「あ然」犬をケースに入れず“膝に抱き”優先席に…電車内への「ペット持ち込みルール」法的規制は?

弁護士JP編集部

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「あ然」犬をケースに入れず“膝に抱き”優先席に…電車内への「ペット持ち込みルール」法的規制は?
ペットはケースに入れなければいけないのが国内の鉄道各社の一般的なルールだが…(PongMoji / PIXTA ※写真はイメージです)

電車に乗ったら、優先席に座った女性3人組がペットの犬をそれぞれ1匹ずつ膝の上で抱き、おしゃべりに夢中になっていた――。

東京都在住のAさんは、ある休日の朝、関東近郊の実家に向かう電車内で驚くべき光景を目にした。

同じ車両に乗り合わせた人々はけげんな視線を向けていたものの、女性たちは気づいているのかいないのか、お構いなし。電車がすいていたこともあり、Aさんが下車するまでは何事もなく時間が過ぎて行ったというが、場合によっては乗客同士のトラブルに発展したり、SNSで炎上騒動が巻き起こっていたかもしれない。

鉄道各社の「ルール」は?

「あまりに堂々としていたので、そういう(ペットをケースから出して乗せていい)ルールだったんだっけ? と一瞬、自分の“常識”を疑ってしまいました」

Aさんはこう振り返るが、日本国内の鉄道会社では一般的に、ペットは専用のケースに入れなければ車内に持ち込めないことになっている。

たとえばJR東日本の場合、「小犬、猫、鳩またはこれらに類する小動物(猛獣やへびの類を除く)」であれば、下記の条件を満たせば1個につき290円を支払った上で、“手回り品”として持ち込みが可能だ。

・他の旅客に危害を及ぼし、又は迷惑をかけるおそれがないと認められるものであって、3辺の最大の和が、120センチメートル以内の専用の容器に収納したもの
・専用の容器に収納した重量が10キログラム以内のもの
(同社旅客営業規則第309条)

また、民営鉄道でもっとも利用者数の多い(※)東京メトロも、条件はJR東日本と同様だが、こちらは手回り品料金が無料となっている(同社旅客営業規程第173条)。その他の鉄道会社でもおおむね同じようなルールが設けられているようだが、実際に乗車するときには、事前にしっかり調べてから出掛けるべきだろう。

※ 日本民営鉄道協会「大手民鉄16社 2024年3月期 決算概況および鉄軌道事業旅客輸送実績」より

Aさん自身は犬が好きだというが、「電車は公共交通機関なので、アレルギーがある人や、動物が苦手な人もいるかもしれない。いくら自分のペットがかわいくても、きちんとケースに入れるべきでは」と話す。

ルールを守らなかった場合、どうなる?

前述のように、電車内にペットを持ち込む際のルールについては、鉄道各社それぞれの営業規則などで定められている。これらは法律に基づいたものなのだろうか。

自身も保護犬と暮らす竹本理恵弁護士は、「法律で電車内への動物の持ち込みを規制しているわけではなく、あくまで各社が独自にルールを設けているのだと思います」と説明する。

「ただし、ルールを守らなければ乗務員や駅員から注意を受けるのは当然ですし、注意を無視し続けたり、暴言・暴行などあまりに悪質な態度をとれば、威力業務妨害罪などの刑事的責任を負う可能性もあります。

ここまでいかなくとも、たとえば東京メトロでは手回り品のルールを守らなかった乗客は『最近の駅に下車させ、乗車券類を無効として回収する』(同社旅客営業規程第174条)としていますし、持ち込むのに手回り品料金が必要なJR東日本は『旅客を最近の駅に下車させ、かつ(中略)荷物運賃及び増運賃を収受する』(同社旅客営業規則第312条)と定めています。

他の鉄道会社でもおおむね同じようなルールになっていると考えられるので、法律上の規制はないとしても、ルールはきちんと守るべきです」

ちなみに、乗客が直接注意することは「トラブルに発展する可能性が非常に高いので避けるべき」(竹本弁護士)。基本的には、乗務員や駅員に報告するのがベストな対応となりそうだ。

なお補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)については、身体障害者補助犬法が公共交通機関に対し受け入れを義務化しており、盲導犬使用者証の携帯や、補助犬であることを記す表示など、法が定める条件を満たした場合は、ケースに入れずとも電車やバスに乗車させることができる。

電車移動、ペットにはストレスが大きい

最後に竹本弁護士は、愛犬家としての立場から以下のように話す。

「そもそも電車内はいろいろな匂いや音にあふれています。ケースに入っているいないにかかわらず、ペットにとってはそれなりのストレスがかかるはず。電車に乗せるのであれば、まずは短時間から始めたり、混雑する時間帯の乗車を避けたり、ペットに無理をさせずに配慮することが大切です。

そして、一部の人がルールを守らなければ、ペットに対する世の中の視線もルールも、どんどん厳しいものになってしまうでしょう。

動物と“共存”していくというのは、飼い主だけでなく、周りの人も含めてみんなが気持ちよく過ごしていけるようにするということです。結局は自身のペットに対しても周囲の人に対しても、『思いやり』を持つことが大切なのではないでしょうか」

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