常連客も標的“30年以上”盗撮続けた日サロ店長が逮捕…被害は決して「他人事じゃない」おぞましい理由

弁護士JP編集部

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常連客も標的“30年以上”盗撮続けた日サロ店長が逮捕…被害は決して「他人事じゃない」おぞましい理由
日焼けマシン内は目隠しの必要もあり、盗撮被害の”危険ゾーン”という(foly / PIXTA)

盗撮事件を報じる報道が途絶えない。駅で、学校で、施設で…。被疑者は教員、弁護士、裁判所職員、大学教授や警察官、医療従事者、会社員など多種多様だ。

これらの背景として、一般的にはスマホ普及もあげられるが、もはやそんな次元の話ではない。9月5日に性的姿態撮影処罰法違反で逮捕されたのは、都内の日焼けサロン店長だった。報道によれば、なんと盗撮歴は30年以上。常連客もターゲットにし、被害者は100人を超えるという。

日焼けサロンと盗撮の危ない関係

「日焼けサロンはむかしから盗撮しやすい場所として知られています。マシンの中は紫外線があるため利用者は目隠しをする必要があり、中はモーター音等があるので撮影に気づかれにくいんです。30年以上も盗撮をし続けられたのはそうしたことも理由にあると思います」

こう明かすのは、一般社団法人全国盗撮犯罪防止ネットワーク(全盗防)代表理事の平松直哉氏だ。店長の立場、そして常連客との関係性を悪用し、長期間にわたり、盗撮魔として性的姿態を盗み撮っていたというのは「鬼畜」というしかないだろう。

かつて「ガングロ」が流行した時代は若い女性の映像が撮れることから、いわゆる「流出もの」のアダルトビデオとして日サロを舞台にした盗撮ものが大量に市場に流通していたこともある。だが昨今は、流出ものは警察当局の取り締まりも厳しく、大手AVメーカーは手を出さないという。

盗撮が増加を続ける背景

一方で盗撮マニアが撮影した動画が直接、アダルト系のプラットフォームにインディーズものとして流出。メーカーものの市場を脅かし、一大勢力になっているという。

盗撮犯にとっては、自身の欲求を満たせる上、購買ニーズがあり、金になる。SNS上のコミュニティー等で、時に彼らは「神」とあがめられたりすることもあるといい、やめる動機よりやる動機をかき立てる構造が裏側で構築されている。

加えて、盗撮は依存症的な側面もあり、相当に強力な抑止力が働かなければ、こうした状況がおさまることはないのが実状だ。

平松氏が続ける。

「対策について聞かれますが、正直いまは”ない”としかいえません。例えば学校や施設では教員や従業員が隠しカメラを仕込むケースもあります。外部の者が設置する可能性も否定できません。隠しカメラの設置を封じることはかなり厳しいといわざるを得ないのが実状です」

今回の日サロの事例では、店長は客との距離感が近かったといい、撮られた常連客にすれば「まさか」の出来事だったに違いない。「常連だから大丈夫」も通用しないとなると、確かに被害阻止に打つ手はないのかもしれない。

過去にはたとえば、産婦人科や美容クリニックでの盗撮事案も発生している。患者にしてみれば、医療機関側を信じ、盗撮されるとはつゆほども考えていない中での被害。その分、心の傷も大きかったに違いない。

盗撮対策を徹底する施設も出始めている

「子どもに接する仕事につく人に、性犯罪歴の確認を義務付ける日本版DBSのようなものがもっと広がって、性犯罪に対し、より厳しく対処していくようにするしか方法はないでしょう。盗撮を罰する“撮影罪”にしても、もっと厳罰化してもいいハズです」と、四半世紀にわたり、盗撮事件を追求し続ける平松氏は力を込める。

憂うばかりの状況だが、わずかな光明も差し込みつつあるという。

「ある地方の教育系施設ですが、関係者でもスマホの持ち込みを禁止し、撮影する場合は場所と時間を限定するなどで、施設の長が盗撮対策を徹底しているんです。施設が盗撮対策するというと、盗撮があることを認めているようにもとられかねないので及び腰のところが多いのですが、この施設はそれよりも盗撮による被害を撲滅することに全力を注いでいます」(平松氏)

車両に防犯カメラを設置したり、駅構内に盗撮を抑止するようなミラーを取り付けたりするなどで、性犯罪が発生しやすい場所への設備側の対策も徐々に広がりつつある。それでも盗撮の検挙数は増え続けており、「検挙に至っているのは氷山の一角」(平松氏)という由々しき状況だ。

銭湯、フィットネスクラブ、スイミング施設など、盗撮のターゲットとされる施設は数多い。平松氏が代表をつとめる全盗防は、そうした企業や施設等に対し、盗撮を未然に防ぐためのカウンセリングや啓もう活動を行い、「盗撮は許しません!」と公言し、対策をするよう促している。

喜ばしいことではないが、対策を公にしているような施設でなければ安心して利用できない。そんな時代がすぐそこにまで迫っているのかもしれない…。

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