「民間では絶対許されない」東京都のスクールカウンセラー250人“大量”雇い止めで都を提訴

弁護士JP編集部

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「民間では絶対許されない」東京都のスクールカウンセラー250人“大量”雇い止めで都を提訴
会見を開いた弁護団の笹山尚人事務局長(左から2人目)ら(10月9日 都内/弁護士JP編集部)

東京都の公立学校で働くスクールカウンセラー(SC)10人が10月9日、不当な雇い止めを受けたとして、都に対しSCとしての地位確認と損害賠償を求め東京地裁に提訴した。

同日、原告代理人弁護士らが都内で会見。原告の一部も出席した。

東京都、更新を希望する250人を雇い止め

東京都のSCは特別職の非常勤勤務の特別職として1年ごとに任用され、希望があれば更新されるという実態が続いていた。

しかし、2020年4月に地方公務員法が改正されると、東京都のSCの任用形態は「会計年度任用職員」に移行。東京都教育委員会は、会計年度任用職員の更新限度について4回・5年と規定し、限度を超えて任用継続を希望するSCは、他の新規応募者とともに、公募手続きを受けるよう求められた。

結果として、2024年度のSCの応募では、更新限度を迎え公募に申し込んだ1096人のうち、原告10人を含む250人が不合格や、補欠を意味する補充任用候補者となり、大量の“雇い止め”状態となった。

「民間では絶対許されない」が“難しい裁判になる”

原告側は会見で、4回・5年を更新限度とするルールを、専門性や継続性が必要とされるSCに適用し、任用継続を希望するSCの更新を拒絶することに合理的な理由はないと主張。

これまでの勤務実態や、長期間働き続けてきたことから、更新に期待を持つのは当然であるとして、東京都の手法を批判した。

弁護団の笹山尚人事務局長は「民間では絶対許されない手法だ」と述べ、以下のように訴えた。

「民間の場合、労働期間に定めがある人でも、3年以上働いていれば更新の期待を持つとして、雇用主側が一方的に雇い止めをしないよう労働契約法19条によって保護されています。それが、地方公務員であればこうした期待を無視し雇い止めすることが許されるのか、というのがこの裁判の争点です。

これまで『公務員の任用は、通常の雇用とは法律関係が違い、地方公務員法や国家公務員法に基づいて対応するというのが基本的原則だ』という枠組みから、裁判所はなかなか出ようとしません。

残念ながら、国家公務員法や地方公務員法の中には労働契約法19条のような規定はなく、過去に同様の問題にトライした裁判例もあるにはありますが、非常に少ないため、難しい裁判となることが予想されます」

会計年度任用職員の制度改革訴える

会見では続いて、弁護団の平和元団長がこの裁判の社会的な意義について語った。

「SCのみなさんはもともと、非常勤の特別職で、経験が必要な職場でもありますから、6年間は異動しないことを基本的な原則として仕事をしていました。ですから、継続して働き経験を積んで良い仕事をしてきたというプライドがあるわけです。

ですが、会計年度任用職員の制度では、専門職として経験を積んで良い仕事をしたとしても、更新を拒絶される可能性があり、身分の保障がなく不安定です。

裁判を通じて、この問題をはっきりさせるとともに、制度の改革を実現させたいと考えています」

原告ら「もう1度戻りたいが、黙っていては駄目」

会見に出席した原告からは、雇い止めに対するショックや怒り、対応してきた生徒を心配する声などがあがった。

原告の1人は、再任用のための公募手続き自体が公平公正ではなかったと憤る。

「公募の手続きでは、新規で採用を目指す人との機会均等を理由に、これまでの勤務評定がまったく加味されず、面接のみで評価されました。

しかし、面接で聞かれた質問は人によってバラバラで、なかには圧迫面接を受けた人もいたそうです」

また、別の原告は「もう一度現場に戻るために動いているが、訴訟で名前が伝わってしまうのではと思うと怖い」とも明かした。

「何か不利益があったらどうしようとも思いますが、黙って我慢していても駄目だと感じたので、今回の訴訟に参加しました。

原告になった10人以外にも、雇い止めに遭い、助けを求められず、提訴もできずにいるSCが200人以上います。この問題を多くの人に知ってもらい、お力添えをいただければと思います」(同前)

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