2025年“タクシー問題”は新たなフェーズへ…「相乗り」「ライドシェア」解禁で利用者はどれを選ぶべきか
2024年はタクシー業界にとって大きな動きがあった。3月には「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」等を一部変更し、「自動車運送業」が新たに在留資格「特定技能」の対象となることが閣議決定。条件付きながら、4月にはライドシェアが解禁された。課題とされたドライバー不足も回復傾向にあるといい、12月には都内一部地域で相乗りタクシーもスタートした。通常タクシーも合わせ、2025年にかけ、“タクシー問題”は新たなフェーズを迎える。
「タクシーが来ない」。こうした不満が慢性的になりつつあるタクシー業界。大きな要因はドライバー不足だ。
コロナ禍、行動制限や感染リスクなどもあり、タクシー業界は大打撃を受けた。需要に合わせ増員したドライバーの離職が相次ぎ、その余波で2022年のタクシー業の倒産件数は過去10年で最多を記録(東京商工リサーチ調べ)した。
ドライバー不足の現状
コロナ禍が収束し、インバウンド回復で需要は戻ったが、去った人員は十分に戻らず、供給不足に陥っている。全国ハイヤー・タクシー連合会会長の川鍋一朗氏は、現状について次のように説明する。
「昨今の『タクシーが来ないぞ』という皆さまの声にお答えすべく、ここ数年、タクシードライバーの数が劇的に復活しています。コロナ直後に2割ぐらい乗務員が辞めましたが、その後、かなりの勢いでコロナ禍前の人数まで迫っています。
たとえば東京ですと、年間3000人以上、新しい乗務員の増加があります。あと1年ぐらいでコロナ禍前のタクシー乗務員数に戻るというペースです」
それでも需要に対し、潤沢な供給体制が整っているとまではいえず、天候やイベント等の一時的なニーズ増大時に十分に配車できていない状況ではある。
タクシー関連の法律
少子高齢化などで移動の足の確保が困難な状況を解消すべく、2023年7月と10月に鉄道およびタクシーにおける協議運賃制度の創設などが盛り込まれた「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」等の法改正が施行されるなど、政府も動きを加速している。
そうした中で、期待される移動手段のひとつが相乗りタクシーだ。
相乗りタクシーは、法令上は道路運送法3条1号イで定められる「一般乗合旅客自動車運送事業」にあたる。路線バスと同じ扱い。
一般的なタクシーは同ハで定められる「一般乗用旅客自動車運送事業」で、法令上の位置づけが異なる。
国交省は2021年11月にこの「相乗りサービス」の新たな制度の導入を発表。「配車アプリ等を通じ、目的地の近い旅客同士を運送開始前にマッチングし、タクシーに相乗りさせて運送するサービス」(国交省)だ。タクシー料金を按分し、割安に利用できるため、潜在的なタクシー需要を喚起できると期待を寄せている。
この「相乗りサービス」は、一般乗用旅客自動車運送事業者が行う場合、事前にアプリでマッチングするため、「運送途中に不特定の旅客が乗車しないものであり、乗合旅客の運送には該当しないことから、道路運送法4条または21条の許可を受けずに実施することができる」となっている。つまり、タクシー会社が行う場合は、乗り合い旅客の運送許可なしで実施が可能だ。
すでに一部では運用されているが、12月11日からはこの相乗りサービスにタクシーアプリ「GO」が参入。日本交通の子会社「ハロートーキョー」の運行協力を得て、「GO SHUTTLE」としてスタートしている。
相乗りタクシーが期待される理由
相乗りタクシーが今後の移動手段として期待される理由について、GO社長の中島宏氏は次のように力説する。
「タクシー不足の問題が完全に消えない中、まだ供給が足りていない時間・エリアもあります。そこを埋める新たな解決策の一つになるというのがスタートの背景です。そうはいっても、単に稼働数を増やすだけでは、別の問題が浮上してきます。渋滞の問題です。
いくらタクシーが増えても、渋滞で車が停滞すれば利便性は損なわれます。その点、相乗りは1台で複数のお客様を運びますから輸送効率に優れます」
同社のサービスは豊洲や勝どきなど東京湾岸エリア限定ながら、乗降スポットは約400か所ある。同乗人数が仮に1人でも、事前に確定した料金で乗車でき、相場もタクシーの約5、6割程度で済むという。
「便利だが高くて乗れない」と敬遠していた人でも、乗ってみようと思える料金設定だろう。全体のタクシー稼働数を必要以上に増やさず、割安で、快適に移動できる相乗りサービス。いいことづくめのようだが、持続的に運用していく上で大きなネックがある。同じような方向へ移動するまとまった乗客を、安定的に確保することだ。
いくら優れたサービスでも、乗客が毎回1、2人だと十分な利益を出せない。その点について、中島社長は次のように補足する。
「我々は日本国内ダウンロード数ナンバーワンという実績があり、乗客のデータを豊富に持っています。いつどのようなタイミングでニーズが増大するのかなど、エリアでの密度を把握できます。そもそもユーザーが多いのも強みです。そして、多くの車両にご登録いただいているので、需給に合わせた対応が可能なことも強いところです」
“3種のタクシー”どれが得か
2024年は4月に日本版ライドシェアが限定解禁。タクシー不足やドライバー不足をカバーする大きな動きがあった。捕まえづらかったタクシーの供給問題は徐々に解消へ向かい、次のフェーズはどの移動手段がメリットが大きいかにシフトしつつある。
通常のタクシー、ライドシェア、相乗りタクシー、それぞれに一長一短があるものの、利用者の目的に合致さえしていれば、どれを選択してもお得感まで実感しながら快適な移動を実現できる。
たとえば「GO SHUTTLE」は、現状では料金面のメリットが大きい一方、エリアが極めて限定的。同社もいまは試験的側面が強いものの、将来的には地方展開も視野に入れているといい、そうなれば、ちょっとした移動手段の選択肢としては有力になるだろう。
ライドシェアもタクシーとの比較では価格面で優位性があるが、ドライバーが一般人であるという安全面での不安はぬぐえない。現状は時間や場所が限定されていることもネックといえる。
通常のタクシーも割高感はあるものの、利用人数の工夫などで出費を抑えることは可能であり、使い方次第では便利な移動手段に変わりはない。
タクシー不足問題を横目に、旺盛なインバウンド需要を奪い取る「白タク」も横行した2024年。違法なタクシーが入り込むスキを与えないようにするためには、業界が創意工夫を重ね、健全に成長して乗客の満足度を高めるサービスを提供し続けるしかない。
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