スルガ銀行、不正融資問題の“被害者”に「デモ差し止め」求め提訴…被告らが“抗議の会見”「訴訟自体が極めて不当」

弁護士JP編集部

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スルガ銀行、不正融資問題の“被害者”に「デモ差し止め」求め提訴…被告らが“抗議の会見”「訴訟自体が極めて不当」
会見を開いた河合弘之弁護士(前列右端)ら(11月20日 都内/弁護士JP編集部)

スルガ銀行の不正融資問題の被害者に対し、同行がデモやビラ配りの差し止めを求めた訴訟の第二回口頭弁論が11月20日、東京地裁で行われ、同日、被害者側が都内で会見した。

“かぼちゃの馬車”事件と「同じ手口で不正融資」

スルガ銀行を巡っては2018年に投資用不動産を巡る不正融資問題が発覚していた。

被害者側の弁護団などによると、この問題ではまず、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開していた不動産会社「スマートデイズ」が、実際の市場価格を大幅に上回る価格でオーナーに販売。その際、同行は、通常では融資を受けられないようなオーナー候補に対しても、預金口座を改ざんするなどして審査を通し、貸付を行っていた。

シェアハウスを巡る問題については2020年、オーナー側が土地や建物を手放し、同行がローンの返済請求権を事実上放棄するという内容の民事調停が成立し、解決に至っている。

ただし、弁護団らは、同行がシェアハウス以外にも、投資用のアパートやマンションのオーナー候補を対象に同様の不正融資を行っていたと主張しており、被害者側はスルガ銀行との調停の手続きを進める一方、デモなどの抗議活動を展開。

同行側は、この抗議活動の過程で、不法行為があったと主張し、被害者団体の代表らを相手に訴訟を起こしていた。

スルガ銀行「社員の心身を守るため、やむなく提起」

スルガ銀行側は今年8月に「訴訟の提起に関するお知らせ」を発表。その中で、提訴の理由について、次のように記した。

「当社は、裁判所の調停を通じて被害者同盟との話し合いに応じているにも関わらず、本訴の被告らは、正当な抗議活動とは言い難い、当社社員の心身を脅かす執拗な個人攻撃を行っています。

当社は『社員の心身の安全を守る義務』を大切に考えており、当社社員を誹謗中傷するような行為を止めるよう、これまでも繰り返し申入れをしてきましたが、改善がみられません。

このような状況を踏まえ、『一線を越え、社員の心身を脅かす執拗な個人攻撃』に歯止めをかけ、社員の心身の安全を守るために、やむなく本訴を提起することにいたしました」

「一線を越えた」行為の中身については、以下の3点を主張。

①旧名古屋支店への不法侵入
②特定の社員に対する虚偽の事実に基づく執拗な個人攻撃(誹謗中傷)
③代表者自宅周辺での長時間かつ複数回のデモ行為及び自宅マンションへ侵入してポストへビラを投函する行為

「お知らせ」では、文末にも、「社員の心身を脅かすような、悪質なケースについては毅然とした対応を取らざるを得ない」との記載があり、同行は本件訴訟が「社員の心身を守る」ためであることを繰り返した。

弁護団「訴訟自体が極めて不当」

この日、会見に出席した被害者弁護団の河合弘之弁護士は、本件におけるスルガ銀行側の「対応の不備」を指摘したうえで、訴訟自体が「極めて不当な行為である」と主張した。

「今回、スルガ銀行側は、被害者側による抗議活動のなかで、業務妨害や名誉毀損が行われていると主張し、デモの差し止めと損害賠償を請求しています。

ですが、同行側の訴状はいい加減なもので、裁判所から『誰が被害者で、誰の権利をどう侵害して、どのような損害が生じたのかよくわからないのでちゃんと整理しろ』という趣旨の指摘が行われました。

今日の期日では本来、本件が『不正融資の被害者側をけん制するために、スルガ銀行が起こしたスラップ訴訟である』という背景事情を説明するために、第1準備書面の陳述を行う予定でしたが、訴状がむちゃくちゃであることから、争点整理を行う必要があり、延期となっています。

先ほども述べた通り、われわれは本件訴訟について、被害者を萎縮させ、抗議を封じ込めることを目的としたものであると考えています。

被害者らによる、デモや株主総会での抗議活動は、憲法で保障されている表現の自由の行使であり、やむにやまれぬものです。

裁判所には、こうした事実関係の全体像を把握した上で、適切な判断をしていただければと思います」(河合弁護士)

「何を言いたいのかわからない、とばっちり裁判」

被告の1人で、「かぼちゃの馬車」事件の被害者でもある、消費者トラブルの被害者支援を行う一般社団法人ReBORNsの冨谷皐介(とみたに こうすけ)代表も次のように話した。

「河合弁護士の話にあった通り、スルガ銀行側の主張は、誰のどういう行為が不法行為なのかが不明瞭で、『何を言いたいのかわからない』という状態です。

訴状では、被害者団体のデモや抗議活動において、不法行為があったとしているのですが、団体自体は訴えられておらず、被告になった私や、被害者団体の代表が団体の活動を指導・指示していると記載しています。

確かに、デモには参加していますが、ファクトに基づき、表現の自由の範囲内で訴えていたわけで、誹謗中傷に当たるようなことはやっていません。

不法侵入もあったのかもしれませんが、真実はよくわかっておらず、少なくとも今回訴えられたわれわれが入ったわけではありません。

ですので、本来訴える対象にはならない人を訴えた、『とばっちり裁判』ではないかと思います」(冨谷代表)

「過去の不正によって利益を得続けている」

会見の最後、被害者団体の代表で会社員の男性は「われわれは単に被害者が集まっただけの団体で、上下関係等はなかった」としたうえで、スルガ銀行に対し以下のようにコメントした。

「スルガ銀行自体が、われわれ被害者としっかり向き合って対話するための、門戸を開いていたのであれば、抗議活動をする必要はありませんでした。

ですが、同行側は被害者との直接の会話を拒むといった“敵意むき出し”の態度を示しており、それでもなんとかわれわれの声を届けたいという想いでデモを行ってきました。

シェアハウス問題は解決しましたが、アパート・マンションをめぐる問題は解決しておらず、同行はいまだに(当時の不正融資による)金利を得続けています。

過去の不正によって利益を得続けているような企業に対し、これからも一致団結して戦っていかなければならないなと、今回の訴訟を受けて改めて思いました」(被害者団体代表の男性)

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