「性的欲求を満たすため」7人の女児へ“わいせつ行為”元保育士が犯行動機語る 家族、お金、仕事、すべてを失った被告人の“言い分”

弁護士JP編集部

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「性的欲求を満たすため」7人の女児へ“わいせつ行為”元保育士が犯行動機語る 家族、お金、仕事、すべてを失った被告人の“言い分”
保育園を継ぐプレッシャーがあったと話した被告(画は6月21日裁判時/Minami)

勤務していた保育園で複数の女児らにわいせつな行為をしたとして起訴されている元保育士・長田凪巧(なぐみ)被告の裁判で、24日、被告人質問が行われた。弁護人、検察官のほか、被害者参加制度の導入により被害児童の保護者代理人(弁護士)からの質問も実施された。

被告人はこれまでの裁判で、勤務していた2カ所の保育園において計7人の女児に対し、わいせつな行為をしたことを認めている。

「私でも殺したいほど憎い気持ち感じたと思う」

この日の裁判では、予定されていた被告人質問に先立って、弁護人から被告人が9月に書いたという反省文が提出された。弁護人によって、一部抜粋の上、代読された反省文には、被害者や保護者らへの謝罪とともに、今後社会復帰ができても子どもにかかわる仕事にはつかないとの言葉もあった。

弁護人からの被告人質問でも、被告人は被害者とその家族に対し「心から、大変申し訳なく思う」と謝罪の気持ちを口にした。以下、弁護人と被告人の応答。

――被害者をどのように傷つけてしまったと感じているか。

まだ何も十分な知識がなく、何をされたかわからない中、大きくなってから傷ついてしまうこともあると思う。人間性を傷つけてしまった。

――被害者の家族はどう思っていると思うか。自分の子どもが同じ目に遭ったら親としてどう思うか。

自分の命より大切な子どもを、(保育園を)信頼して預けてくれているのに、根底から裏切ってしまった。深い傷を負い、人間不信になったかもしれない。私に対して、殺したいほどの恨み、敵意を持っていて、悲しみや守れなかったという悔しさもあると思う。自分の子どもが同じ目に遭ったら、私でも加害者に対し殺したいほど憎い気持ち、悲しさ、裏切りを感じたと思う。

――なぜ、加害行為をしてしまったか。

自分の欲に負けてしまった。自分の性的欲求をコントロールできず、欲の赴くままに行動してしまった。

――加害行為に至ったきっかけ、経緯は。

保育中に児童の1人が自慰行為(※)をしているのを見て、非現実的なところに欲を感じた。所持していた児童ポルノ動画に映っていたものと同じようなことをしてみたいと思った。

※乳幼児期の子どもであっても、布団に性器をこすりつけるなどの行為で気持ち良くなるという経験をすると同行為を繰り返すことがあるが、成人の自慰と異なり性的な意味はない。

――加害行為を止められなかった理由は。

頭と心では止めなくちゃいけないと常々思っていたが、体が反対方向を向いていた。自分のコントロールを失っていた。

――加害行為を撮影した理由は。拡散目的はあったか。

あとで見返そうと思った。拡散目的ではない。

――加害行為の原因は何だったと思うか。

一番は自分の行動を制御できなかったこと。(加害行為を)繰り返したのは、自分がおかしいことに気づきながら(止める)行動が怖くて何もできなかったこと。自分だけでどうにかしようと思ってしまった。

「自分は性依存症」治療の意志

――児童ポルノを集めていたのは、性癖だったからか。

性癖はそれだけではないが、一部としてある。

――保育所で働いた理由は、性癖と関係があったか。

関係なかった。父が保育園の園長で、幼少期から保育園を継ぐものとして育ってきた。自分でも継ぐと思っていた。人生の線路に従い、流れに沿って保育士になった。

――現在保育士免許は?

東京都の方が聴き取りに来られ、判決を持って処分が決まると聞いている。取り消しになる。

――現在、家族との関係は。

父、母との縁は切れている。妻とも離婚しており、事件以降は子どもにも一度も会っていない。個人の気持ちで言えば(子どもに)会いたいが、犯罪者の家族として見られるという傷を負わせてしまった。会ったり連絡したりはしていない。

――被害者に被害弁償する気持ちはあるか。

気持ちはあるが、資力がない。

――自宅(持ち家)があったのでは。

自分に知識がなかったため、(離婚の際に)妻の持ち物として所有権というのか…それがうつっている。ローンは5年ほどしか払っておらず、ほとんど残っている状態だった。

――両親にお金を借りることはできないか。

縁を切られている状態で、お金を借りる話はできなかった。

――今後、被害弁償についてどう考えているか。

何年後かはわからないが、社会復帰後に、受け取っていただける方には支払いたい。

――長期間の服役になると思うが、社会復帰後の生活についてどう考えているか。

子どもにかかわる仕事にはつかないが、仕事をして、受け取っていただける方には弁償金を支払う。また、自分は治療のために通院する。

――何の治療か。

自分は性依存症だと自認している。性依存症の治療ができる病院を二つほど調べたので、通って治療をしたい。

――現在はどうしているのか。

性依存症を理解するため、拘置所内で本を借りて勉強している。

――改めて今の気持ちは。

自分勝手な行動で傷つけ、裏切ってしまい申し訳なかった。私自身、親であり、子どもを守るべき立場でいながら、子ども、親の信頼をすべて裏切ってしまった。ただ謝るしかできない状況をつらく思っている。とても大きくて癒えない傷をつけてしまった。本当に申し訳ない。

「それについては答えたくない」唯一答えを拒んだ質問

次いで、検察官から被告人への質問が行われた。以下、その応答だ。

――保育士になったのは保育園を継ぐためというが、本当は保育士以外にやりたい仕事があったのか。

小さいころはあったが、本気で考えたのは保育士だけだった。保育士にやりがいも感じていた。

――警察の調べによれば、高校2年生の頃から未就学児~高校入学前の子どもが映った児童ポルノを収集していたというが、自らの性的欲求を満たすために犯行を行ったのか。

はい。

――捜査段階の取り調べにおいて、犯行は性的目的ではなく、自らも近親者から性的虐待を受けていたためだと言ったのは覚えているか。

それについては答えたくない。

――本当のことを話すべきでは?

申し訳ない。

――なぜ捜査段階でこのような話をしたのか。

同情されると思った。

――嘘だったのか。

話をすれば同情されると思った。

――家族と縁が切れているのはなぜだと思うか。

とんでもない事件を起こしてしまったから。

――拘置所に面会に来た人はいたか。

元妻、元妻の親戚、(被告人の)父。

――縁を切ると言われたのは誰か。

元妻側の親戚と父。

――反省文で、個々の被害者に謝罪していないのはなぜか。

どの被害者に対しても同じように、申し訳ない気持ちは共通である。個々の方に対する文も書いてみたが、自分の文章力では同じ言葉の繰り返しになってしまい、書けなかった。

――弁償金を友人に借りることは考えなかったか。

友人を頼る考えはなかった。お金を工面してもらえるような友人はいない。

犯行を続けながら保育士「不適切だと思っていた」

――被害者は7人ですべてか。

はい。

――児童の自慰行為を見たのが加害行為のきっかけだと言ったが、保育士として子どもがそのような行動をとることがあるという知識は持っていたのでは。

知識としては知っていたが、実際に見たことはなかった。

――なぜそれが加害行為に結びついたか。

児童ポルノは3次元で世界のどこかで実際に行われているとは思っていたが、どこか遠い世界だった。目の前で起きたことは、私にとって衝撃的なことだった。

――犯行を続けながら保育士をする自分をどう思っていたか。

率直に不適切であると思っていた。

――なぜ保育士を辞めなかったのか。

保育園を継ぐというプレッシャーを感じていた。父の経営する保育園に移り、いよいよ世代交代の秒読み段階に入っていることを重く感じていた。それと、自分を止められない怖さ、誰かに言うこともできず相談できる病院もわからず、どうしようもなかった。

――加害行為を止めるために何をしたか。

形として行動に移したことはなく、心と体の中で自制をかけることだけだったが、かけられなかった。

捜査段階の供述、真偽は不明も「動機」は明言

その後も検察官や、被害者参加人(被害児童の保護者)の代理人4人から、被害児童個人に関する質問などが続いた。基本的には、聞かれたことに対ししっかりと答えていた被告が、一部の児童に対する犯行の回数などは記憶があいまいだとして明言を避けていたのが印象的だった。

また、多くいる児童から被害者を選んだ理由などについては、一貫して「特別な理由はない」などと繰り返した。

最後には、左陪席を務める裁判官からもいくつか追加の質問が行われた。

そのうち、幼少期に近親者から性的虐待を受けたという捜査段階での被告人の供述について、改めて「虐待が実際にあったかは答えなくてよいが、動機に関係しているのか」と問われると、被告人は「それが絡んでいるものは答えたくありません」と黙秘した。

これに対し、検察官が「(供述は)嘘だったのではないか」と切り込むと、被告人は「動機については、性的欲求を満たすためという以外ありません」とはっきりと答えた。

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