「女の子の紹介料は、1人1〜2万円で…」スカウト・ホストらへの“バック”の実態とは? 警察庁が規制に向け聴き取り実施
東洋一の歓楽街と称される新宿・歌舞伎町。
近年、ホストクラブを利用した女性が高額な料金を支払えず「つけ払い」し、その返済のために路上に立って売春するという、いわゆる「売掛金」をめぐるトラブルが社会問題化した。ホストクラブ側も対応を迫られ、歌舞伎町のクラブは売掛金システムを全廃することになった。
しかし、代わりにホストが個人的に金銭を立て替える「立替金」という新たな仕組みが出来上がり、今も女性たちがその返済のために苦しんでいる実態がある。
さらに、借金漬けになった女性たちを男性たちが“スカウト”し手駒として風俗店などで働かせるエコシステムのような構造が明らかになりつつある……。一体どういうものなのか。
紹介男性にお金が入り続ける「スカウトバック」
「僕はフリーのスカウトで、路上で(女の子を)スカウトしています。複数の店舗と契約していて、完全歩合制です。女の子の紹介料は、1人1〜2万円。それと、女の子の売り上げに対し“バック”(報酬)が入ります。業種やお店によって違っていますが、たとえばガールズバーやキャバクラは10%、ヘルスやソープランドの場合は10〜20%。バックの比率は、お店との付き合いの長さによっても変わってきます。バックは、紹介した女の子が店を辞めない限り入り続けます」
こう話すのは歌舞伎町の路上で女性に声をかけているスカウトマン(30代)。本来彼が行っているスカウト行為は、各都道府県の迷惑防止条例や職業安定法などに抵触する行為だが、彼の月収は、数百万円に上ることもあるという。
女性を風俗に紹介し、その女性が働いている間は男性にお金が入り続ける「スカウトバック」という報酬システム。中には、悪質なホストとスカウトが女性客の情報を共有しているケースや、風俗店がスカウトに対して支払うバックがホストにも分配されている実態があることもわかってきた。
こうした事態を受けて、警察庁は有識者からなる「悪質ホストクラブ対策検討会」で被害女性を支援する団体などにヒアリングを行っている。
“あえて”借金漬けにできる女性客を狙っている可能性も…
検討会の資料によれば、悪質ホストクラブの被害としては、主に以下5点が挙げられる。
①料金の虚偽説明
②色恋を手段として女性を依存させる行為
③女性客を酒に酔わせて正常な判断ができない状態にさせ高額な遊興・飲食をさせる
④売掛金・立替金などの取り立てに際して、支払わなければ実家に行くなどと脅す
⑤売掛金・立替金などの支払いをさせるために女性客に売春などを唆す、あっせんする
「スカウトバック」が発生するのは、このうちの⑤のケースだ。
風俗店やスカウトは悪質ホストと手を組み、ホストクラブの代金を支払えない女性を紹介してもらう。ホスト側は代金を回収できるだけでなく、紹介の見返りとして、その後もバックが入り続ける。
こうした構造のため、ホストらは“あえて”借金漬けにできる女性客を狙っているという指摘も検討会ではなされた。風俗店に紹介された女性は、ホストらに対する返済という経済的な問題が解決できたとしても、精神的、身体的に深刻な被害を受けると言われている。
現在の法律では性風俗店に違法なあっせんをしてバックを受け取ったホストやスカウトは罪に問われるが、支払った性風俗店側への規制はない。
これまでもホストらが客の女性を売春させたなどとして、風営法や売春防止法、職業安定法などの容疑で逮捕されることはあったが、「スカウトバック」の仕組み自体を取り締まることができなければ焼け石に水と言えるだろう。
警察庁は「スカウトバック」の規制を盛り込んだ、風営法の改正に向け調整を進めるとしており、検討会でも「ホストやホストクラブが得ている利益を精査すべき」「ホストは個人事業主だが、ホストを管理する店側にも罰則が必要ではないか」など意見が出ている。
具体的で実効性のある規制を導入できるか。注目する必要があるだろう。
闇バイトと共通「SNS」でのスカウトも発生
ちなみに、「歌舞伎町に縁がないから大丈夫」と思っている人でも注意が必要だ。実は現在問題となっている闇バイトと同様、SNSを介したスカウトも多い。
2017年10月に発覚した、神奈川県座間市の男女9人殺害事件の犯人・白石隆浩死刑囚は、殺人事件を起こす前、歌舞伎町の路上やTwitter(現在のX)でスカウトを行っていた。
同死刑囚は事件発覚前の17年2月、売春をさせると知りながら茨城県内の風俗店を女性に紹介したとして、職業安定法違反容疑で逮捕され、5月に有罪判決(懲役1年2月・執行猶予3年)を受けている。
死刑判決前、筆者の面会に応じた白石はこう話していた。
「Twitterでのスカウトは、特に仕事を求める女性からの反応がよかったですね。ダイレクトメール(DM)で『仕事がしたい』って(来る)。スカウト時代には、アカウントは10個持っていました。コツは数打つこと、です」
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