東京拘置所「矯正展」に来場者8800人超 プリズンカレー、昭和の名建築…“塀の向こう”の人気イベントをレポート

弁護士JP編集部

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東京拘置所「矯正展」に来場者8800人超 プリズンカレー、昭和の名建築…“塀の向こう”の人気イベントをレポート
被収容者の居室からは空しか見えない構造になっているという

東京拘置所(東京都葛飾区小菅)で10月5日土曜日、「第11回 東京拘置所矯正展 ~『まち』とともに~」が開催された。

当日はあいにくの雨模様だったが、8816人が来場。全国各地の刑務作業製品や、近隣自治会による飲食品、矯正関連の広報など、約90の出展ブースでにぎわった。

※ 写真はすべて弁護士JP編集部撮影

1日所長として俳優・緒形直人さんが登場

拘置所は、未決拘禁者(刑罰が確定していない被疑者〈容疑者〉、被告人)や確定死刑囚を収容する刑事施設。東京拘置所には2023年末時点で1605人が収容されている(うち47人は確定死刑囚)。もちろん、普段は一般人が足を踏み入れることはできない。

東京拘置所の矯正展では毎年、著名人が1日所長に任命され、テープカットを担当している。今年は俳優の緒形直人さんが登場。今年4~6月にTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』で緒形さんは無実の死刑囚を演じており、ロケで東京拘置所の面会所を訪れたことなどが縁になったという。

刑務官の制服に身を包んだ緒形さん(中央)

テープカットに先んじて、緒形さんは「この矯正展を通じて、地域のみなさまをはじめとする多くの方々に、矯正の活動、東京拘置所の活動について関心を持っていただければ幸いです」とコメント。

矯正展の会場内を視察した後、所長の任務として、被収容者に供される昼食を試食(検食)。検食簿に「良好」とサインした。

所長室で被収容者の昼食を検食する緒形さん
この日のメニューは鶏肉のトマト煮、昆布炒め、マンゴー缶、主食(ご飯)。ご飯は米7:麦3の割合で、1人前280gだという

「プリズンカレー」に大行列

イベントタイトルに「『まち』とともに」と掲げられているように、矯正展には地域共生の側面もある。刑事施設であることもさることながら、拘置所にいる被収容者のほとんどは未決拘禁者のため、年に数回、無罪を訴える支援者らが周辺でデモをすることなどもあるそうだ。

ステージでは近隣にある綾瀬中学校の吹奏楽部や、地元楽団による演奏が披露されたほか、地元の福祉団体などによる物品や飲食品の販売ブースも多く並んだ。

葛飾区保護司会による「ヨーヨーつり」

また、拘置所レシピで作られた「プリズンカレー」のブースには行列ができ、正午前にはいったん売り切れとなる人気ぶりだった。

スパイスが利いたプリズンカレー。もち麦入りのご飯で食べ応えもある

「1/6スケールの居室模型」に興味津々

矯正広報の一環として人気だったのは、被収容者の資質鑑別を応用した「性格検査」。数十問からなるマークシート式の質問に答えると、自身がどのような性格かを分析してもらえるとあって、各回の整理券はあっという間に配布終了となっていた。

性格検査の結果(一例)

また、実物の1/6スケールで再現された居室模型の展示コーナーでは、じっくりと興味深そうに眺めている人が多いのが印象的だった。

被収容者の居室模型(共同室)

名建築「旧小菅刑務所庁舎」の見学も

重厚感のあるX状の建物が印象的な東京拘置所だが、その敷地内にはひっそりと

名建築”が残されている。正面から見た姿が「翼を広げた鳥のよう」とも評されるその建物は、東京拘置所の前身「旧小菅刑務所庁舎」。司法省の建築家だった蒲原重雄(かんばらしげお)氏が設計し、昭和4年(1929)に完成した。

正面から見た旧小菅刑務所庁舎

喜劇王・チャップリンは「監獄を見ればその国の文化水準がわかる」として訪問先の国々で刑務所を見て回ったことでも知られ、旧小菅刑務所にも訪れて絶賛したという。

矯正展では内部も公開され、復元された旧所長室などから当時の雰囲気を感じられたほか、旧小菅刑務所など東京拘置所の前身となった刑事施設についての解説も行われた。

内部の意匠にいたるまで自由な造形表現が印象的
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