同性婚を認めないのは「違憲」東京高裁が認定 原告ら立法府に「法的な支え一刻も早く」切望
同性同士の婚姻が認められないのは憲法違反だとして、同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、東京高裁で下された。谷口園恵裁判長は、同性同士の婚姻が認められないのは、法の下の平等を定めた憲法14条1項および婚姻における個人の尊厳を定めた24条2項に違反すると判断。婚姻の平等をめぐる裁判は全国5か所で展開されており、高裁での違憲判決は、3月の札幌高裁に続き2例目となる。
本訴訟結果を受けて弁護団と原告団が都内で記者会見を開き、東京高裁の判決内容について、「画期的な内容」だと評価した。
性的指向による不利益「合理的根拠がない」
今回の判決では、婚姻について「当事者間の親密な人間関係を社会的に正当なものと認めるものであり、一定の法的効果を与えるための制度である」と認定。現行の民法は、男女の夫婦とその間に生まれた子どもを一般的に想定しているとしつつ、「この想定に当てはまる家族だけが正当な家族としているわけではない」と判断。さらに「婚姻関係は生殖や養育よりも当事者間の永続的な関係を重視している」と指摘した。
その上で、性的指向によって不利益が生じている状態には「合理的根拠がない」とし、現行法令が民法739条で規定する「配偶者としての法的身分関係」が同性愛者に対し認められていないことは、差別的な取り扱いをするもので憲法14条1項と24条2項に違反すると認定した。
判決はそこからさらに踏み込み、これを解消するための具体的な立法について、「男女間の婚姻関係と異なるものにすることは、憲法14条1項違反となり得る」とも付け加えている。
つまりは、同性間カップルでも男女間のカップルと同様の権利を保護されなくてはならないとした。
「配偶者」の単語を何度も使用した判決内容
弁護団の寺原真希子弁護士は、会見で判決の5つのポイントをそれぞれ以下のように解説した。
①判決が「婚姻制度の目的」について検討していること
婚姻制度の目的は、社会のあり方と時代によって変わっていくと示された。これまで婚姻制度で重要とされた生殖能力については、民法では婚姻の要件となっていないことを踏まえ、結婚する者同士の関係性を重視した。
寺原弁護士はまた、判決文が「家族」ではなく「配偶者」という単語を繰り返し使用していることについて、その存在が安定して充実した社会生活を送る基盤であると認めている点が画期的だと評価した。
②憲法24条1項(結婚の自由)の解釈について
憲法24条1項「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する」が制定された当時は、男女間の婚姻が想定されていたが、それは同性婚の議論がなかったためだとしている。そのため、両性と記述されていることは、同性間の婚姻を認めない趣旨にならないと結論づけた。
なお本判決において、24条1項については違憲か合憲かの憲法判断はなされていない。
③性的指向による「区別」について
かつては同性愛が病理とされ、その社会通念に従って憲法も制定されたが、現在、性的指向が本人の意思で選択できないことは国際的にも、わが国の国の施策に係る基本理念としても明らかだとした。パートナーシップ制度の導入が地方公共団体でも進み、国民の間でも同性婚制度の導入に賛成する者が年を追うごとに増える状況になるなど、同性カップルを異性カップルと等しく保護すべきという意識の高まりがあるとも言及。すでに同性カップルの生活が社会に存在していることについて、2ページに渡って記載されている。
④異性カップルと同性カップルの区別の「合理性」について
異性カップルが生殖と養育に関して重要な機能を果たしてきたのは否定できないが、それが婚姻の不可欠の目的ではないと認定した。さらに、同性カップルに異性カップルと同等の法的利益を与えても、異性カップルの権利が脅かされることはないとして、今後も生殖の社会的機能は男女間のカップルによって果たしうると判断された。
さらに、自然生殖だけではなく、同性カップルも養子縁組などで家族を営んでいるケースもあることから、同性カップルにも養育の実態が認められるとし、同性カップルでも子どもを育てられることを認める内容となっている。
⑤配偶者としての「法的身分関係」
現在の民法と戸籍法を改正する以外にも、婚姻とは異なる制度を作る方法もあるとした上で、しかし配偶者の相続権など、婚姻に関連づけられた法的身分関係や権利にも考慮して憲法違反とならないようにしなければならないと指摘。
この指摘に対し寺原弁護士は「立法府がどのように同性カップルの権利を保護するか、その手段について具体的に踏み込んでいる。事実上、同性婚姻関係も男女の婚姻関係と同等の権利を有するものにする必要があると言っているに等しい」と述べ、これまでの判決にはなかった大きな要点だと強調した。
原告団は、亡くなった仲間を想い涙
原告団の小野春さんは、会見で判決について「パートナーと3人の子どもを育てているが、いろいろな家族があることが認められて本当にうれしい。自分の思いがきちんと伝わった判決内容になっていると感じた」と語った。
また小野さんの傍らには、原告団のひとりで2021年に亡くなった佐藤郁夫さんの写真も飾られ、「この判決を一緒に(天国で)聞いてくれていたと思う」と涙ぐむ一幕もあった。
同じく原告団の小川葉子さんもはっきりと違憲判決を聞けたことを喜んだ。
2019年の提訴から5年。違憲判決が聞けたことには安堵した様子を見せた一方で、「高齢者となり、自分にもパートナーにも残された時間は少ないし、身体も悪くなってきている。法的な支えがあればもっと安心できるので、一刻も早くという気持ちです」と述べた。
大江千束さんは、長く同性婚を求める活動に関わりながらも、「日本では無理ではないかと思ってきた」と明かしたが、「この流れが途切れないようにもう少し頑張りたい」と改めて前向きな姿勢を示した。
今後、同訴訟は12月13日に福岡高裁での判決を控える。高裁での違憲判決が続くか、注目が集まっている。
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