フードデリバリーでトラブル急増「品違いなのに返金されない!」 泣き寝入りしないため「食べる前」にやっておくべきチェック事項【弁護士解説】

弁護士JP編集部

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フードデリバリーでトラブル急増「品違いなのに返金されない!」 泣き寝入りしないため「食べる前」にやっておくべきチェック事項【弁護士解説】
せっかく届いたと思ったら…(sasaki106 / PIXTA)

「届いた商品が注文したメニューと違う。返金してほしい」。こう訴える30代男性は、フードデリバリー専用アプリで肉カレーを注文。ところが、届いたのは「野菜カレー」だったという。

男性が飲食店に電話すると「間違えました」と謝罪され、返金対応を希望した。すると、飲食店はフードデリバリー専用アプリの運営事業者に連絡し、その後、「対応しないといわれた。返金しない」と男性に通告ーー。

男性にはなんの非もないトラブルだ。30代女性のケースではフードデリバリー専用アプリでファーストフードを注文。配達員から電話があったが出られず、折り返した。結局、つながらず、キャンセル扱いとなってしまったものの、代金は請求されているという。

2020年以降、相談件数急増

こうした食事宅配に関する消費者トラブルが増加している。コロナ禍の2020年、前年の95件から475件と一気に5倍に急増したパイオネット(全国消費生活情報ネットワークシステム)における食事宅配に関する相談件数。その後も、宅食サービスが定着したこともあり、600件台を推移。直近でも前年同時期を上回るペースとなっている。

コロナ禍以降急増した相談件数(国民生活センターHPより)

国民生活センターは、以下のように対策を呼びかけている。

「フードデリバリー専用の Web サイト・アプリは、運営事業者が定めた利用規約や利用方法に沿って利用する必要があります。利用規約や利用方法は、サービスによって異なるため、必ず利用前に確認しましょう。

また、フードデリバリー専用 のWeb サイト・アプリで注文する場合、Web サイト・アプリの運営事業者は料理の準備や配達に立ち会っていないため、トラブルが発生した場合には注文者が証拠を示し、問い合わせる必要があります。

なお、注文がキャンセルになった場合でも、通常は注文履歴を確認できると考えられるため、注文履歴を確認のうえ問い合わせましょう 」

利用規約の”壁”をどうクリアするか

とはいえ、上記事例のように、明らかに事業者側のミスでも、利用者側が泣き寝入りせざるを得ないとなると理不尽だ。なんとか、返金や代替サービスなどでフォローしてもらえないものなのか。

大手飲食企業や消費者庁での組織内弁護士経験があり、飲食サービスや消費者トラブルに詳しい辻󠄀本奈保弁護士に聞いた。

冒頭の事例のようにカレーのメニュー違いに「対応しない」「返金もしない」のはサービスとして問題なのではないでしょうか。もしも利用規約に明記されていたとしても、”悪用”の可能性も考えられます。

辻󠄀本弁護士:  意図的な場合はもちろん悪質ですし、そうでなくとも、注文したものと違うものである以上、なにもしないというのは問題だと思います。

食事宅配サービスでは飲食店、デリバリー事業者、注文者の3者が関与します。単純に非があった当事者が損害をカバーするのが道理だと思うのですが。

辻󠄀本弁護士: 原則論で考えると、そうなると思います。さらにいうと、配達員等の登場人物も出てくるので、関係は複雑だと思います。それぞれの契約や利用規約等で明記がない限り、非のある当事者が、食事の作り直しや再配達料等といった損害を負担するのが原則となるでしょう。

これらのトラブルにおいて、利用規約とは別に、法的に非を訴え、返金対応などを迫ることは難しいのでしょうか

辻󠄀本弁護士: 利用規約の内容によっては、別途法的に訴えることも可能なケースもあり得ます。ただ、現実的には、労力や費用面といった負担も含めて難しいケースも多いとは思います。

いきなり訴訟とはいかずとも、まずは任意交渉として、こちらもきちんと証拠に基づいて理由を説明しながら返金対応を要望するということもあるでしょう。もちろん、それに対応してもらえるかどうかは事業者の判断にはなりますが、まずは交渉をしてみるべきだと思います。

できるとすればどのようなことが可能でしょうか。また、そのためにはどのような条件がそろっている必要があるでしょうか。

辻󠄀本弁護士:  事案によりますが、いずれの場合でも、きちんと証拠を確保した上で、単なるクレーム扱いとされないよう、どのような問題があるのか、整理して主張していくことが重要だと思います。

 法的対応も視野に、注文者はこうしたトラブルに備え、どのような対策をとればいいのでしょうか。

辻󠄀本弁護士: やはり、できる限り写真等の記録を残しておくことが重要となります。Webサイトやアプリでの注文画面や配達員とのやりとりなどは、万が一削除されてしまうリスクも考えて、スクリーンショットや写真を撮るなどして残しておくと良いと思います。

食事そのものについては、メニュー違いや商品不足等の場合でも、食べてしまうと何も証拠が残りませんので、とりあえずは食べずに写真や動画を撮って証拠として残しておくべきでしょう。

 年末へ向け、食事の宅配ニーズも増すと思います。先生からトラブルにならないための助言をいただけますでしょうか。

辻󠄀本弁護士: 食事を受け取ったらすぐに中身を確認すること、何か問題があったら写真を撮るなど証拠を残しながらすぐに問い合わせ窓口へ連絡することが大切だと思います。

そもそも注文の際にも、見過ごしや勘違いがないかよく確認を行い、問い合わせ窓口も、Webサイトやアプリ経由なのか、店舗へ直接連絡なのかなど、どのルートが適切かを考えて連絡するとよりスムーズだと思われます。

取材協力弁護士

辻󠄀本 奈保 弁護士

辻󠄀本 奈保 弁護士

所属: 辻󠄀本奈保法律事務所

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