宝くじ「当せん金」への“非課税”制度に落とし穴も!? 「億単位」の“税金”が取られるリスクとは…【税理士解説】

弁護士JP編集部

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宝くじ「当せん金」への“非課税”制度に落とし穴も!? 「億単位」の“税金”が取られるリスクとは…【税理士解説】
宝くじ売り場の行列は年末の風物詩(Ryuji/PIXTA)

当せん金の最高金額が7億円の「年末ジャンボ宝くじ」が明日(12月21日)まで発売中だ。

例年、多くの人が、高額当せんを夢見て宝くじを購入する。そこで気になることの一つが、もし、宝くじに当たって当せん金を受け取った場合の「税金」はどうなるのか、ということである。

よく「宝くじの当せん金は非課税」と言われるが、実はそこには落とし穴があり、一歩間違えると億単位の税金を取られる可能性もある。では、もし当せんした場合はどうすればよいのか。納税者の視点からYouTube等で精力的に情報発信を行っている黒瀧泰介税理士(税理士法人グランサーズ共同代表、公認会計士)に聞いた。

宝くじの当せん金は「原則」非課税だが…

まず、宝くじの当せん金についての原則的な課税関係を確認しておこう。一般に、何らかの経済的利益を得た場合、「所得税」の課税対象となる。しかし、宝くじの当せん金については、法の明文で、所得税が非課税とされているという。

黒瀧税理士:「『当せん金付証票法』が、『当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない』と定めています(同法13条)。

なぜ非課税なのかは、宝くじの制度の趣旨によります。宝くじ事業はもともと、地方の公共事業の財源にするためのものだからです。

宝くじの売上金額のうち40%程度が『収益金』として、発売元である全国の都道府県と20の政令指定都市へ納められ、公共事業に使われます。2023年度は売上金額8088億円のうち収益金が36.7%(2964億円)でした(【図表】参照)。

つまり、実質的に宝くじの購入代金から税金を取られているのと変わらないので、それに加えて当せん金に課税するべきではないということで、非課税となっています。

したがって、当せん金を受け取るだけでは1円も税金がかかりません」

【図表】宝くじの売上金額の使い道(出典:宝くじ公式サイト)

宝くじの当せん金が「課税される」ケースとは

では、当せん金が課税されるケースは全くないのか。黒瀧税理士は、受け取った当せん金を複数人で分け合う場合に「贈与税」の課税の問題が生じるケースがあると指摘する。

黒瀧泰介税理士(税理士法人グランサーズ提供)

黒瀧税理士:「特に、受け取った当せん金を家族、友人等で分け合う場合は要注意です。

たとえば、Aさんが1等の当せん金7億円を受け取り、配偶者のBさんに3億円、子のCさんに1億円を贈与するケースを考えてみましょう。

贈与税の課税方法には『暦年課税』と『相続時精算課税制度』の2つの方法がありますが、どちらを選ぶにしても、年間110万円までは課税されない『基礎控除』を受けることができます。

仮に『暦年課税』を選ぶとしましょう。贈与税は累進課税ですが、基礎控除を受けた後の額が4500万円を超えると税率は55%になります。したがって、Bさん、Cさんにはそれぞれ以下の通り、贈与税がかかることになります。

・Bさん:(3億円−110万円)×55%−640万円(※)₌1億5799万5000円
・Cさん:(1億円−110万円)×55%−640万円(※)₌4799万5000円

合計すると、家族で総額2億円超の贈与税がかかってしまうのです。

なお、このケースのように家族間で贈与する場合には低い『特例税率』が適用されますが、友人等の場合、贈与税はもっと高額になってしまいます」

※累進税率が段階的に適用されることによる、税額計算上の控除額

贈与税がかからないようにする方法は?

では、贈与税がかからないようにするには、どうすればよいのか。黒瀧税理士は、宝くじを「共同で購入する」形をとるしかないと指摘する。

黒瀧税理士:「共同購入して、自分が出費した購入代金の割合に応じた額を受け取る形であれば、贈与税の対象にはなりません。

たとえば、2人で3万円分(100枚)購入して、それぞれ半額の1万5000円ずつ出し合い、当せん後に当せん金を半分ずつ分け合うといった方式です。

もちろん、購入時に1人に立て替えてもらって、後で支払う形でも問題ありません。

共同購入契約は口約束でも有効ですが、万全を期して契約書を作成しておけばなお良いでしょう。

なお、あまり知られていませんが、インターネット購入の場合は公式HPに『共同購入』のコーナーがあります。グループを作って共同購入し、当せんしたら、各自が購入した枚数の割合に応じて当せん金が分配され、それぞれ予め登録しておいた口座に直接振り込まれます。人数未満の端数が生じた場合はグループに参加した順に1円ずつ割り当てられます」

窓口で宝くじを共同購入した場合はどうか。50万円以上の当せん金については、みずほ銀行の本店または支店で受け取りの手続きをする必要がある。どのような点に注意しなければならないのか。

黒瀧税理士:「原則として、共同購入者が全員揃って銀行へ行き、『当せん金証明書』を受け取ります。本人確認書類(運転免許証、健康保険証等)と、当せん金が100万円を超える場合には印鑑も必要です。

どうしても全員のスケジュールが揃わない場合は、行けない人が委任状を代表者に渡して手続きをしてもらうこともできます。

いずれにしても、家族や友人等で当せん金を分け合って贈与税が課税されないようにするには、共同購入する形をとり、かつ、受け取る時も、それぞれの口座に直接振り込まれるよう、手続きをすることが大切です。

いったん誰かの口座に全額が振り込まれたとなると、その後のお金の移動は贈与と扱われるリスクが高くなります」

よく、宝くじは「夢を買うもの」といわれる。しかし、せっかく当せんし、高額な当せん金を受け取っても、形式を誤ったばかりに高額な税金を払うハメになり「夢から覚める」という事態は避けたいものだ。

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