「飲む日焼け止め」効果の口コミ投稿は“アウト”? 「薬機法違反」の“際どい”ボーダーラインとは

弁護士JP編集部

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「飲む日焼け止め」効果の口コミ投稿は“アウト”? 「薬機法違反」の“際どい”ボーダーラインとは
夏になると売り場が広がる薬局の日焼け止めコーナー

近年、美容に興味がある人たちの間で話題となっている「飲む日焼け止め」。文字通り「飲むことで日焼けを防止できる」とされるサプリメントで、その効果をうたう口コミも多く出回っている。

日差しが強いこの季節、サプリで簡単に肌ケアができると人気が広がっているが、実はこれら商品において、日焼け止めとしての効果効能を掲げることは薬機法(正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)で認められていないというのはご存じだろうか。さらに「飲む日焼け止め」と表示した広告すらも法に触れる可能性があるという。

「飲む日焼け止め」が薬機法でNGの理由

SNSや口コミサイトなどでは一般ユーザーによって「飲む日焼け止め」について語られているが、商品の販売元ページでは「飲む日焼け止め」の表記はもちろん、日焼け止めの効果についても一切書かれていない。

これらについて薬機法に詳しい大山泰寛弁護士は、「飲む日焼け止めと呼ばれる商品は食品に該当するため、『日焼け止め』と表示してしまうと薬機法・景品表示法に違反する」おそれがあるためと説明する。

そもそも「日焼け止め」をうたえるのは、紫外線防止剤など日焼けを防ぐ効果が認められた成分を含み、SPFやPA値(いずれもUVに対する防止効果)の測定を行った「化粧品」あるいは「薬用化粧品(医薬部外品)」である。クリームタイプをはじめ、スプレー、ジェル、スティックなどさまざまな形状のものが販売されているが、いずれも肌に直接塗布することで日焼けを防いでいる。

一方、「飲む日焼け止め」は健康食品、美容補助食品、機能性表示食品などとして「食品」カテゴリーで販売されている。

食品にもかかわらず医薬品や化粧品などと同様の効果効能を掲げれば、無承認無許可医薬品とみなされ薬機法違反に触れる可能性がある。さらに消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示せば、不当な表示とみなされ景品表示法にも違反する。

化粧品や健康食品を人に薦める時は…

冒頭で述べた通り、大手製薬会社、化粧品会社などは「飲む日焼け止め」の効果効能をうたっていない。

海外で販売されている「Sunscreen pills」(※1)と同じ成分を配合している商品が多いため、SNS上のインフルエンサーなどが「飲む日焼け止め」という言葉を使ったり、美容雑誌などで「飲む日焼け止め」の特集が組まれたことで、呼び名が広がってしまったようだ。

(※1)海外の皮膚科などで飲む日焼け止めとして販売されている製品の総称。アメリカ食品医薬品局(FDA)は「FDAの安全性と有効性の基準を満たすことなく、日焼けを防ぐ効果があることをうたい消費者を危険にさらしている」とSunscreen pillsの販売会社に対し警告文を送付した。(FDA STATEMENT/2018年)

一般的に企業が商品紹介を著名人に依頼した投稿や、雑誌への広告出稿であれば、公開・発売の事前に内容を確認することがほとんどで、法律に抵触することはまれだ。しかし、広告としてではなく、企業から商品だけを提供されたインフルエンサーなどが、評価をSNSや口コミサイトに投稿するケースも少なくない。

その場合について、大山弁護士は「効果や効能について言及しないで投稿する分には薬機法上問題ありませんが、商品を提供するなどした第3者を通し、意図的に商品が”高評価を受けている”ように表示させた場合などは、事業者が景品表示法に問われる可能性があります」と説明した。

また、投稿者が使用感や成分ではなく「飲んだから日焼けしていない」「肌荒れが治った」など効果効能を宣伝してしまうと薬機法に抵触する可能性もあり、充分な注意が必要であるという。

”医薬品”は口コミも禁止!

なお「医薬品」は、口コミ自体が禁止されている。

体質や症状の異なる他人が口コミに基づいて医薬品を使用すると副作用などを招く可能性があるためだ。病院などで自身が処方された薬を他者にすすめる行為は厳禁である。

消費者白書(平成29年版)によれば、商品やサービスを検討するときに口コミを参考にする人は15~40歳代で5割を超える。今やインフルエンサーによる投稿だけでなく一般ユーザーの口コミ投稿であっても、商品の宣伝になりえると言えるだろう。

大山弁護士は、化粧品や健康食品などをすすめる投稿者に対して、「厚生労働省が定めているガイドラインを正しく理解し、違反しているか不安に感じたら、インターネット上の無料で使用できるチェックツールなども活用しましょう」と呼びかけた。

参照:厚生労働省「医薬品等の広告規制について
日本化粧品工業連合会「化粧品等の適正広告ガイドライン

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