方が前年より給与が下がったと思うのは、1年目は住民税が引かれていなかったからです。
別の会社に転職した場合は、引き続き転職先で給料から天引きという形で住民税を支払います。
退職する時期や転職先が決まっているかなどによって住民税の支払い方法が違いますので、注意が必要です。
会社員は源泉徴収されている
会社員の方の所得税は、給料から天引きされています。
会社は給与を支払う際に所得税を徴収して、翌月10日までに国に納税しなければなりません。これを源泉徴収といいます。
源泉徴収は、個人事業主の方などが行う確定申告と同様に累進課税です。つまり、課税対象の金額が大きくなるほど税率も高くなり、納税額が多くなります。
本来、1年間の収入や控除額が確定していなければ税率や所得税額も決めることはできませんが、会社員の方は「給与所得の源泉徴収税額表」に則り、年間所得金額確定前に所得税相当額を源泉徴収するのが一般的です。
年末調整では、源泉徴収額よりも実際の所得税額が少ない場合はすでに納めた税金が還付され、源泉徴収額よりも実際の所得税額が多い場合は追徴されます。
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