1年前の「iPhone」販売店前のトラブルを立件 背後に見え隠れする警察当局「トクリュウ」壊滅へのシナリオ

弁護士JP編集部

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1年前の「iPhone」販売店前のトラブルを立件 背後に見え隠れする警察当局「トクリュウ」壊滅へのシナリオ
警察当局はトクリュウ撲滅に取り締まりを強化している(リュウタ / PIXTA)

今月17日。警視庁暴力団対策課は東京・表参道の『iPhone』販売店前で怒号を上げるなど営業を妨害したとして、威力業務妨害の容疑で準暴力団『チャイニーズドラゴン』のメンバーら男女7人を逮捕した。

チャイニーズドラゴンのメンバーらは、昨年9月、iPhone転売のシノギを巡って二つのグループが店舗前でトラブルを起こしていたという。

1年前の『iPhone』販売店前のトラブル立件の背景

社会部担当記者が事件について説明する。

「逮捕されたのはチャイニーズドラゴンのメンバーで北区赤羽の白井加次郎容疑者(50)、中国籍の宋国慶容疑者(43)らです。

チャイニーズドラゴンは数年前から日本と海外のiPhoneの価格差に目をつけ、購入後に転売することをシノギの一つにしていました。

昨年の新型iPhone発売日の9月22日から27日にかけて、二つのグループが転売のシノギを巡ってトラブルに発展。店舗前で互いに怒号を浴びせあうなどして、店舗側が一時販売を中止せざるを得ない状況などに追いこまれ、被害届が出されていました」

チャイニーズドラゴンは地域ごとにいくつかのグループに分かれており、これまでもグループ同士でトラブルを起こしている。

二年前には池袋のサンシャイン60で開かれた “赤羽グループ”幹部の出所祝いの際、上野のグループと乱闘となり、複数の逮捕者が出ている。

立件した警視庁の本当の狙い

そうしたなかで、今回警視庁が一年前の事件をさかのぼって立件した本当の狙いは「チャイニーズドラゴンなどの準暴力団と親和性の高い“トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)対策の一環にある」(同前)という。

「警察庁の露木康浩長官はトクリュウ対策を命題としており、18日に行われた全国警察の捜査部門の課長らを集めた会議の席で『(トクリュウに)あらゆる方法で組織に打撃を与える取り締まりを徹底して欲しい』と激を飛ばしています。

今回の事件も転売時の本人確認の緩さなどが関連していると見られ、トクリュウが犯罪に利用する偽造を含めた身分証明書の確認などを、露木長官の退官予定の来年春までに徹底する狙いがあると思われます」

犯罪に利用する〝道具〟からつぶしていく

今月3日には「車に傷をつけられた」などと言いがかりをつけ、相手の免許証などを撮影。不正にクレジットカードを作成したなどとして詐欺、窃盗容疑で男女3人を逮捕した事件があった。これもこうした警察当局の狙いが「表れている」と、前出の記者が続ける。

「それほど大きなニュースにはなりませんでしたが、警察はこの事件を重要視しています。 事件では撮影した免許証をもとにオンラインでクレジットカードを作成。不正利用を繰り返していました。事件の背景には写真一枚でカードを作成できる審査の緩さが関係しています。

今後、警察はトクリュウが犯罪に利用する不正口座やカードなどの本人確認の緩さを規制する法改正も視野に入れ、離合集散を繰り返すトクリュウの組織からではなく、犯罪に利用する〝道具〟からつぶす方向に進めていくようです」

金融庁との連携強化など包囲網固める

警察庁は8月23日に連名で金融機関に詐欺対策の要請をするなど、金融庁との連携を強化しているほか、犯罪収益移転防止法の解釈について、13日に本人確認の”厳格化”を発表するなど、着々と“トクリュウ包囲網”を固めている。

今年上半期の特殊詐欺の被害額は約230億円、SNS型投資、ロマンス詐欺などの被害額は約660億円と看過できない状態だ。その多くにトクリュウが関わっている可能性が高いとみられる。

長官の激を受け、トクリュウ対策に本格的な〝のろし〟を上げた今後の警察の動向に注目したい。

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