ネットバンキング“遠隔操作”で「100円→100万円」強奪も…詐欺の最新手口と“騙されない”ための心得【弁護士解説】
注意すべき10大消費者トラブル
国民生活センターが2024年の消費者問題で社会的注目を集めたものや消費生活相談の特徴的なものなどから選定し、昨年12月に公表した「消費者問題に関する10大項目」。あまたのトラブルの中でも、とくに注意喚起すべきものが厳選されており、予防の意味でも傾向と対策を把握しておくに越したことはない。
たとえば、<害虫・害獣駆除やロードサービスなどの想定外の高額請求にかかるトラブルが若い年代で増加> という項目。緊急を要する状況で、被害者はネットで手早く検索し、値段重視で業者を選定。その結果、まんまと悪徳業者にあたってしまっているケースも多いという。
「若者」が被害者になっていることがポイントだ。いわゆる「害虫・害獣駆除サービス」の相談件数は2023年度は2022年度同期比で約1.5倍に増加。国民生活センターによれば、「特に、10~20歳代が契約当事者となるケース急増している」という。
国民生活センターは、「極端に安い価格を表示するサイトや広告には要注意です。できる限り複数の見積もりをとり、また急かす業者とは契約しないことです」と注意喚起している。
年々増加のすき間バイトは2025年も要注意
<「スキマ時間に気軽に稼げる」などとうたう副業に関する相談が増加>。この項目は世相に敏感な詐欺師のあくどさと儲かる話に脇の甘い消費者心理がシンクロした、要注意のトピックだ。
「こうした詐欺はむかしからあります。最初は実際に稼げたりもするのですが、なにかと理由をつけて金銭の振り込みを求めてくるんです。その時点で怪しいと気づいてほしいところですが、実際に稼げている事実もあり、引きずり込まれてしまうようです」
こう説明するのは消費者トラブルに詳しい辻󠄀本奈保弁護士だ。この「副業詐欺」は年々増加傾向にあり、2025年も猛威を振るうことが予測される。
サポート詐欺では遠隔でネット入金を操作し大金を”強奪”
<サポート詐欺 高齢者のトラブルが後を絶たず >。この項目はだます側のあくどさが凝縮されており、同じような状況に直面したら反射的に「詐欺かも」と疑ったほうがいい。
国民生活センターが紹介している事例は以下のように極めて悪質だ。
修理後、男性は請求された修理代100円をネットバンキングの画面で送金したが、インストールしたソフトによるものなのか、その画面を遠隔操作で4桁追加され、結局、100万円を送金させられたーー。
パソコンに不慣れな高齢者の弱みに付け込み、ネットバンキングまで勝手に操作する非道さ。ネット時代ながら、もはや自宅に押し売りに入られたも同然といえ、その場に犯罪者のいないリモート犯罪とて全く侮れないことを象徴する事例だ。
大切なのは「自衛の意識」
「消費者を守る法律はいくつかあり、事後でも対応できるケースもあります。一方でだます側も消費者の弱みだけでなく、法律の抜け穴を狙うケースもあり、年々巧妙化しているのも事実です。
だからこそ、大切なのは自衛の意識。昨年はSNS関連の詐欺事案が目立った印象です。ネット上だけのコンタクトで完結し、相手がどういう人物なのか、すぐに認識できないことも大きな要因かと思います。便利さの裏で、怪しいと感じ、疑うまでのタイムラグがほとんどなくなっているわけです。
対策としては実際に確認するというひと手間を惜しまないこと。単純に、記載の連絡先に電話すると不通だったり、HPがなかったり、怪しい点がみつかることも多いです。2025年もSNSを入り口にした消費者トラブルが減ることはないでしょうから、少しでも『おかしい』と感じたら、ひとまず冷静になって、『確認』を忘れないようにしてください」(辻󠄀本弁護士)
もっとも、<紅麹を原料とするサプリによる健康被害拡大>といった、自衛だけでは防ぐのが困難な項目もある。
「名の通ったメーカーの製品だからと信頼して利用していた結果被害にあうのは悔しく、つらいことだと思います。こうしたケースでも泣き寝入りする必要はありません。弁護士などの専門家に相談することで、損害賠償請求など状況に合わせた対応がスムーズに行えます。一人で考え込んでいるだけでは突破口は見出せません」(辻󠄀本弁護士)
景気の先行きが不透明な状況が続き、一般消費者はお金の出入りにセンシティブになっている。そこにあるわずかなスキをこじ開けるように、詐欺グループは虎の子をむしり取るーー。2025年は始まったばかりだが、気持ちを新たにするとともに、いま一度グッと気を引き締める。それが消費者トラブルを遠ざける、シンプルながら確実な心得といえるだろう。
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