TKO木本氏に「投資」トラブル “ほぼ詐欺”弁護士が断言「耳を傾けてはいけない」ダマし文句
元TKOの木本武宏さんが巻き込まれたとの報道が話題となり、注目を集めた「投資トラブル」。
投資する人が増え続ける中、後を絶たない投資詐欺などのトラブルは、金融庁への相談件数も高止まりしており、2021年には1万件以上の相談があった 。
「女性セブン」へのインタビューで木本さん自身が語った内容によれば、FX投資でトラブルに遭ったのち、被害額を取り戻そうと勧誘された不動産投資でも問題が発生したという。
実はこのようなトラブルの”連鎖”も偶然ではない。被害額を取り戻そうとする被害者に対して「救済」を装い近づき「詐欺の2次被害」をしかける詐欺師の典型的な手口だ。
投資詐欺被害に気づいたとき、どのように行動すればよいのか。そもそも被害に合わないために最低限できることはあるのだろうか。
投資詐欺被害の「全額」を取り戻すことは難しい?
AFP(※)の資格を持ち、特殊詐欺事件の対応も行う本庄卓磨弁護士は、投資をする中で「疑わしいと思った段階ですぐに支払いを止めてほしい」と呼びかける。
※AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)とは、FP(ファイナンシャルプランナー)として十分な知識を持ち、相談者に対して適切なアドバイスや提案ができる者に与えられる資格。
一度お金を支払ってしまうと、取り戻すのが極めて難しくなる可能性があるからだ。
その上で、「最初は警察に相談すべきか、直接ご自身で相手方と話してみようか、と悩むと思いますが、まずはできれば弁護士に相談してほしい」と話す。
その意味について、本庄弁護士は次のように続ける。
「警察に相談しても、証拠などがなければすぐに動いてもらえない可能性があります。どうすれば刑事事件として捜査してもらえるのか、そのためにはどういう証拠が必要なのかなど、弁護士と共に警察に被害を訴えるための”準備”をしてほしいです」
たとえ刑事事件として立件されたとしても、詐欺を立証するのは難しい。投資にはリスクがあり、詐欺に遭わずとも「運用に失敗する」などの損害はつきものだからだ。
さらに「相手が”最初からだます意図で投資を募った”ことを立証するのはハードルが高い」(本庄弁護士)という。
しかし、木本さんのケースでは、トラブルの相手が投資を他人に薦める際に必要な金融庁への申請・登録をしていなかったこともわかっている。「本来するべき申請をしていないということは、”不適切な方法で投資を募っていた”ことになるため、違法性の立証は比較的しやすいのではと考えられます」(本庄弁護士)。
それでも、投資詐欺において被害の「全額」を取り戻すことは難しいと本庄弁護士は続ける。
「相手の行方がわからないというようなこともありえるでしょうし、詐欺の意図はなかったと主張してくる可能性もあります。もし詐欺と認められても、資力がない、つまり返せるだけのお金がないと言われることもあり、回収することが極めて難しいというケースが多いと思います」
被害を最小限に済ませるには、とにかく「疑わしいと思った段階ですぐに」対応することが大切だ。
『利益が出ることを確約してはいけない』はずだが…
被害に遭わないためには、悪徳な業者や個人から身を守る必要がある。
その見極め方について本庄弁護士は、「『絶対にもうかる』『確実に利益が出る』『有名人もやっている』といったうたい文句のものはほぼ詐欺だと思っていい」と断言する。
「投資で『絶対』とか 『確実』ということはありえません。投資を勧める際には『リスク』を説明しなければならず、『利益が出ることを確約してはいけない』と出資法という法律でも定められています」
さらに、投資詐欺の被害者には高齢者が多いという統計があるが、「今はSNSが活発で若い世代でも投資の話に触れやすく、投資をするための”情報商材”を買わされたという被害もあります」と若い人への”落とし穴”も増えていると注意を促す。
「仮想通貨、不動産、株など投資の対象はいろいろありますが、その対象について自身がよくわかっていないまま投資するのはやめた方がいいです。投資の経験がない方は、まずはNISAやiDeCoなどリスクが低いものから始めてみてください。
ひとつ言えるのは、どんな投資であっても、簡単にお金が増えるというような”おいしい話”はないということですね」(本庄弁護士)
木本さんは「誠実に対応されている」
「女性セブン」でのインタビューによれば、木本さんは現在FX投資を持ち掛けたA氏、不動産投資を持ち掛けたB氏それぞれの代理人と連絡をとりつつ、刑事・民事での各訴訟も視野にいれ被害額の回収を求めているようだ。芸人仲間ら木本さんの紹介を通じて同じ被害に遭った人たちに、被害額を返済するためといわれている。
最後に本庄弁護士は、木本さんのこれらの対応について「自身のご発言を前提とすれば」と前置きした上で、次のように評価した。
「木本さんに法的な意味での『返済義務』があるのかというと、義務はないかもしれません。それでも、木本さんは道義的に責任を感じていらっしゃって、個人的にはかなり誠実に対応されていると思います。
インタビューでは自己破産をしないとご発言されていました。一般的な感覚や世間体からすると、自己破産してしまえば支払いを続けたとしても『あの人は支払う意思がもうないんだ』と見られることになってしまう。おそらく、そういった誤解を招くことは避けて、被害に遭われた方への補償・返済を重視する。そういう木本さんの強い決意も感じました」(本庄弁護士)
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