“フツーの若者”が「闇バイト」に手を出すワケ 「警察ってすごいですね」想像力の欠如も…弁護士が分析する共通点

弁護士JP編集部

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“フツーの若者”が「闇バイト」に手を出すワケ 「警察ってすごいですね」想像力の欠如も…弁護士が分析する共通点
「うちの子は大丈夫?」注目したい子どもの言動(jessie / PIXTA)

首都圏で相次ぐ強盗事件や特殊詐欺――その実行役として逮捕される若者たちの多くが、「闇バイト」への応募を通じて犯罪に加担していたことが報じられている。

逮捕時の映像などから、彼らに対し、どこにでもいそうな“普通の若者”という印象を抱くことも少なくない。隣に住んでいても疑いを持たないようなその姿に、「なぜ」と感じた人も多いのではないだろうか。

刑事事件や少年事件を専門とする中原潤一弁護士(弁護士法人ルミナス)は、闇バイトをして捕まった若者は「家族との関係も良好である場合も多い」と指摘する。

闇バイトをする若者の「共通点」

まず中原弁護士は、闇バイトをする若者の共通点として「借金があること」を挙げる。

「貯金を増やしたいから『闇バイト』をするという動機はあまり聞いたことがありません。消費者金融などに借金を作ってしまい、返済期限が迫っているけれどアテはなく、高額報酬の闇バイトに手を出したという若者が多いです」

さらに、闇バイトをする若者の“タイプ”については、次のように分析する。

「学生時代は目立つ存在ではなく、目標がないままなんとなく進学した、フリーターになったという若者が多いように感じます。借金の原因の多くはギャンブルや趣味。これは聞いた話ですが、配信者への“投げ銭”に歯止めがかからず借金を抱え闇バイトに応募した子もいるようです」

闇バイトに応募した若者は、運転免許証の写真や住民票の提出を求められた結果、指示役などの上位者に自分や家族の個人情報など“弱み”を握られ、犯行に加担せざるを得ないよう追い込まれることがわかっている。

「自分だけ(犯行時に)何もしなかったら後で自分や家族に危害が加えられるかもしれない、なんとかこの場を切り抜けなきゃいけない。そうした恐怖が、被害者への過剰な暴行に表出しているのではないかという印象も持っています」(中原弁護士)

「警察ってすごいですね」逮捕後に驚く若者も

犯行グループの一員として強盗の現場にいれば、たとえ自分が暴行に加わっていなかったとしても「共同正犯」などとしてその責任を負うことになる。少し考えればわかることだが、闇バイトで逮捕された若者たちの多くは、こう主張するという。

『自分は積極的にやりたいとは思っていなかった』
『上から行けと言われた』
『やれと言われたからやった』

中原弁護士は「自分が事件のすべての責任を負うことを想定していない子が多いと感じます」といい、次のように続ける。

「まさか自分が捕まるとは思ってなかったという感じで、実際に『警察ってすごいですね』と言った子もいました。想像力の問題という気がしますが、バレないだろうという気持ちが少なからずあるのかもしれません。

しかし、若者たちが考えるよりずっと日本の警察はすごい。弁護士として警察の証拠を見ることがありますが、防犯カメラは至るところにあるし、電車に乗った履歴も全部出てくる。足どりを追って、本人にたどり着くのに時間はかかりません」

最近では「シグナル」など秘匿性の高い通信アプリも、警察が解析できるようになっているとも言われている。

「今後は実行役に限らず上位者の逮捕も増えていくのではないでしょうか」(中原弁護士)

「闇バイトをさせない」親が子どもに伝えるべきこと

子どもが突然逮捕され、「加害者家族」になってしまう親もたくさん見てきた中原弁護士は、「(逮捕後の)本人と家族の関係を見ているのが本当につらいんですよ」と嘆く。

自分の子どもが闇バイトに応募しないよう、親は何に注目し、どう声をかけるべきなのか。

「先に述べた通り闇バイトに応募する若者たちは家族関係がしっかりしていて、両親のことを『大好き』と素直に言える子もいます。それなのに、ほとんどのケースで借金があることは親に言えていません。

個人的な話ですが、私は成人する頃に親から『借金だけはしないでくれ。もしお金に困ったら相談に乗るから』と言われたのが印象に残っていて、何となく守ってきました。何かの節目や、お子さんが趣味にハマっていて『グッズを大量に買っているな』と感じた時などに、そういう声かけをしてあげるのは一つの方法かもしれません」(中原弁護士)

また、闇バイトは「コスパが悪い」ことも伝えてほしいという。

「コスパがいいと思って高額報酬の闇バイトに応募する若者が多いですが、逮捕されればまず最大72時間身柄拘束され、続いて最大20日間勾留されることが現状避けられません。23日間、真面目に働いた方がよっぽどコスパがいい。その後、起訴され、実刑判決を受けて数年、十数年、数十年刑務所に行くことになったらなおさらです。

それに、たとえば特殊詐欺で高齢者から100万円を受け取って上位者に渡すという役割の“受け子”が、報酬をもらう前に逮捕されるケースがよくあります。その時、報酬を受け取っているか否かは関係なく、100万円の被害弁償は報酬も得ていない“受け子”がすることがほとんどです。実刑を免れるためには、それくらいのことをしなければなりません。その結果実刑を免れたとしても、コスパがいいどころかマイナスになることもあるのだと、若者たちには知っておいてほしいですね」

取材協力弁護士

中原 潤一 弁護士

中原 潤一 弁護士

所属: 弁護士法人ルミナス法律事務所

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