旅先の写真撮影マナー“うっかり”「法律違反」を避ける4つの心得

弁護士JP編集部

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旅先の写真撮影マナー“うっかり”「法律違反」を避ける4つの心得
“映えない作戦”が決行される前の千葉フォルニア(sachinyan / PIXTA)

「カリフォルニアみたいな景色」として“インスタ映えスポット”となっていた千葉県袖ケ浦市の通称「千葉フォルニア」が、今年の春、静かに終焉を迎えた。

海沿いにヤシの木が立ち並ぶ風景はさながらアメリカ西海岸のよう。2016年あたりから注目されはじめ、ドライブやツーリングの目的地として人気だった。しかし注目を集めるにつれ、愛車をカメラに収めようと路上駐車する車やバイク、撮影のため道路に座り込む人、寝そべる人たちが後を絶たず、問題視されるようになった。

この状況を重く見た袖ケ浦市は、ヤシの木に「駐車禁止」「路上での撮影禁止」と大きく書かれた黄色いシートを巻く“映えない作戦”を決行。わざと景観を損ねることで、観光地として“強制終了”させるに至った。

“映えない作戦”決行後の千葉フォルニア。ヤシの木には「路上での撮影禁止」の文字が(Googleストリートビューより)

千葉フォルニアのように、観光地は時として、訪れた人たちのマナーの悪さによって存続できなくなることもある。一方で観光客は、もともと悪意のある人ばかりではなく、撮影に夢中になっているうちにマナー違反をしたり、場合によっては法に触れる行動をしてしまうということもあるのではないだろうか。

旅の思い出が台無しにならないよう、観光地での写真撮影の際に心得ておきたいポイントを、自身も旅行好きな齊田貴士弁護士に聞いた。

①進入禁止の場所に足を踏み入れていないか?

例:立ち入り禁止の場所、私有地(民家、畑など)、線路に無断で進入する

  • トラブル事例:哲学の木(北海道美瑛町)
    開けた丘にポツンと立つポプラの木は「哲学の木」と呼ばれ親しまれていたが、マナーの悪い観光客に周辺の畑を踏み荒らされる被害が多発。マナーを守るよう訴えるものの改善されず、ついには地元の人たちが木を切り倒すという決断に至った。

齊田弁護士:まず、立入禁止区域や田畑への侵入は軽犯罪法に違反するおそれがあります。

また、他人の家の敷地や土地に無断で正当な理由なく立ち入れば、建造物侵入罪が成立する可能性があるでしょう。

さらに、鉄道の線路や停車場などにみだりに立ち入ると、鉄道営業法第37条に違反すると考えられます。

②他の人の邪魔になっていないか?

例:ポジションを人に譲らない(同じ場所で撮り続ける)、通路や道をふさぐ、通行の邪魔になる場所取りをする、駐車禁止の場所に車を停める、三脚禁止の場所に三脚を立てる

  • トラブル事例:JR琵琶湖線沿線
    臨時列車として珍しい車両が走行した際に、大勢の「撮り鉄」たちが脚立を並べ、道路をふさいでしまった。現場は地元の人たちの生活道路であり、その様子がTwitterに投稿されると「酷い」「迷惑」などと大炎上した。

齊田弁護士:車道などを塞げば、往来妨害罪ないし道路交通法違反に当たると考えられます。

また、鉄道を占有し、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、往来危険罪、過失往来危険罪に問われる可能性があります。

さらに、占有場所が金銭(入場料)を取得して人々の閲覧に供するといったサービスを提供するような場所の場合、占有によってサービスの提供が困難に至っていれば、業務妨害罪が成立し得ます。

その他、禁止とされる事項を破ると、条例に違反するおそれがあります。

③自然を破壊していないか?

例:花や枝を折る、野生動物に近づく、国立公園の木道から降りる

  • トラブル事例:九品寺(神奈川県鎌倉市)
    彼岸花の群生が美しいスポットとして人気だが、SNSでは「花が踏み荒らされた跡があった」「花を折ってる人がいた」といった声が寄せられている。

齊田弁護士:花や枝を折る行為は、そのものに財産的価値が認められれば、器物損壊罪の成立が考えられます。

野生動物に近付く(触ったり、餌を与えたりする)行為は条例等でそれが規制されていた場合、条例違反に問われる可能性があります。

④他の人を邪魔者扱いしていないか?

例:構図に入ってきた人に暴言を吐く

  • トラブル事例:江ノ電沿線(神奈川県鎌倉市)
    江ノ電の珍しい車両が試運転されるとのことで、腰越駅〜江ノ島駅の間の交差点で大勢の「撮り鉄」が待ち構えていた。ところがお目当ての電車とともに撮り鉄たちの目の前を自転車に乗った外国人男性が通過したため「どけ!」「死ね!」といった怒号が飛び交った。その様子がTwitterに拡散されると、撮り鉄たちへの非難の声が殺到した。

齊田弁護士:暴言を吐きながら相手方にある行為を強制する場合は強要罪、相手方の身体や財産に危害を加える旨を告知して暴言を吐いた場合には脅迫罪、金銭を要求する暴言を吐いて畏怖した相手方から金銭を取得した場合には恐喝罪に該当する可能性があります。

少なくとも暴言を吐くことで相手方はいい気持ちはしませんし、それがいい結末を招くものではないので、下手に暴言は吐かない方がいいと思います。

「いい写真を撮りたい」と思うばかりに、知らず知らずのうちに我を忘れ、自らが「加害者」となるリスクは誰にでもあります。旅先ではくれぐれも気をつけて、素敵な思い出を残してください。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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