25件の突然死・自死は“氷山の一角” 「郵便局員過労死家族会」が発足、パワハラや労働環境の問題を訴える
9月19日、過労やパワハラなどにより自死・突然死した郵便局員の遺族らが代表を務める「郵便局過労死家族とその仲間たち(郵便局員過労死家族会)」の発足を知らせる記者会見が都内で開かれた。
会員は全国各地の郵便局員とその家族
郵便局員過労死家族会は今年7月1日に発足。共同代表は、2010年12月に自死した、さいたま新都心郵便局に勤めていた男性の妻である小林明美さん。また、同僚からのいじめと局からのパワハラや退職強要が原因で2019年5月に自死した、札幌豊平郵便局に勤めていた男性の遺族も共同代表に加わっている。
会の構成員は、郵便局と関連事業で働く労働者(受託業者や派遣労働者などを含む)とその家族、および協力者。
事務局長の倉林浩さんは、会の目的を「郵便局員の過労死被害の原因と責任を糾明し、補償および謝罪を獲得できるよう、被害当事者や遺族を適切な弁護士と支援運動に結びつけること」と説明。
「諦めている人々に、仲間がいることを伝えたい」として、全国各地の被害当事者や遺族が相互に協力し助け合うことを目指すと語った。
また、会では相談窓口を通じて被害の予防に取り組むほか、局員が過労死や精神疾患を起こさないための実効ある対策を日本郵政グループ各社に対し求めていく予定。
2000年以降で合計25件、2004年には4件の死亡事例
郵便局員過労死家族会が把握している限りでも、全国で郵便局員が突然死・自死した事例は、2000年以降の合計で25件あるという。
2024年には、6月までの間に同様の事例が4件起きている。うち3件は、いずれも新東京郵便局(東京都江東区)の深夜勤非正規社員が死亡した事例だ。亡くなった局員らは10年〜20年以上、深夜労働を続けていた。
局内での深夜労働は、基本的に拘束時間が11時間(1時間の休憩を含む)。新東京郵便局では賃金の深夜割増が通常よりも高比率であるため、多くの局員は生活費を賄うために深夜労働を続けているという。家族会の女性は「深夜に長時間拘束される状況が続くと、健康がすさまじく破壊される」と問題点を指摘した。
2023年5月には、川崎宮前郵便局で軽微な物損事故を起こした職員が事情聴取を受けた直後に、局舎から飛び降り自死した。また、奈良西郵便局では、2022年5月に10枚の始末書の提出を求められた期間雇用社員が自死している。
どちらの事例でも上司によるパワハラの存在が疑われているが、川崎宮前郵便局は局員らに「かん口令」を敷く対応をしており、奈良西郵便局は事件の再発防止を求めた労組に対し「余計な詮索はするな」という旨の回答をしたという。
家族会事務局の大澤靖志さんは「郵便局から情報が出てくることはまずない」と、怒りをにじませて語った。
「25件は氷山の一角に過ぎない。実際には、もっと多くが殺されていると思っている」(大澤さん)
配置転換や「トヨタ生産方式」、郵政民営化が影響
倉林さんは、郵便局員の自死事件が激増したのは1990年代後半からだと説明した。
「以前は、地域のことを隅々まで把握している『地域密着型』の局員が全国各地にいた。局員たちは『自分は生涯その地域で生きていく』と考えていた。 しかし、90年代から『人事交流』という名の、意に反した配置転換が行われるようになった。以降、過労自死が増えていった」(倉林さん)
2003年には越谷郵便局に効率化やサービス向上を目指すための「トヨタ生産方式」が全国に先駆けて導入、翌2004年にさいたま新都心局にも導入された。しかし、両局の労働環境は大幅に悪化し、2010年までに各局で2件ずつの死亡事件が起こっている。
2007年に郵政民営化法が施行されて以降は、非正規社員が大幅に増加した。前記した新東京郵便局の3件を含めて、近年では非正規社員が死亡する事例が多い。札幌豊平郵便局の事例では、いじめの加害者・被害者の双方が非正規社員だった。
「非正規雇用を激増させたことにより、全国の職場でかつては考えられなかったような状況があらわれ、いじめやパワハラが起こっている」(倉林さん)
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