「財政への負担・増税につながる懸念」だけじゃない…1月から再開「電気・ガス料金の負担軽減措置」が抱える“法的問題点”とは
政府は、物やサービスの価格高騰による家計負担を軽減するための対策として、2025年1月から3月まで「電気・ガス料金負担軽減支援事業」を実施している。電力会社や都市ガス会社に補助金を支給し、料金の値引きの原資とさせる。
今年5月まで実施されていた「電気・ガス価格激変緩和対策事業」、8月から10月に実施された「酷暑乗り切り緊急支援」と事実上同じ内容を、規模を縮小して行うもの。
この施策は、一時的に国民の負担を軽減する一方で、国の財政に負担を与えることや、法的観点からの問題点についても指摘されている。
1月~3月実施「電気・ガス料金負担軽減支援事業」と「財政への負担」
1月からの「電気・ガス料金負担軽減支援事業」は、電力会社・都市ガス会社などが電気料金・都市ガス料金の値引きを行い、その原資を国が支援する仕組みである。
ただし、補助金の額は以下の通り、これまでと比べて縮小されている。
【電気料金】
・低圧:2.5円/kWh(3月は1.3円/kWh)
・高圧:1.3円/kWh(3月は0.7円/kWh)
【都市ガス】
・10.0円/㎥(3月は5.0円/㎥)
なお、プロパンガス(LPガス)は対象外だが、自治体によっては独自の負担軽減の施策を行う可能性がある。
電気・都市ガスの他に、ガソリン・灯油については2022年1月から「燃料油価格激変緩和補助金」が実施され、期限付きながら更新を繰り返し継続してきている。これは、「燃料油元売り」に補助金を支給することによって価格を抑えるもので、基本的な仕組みが「電気・ガス料金負担軽減支援事業」と共通している。12月19日から規模が縮小されている点も同じだ。
これらの補助金の施策は、一時的には家計負担を軽くする役割を果たす。しかし、長期的に行われれば国の財政にとって大きな負担となるのは間違いない。そして、それは最終的に国民の税金によって賄われることになる…ここまでは、よくみられる指摘である。
補助金制度には財政負担だけでなく「憲法上の問題点」も
実は、補助金については、上述した財政面からの問題点だけでなく、法的観点からの問題も存在する。
エネルギー価格の高騰は、混迷する国際情勢や円安の影響を色濃く受けて長期化しており、収束する見通しは立っていない。この状況に対して、政府はエネルギーに関する補助金の制度を恒久的なものとせず、「〇か月」など期間を細かく区切って実施している。
「電気・ガス料金」については2024年5月にいったん終了した後、「2024年8月~10月」「2025年1月~3月」と断続的に実施している。
また、「ガソリン・灯油」については、期限を迎えるたびに更新を繰り返している(12月からは規模を縮小)。
なぜ、このような仕組みをとっているのか。あるいは、とらざるを得ないのか。荒川香遥(あらかわ こうよう)弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)は、憲法が定める「平等原則」(憲法14条)の観点から問題があるからだという。
荒川弁護士:「エネルギー価格の負担軽減のために事業者に『補助金』を与えることは、法的には、特定の業種・業態の事業者に対して特別の経済的利益を与え、優遇するものといえます。
度が過ぎれば、平等原則(憲法14条)の観点から問題が生じる可能性があります。
現在、さまざまな物やサービスの価格が上昇しています。国民の消費が抑えられ、経営が苦しくなっているのは、エネルギーを扱う事業者だけではありません。
もちろん、電気・ガスやガソリン・灯油はとりわけ日常生活に欠かせないので、一時的なものであれば、これらを扱う事業者に対し補助金を実施する必要性・合理性は認められます。
しかし、補助金の額や継続期間によっては、過度の優遇になってしまうおそれがあります。したがって、一時的・時限的なものという体裁をとらざるを得ないのです」
昨今の物価の急激な上昇には、世界的な資源価格の高騰に加え、日本の超低金利状態による「円安」、不景気、国民の所得の伸び悩み等のさまざまな問題がある。そのような状況のなかで、補助金の制度に頼り続けるのは、財源の面のみならず、法的観点からも限界があるといわざるを得ないということだ。
今後、政府が補助金をいつまで実施するのか、また、補助金以外の税制上の措置、金融政策、経済振興策等をどのように展開していくのか。主権者である国民の立場から、財政への負担・増税の可能性だけでなく、法的観点からのチェックも必要だろう。
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