“なり手不足”でチワワ犬にも出動命令!? 「嘱託警察犬」急増“納得”のワケ
近年、チワワやトイプードルなどが「警察犬」として職務にあたっていることを知っているだろうか。
警察犬には、各地の警察が飼育管理を直接行っている「直轄警察犬」と、普段は一般家庭などにいて、警察から要請があったときに出動する「嘱託警察犬」の2種類がいる。直轄警察犬は、シェパード、ラブラドール・レトリバー、ドーベルマンなど「日本警察犬協会」が指定する7犬種(※1)であることがほとんど。嘱託警察犬もシェパードなどが多いものの、犬種に捉われず能力のある犬を広く募っている道府県警察も少なくなく、各地で“意外な犬種”が警察犬として活躍しているのだ。
(※1)シェパード、ラブラドール・レトリバー、ドーベルマン、エアデール・テリア、ボクサー、コリー、ゴールデン・リトリーバー
嘱託警察犬は、警視庁(東京都)と大阪府警察を除く45道府県警察で導入されている。訓練で適性を身につけ、年に1回実施されている採用試験(嘱託警察犬審査会)を突破すれば、あなたの愛犬も警察犬として社会貢献できるかもしれない。
トイプードル、チワワ、パピヨンが警察犬に?
警察庁によると、2021年3月現在、全国で登録されている警察犬の数は直轄警察犬が161頭、嘱託警察犬が1088頭。嘱託警察犬は、日本の犯罪捜査に欠かせない存在となっている。
シェパードなどの指定7犬種は、その犬種本来の性格、体格、体力などから警察犬として推奨されている。しかしそれ以外の犬種でも、賢く、訓練に意欲的な性格であるなど、警察犬の適性を潜在的に持つ犬は多くいる。
例えば茨城県警のホームページを見ると、指定犬種のシェパード、ラブラドール・レトリバーのほか、トイプードル、スタッフォードシャー ブル テリア、オーストラリアン ラブラドゥードル、イングリッシュ スプリンガー スパニエルが嘱託警察犬として紹介されている。
トイプードル(茨城県警察「 令和4年嘱託警察犬の紹介 」より)
スタッフォードシャー ブル テリア(茨城県警察「 令和4年嘱託警察犬の紹介 」」より)
オーストラリアン ラブラドゥードル(茨城県警察「 令和4年嘱託警察犬の紹介 」」より)
イングリッシュ スプリンガー スパニエル(茨城県警察「 令和4年嘱託警察犬の紹介 」」より)
このほかの道府県でも、柴犬、パピヨン、チワワ、ボーダーコリー、ミニチュア・シュナウザーなど、多様な犬種が警察犬として活躍しているという。
“かわいい警察犬”が増えているワケ
日本警察犬協会の嘱託警察犬部長・梅村充さんによると、指定7犬種以外の警察犬が登場し始めたのは「ここ10年ほど」だという。犬種によっては体力的なことも考慮すると難しい場合もあるが、「間口を広げることは大事です」と梅村さんは語る。
「シェパードなどの大型犬は飼育の負担が大きく、“なり手不足”に悩まされている道府県警察も少なくありません。一方で、高齢者の徘徊への対応など、警察犬が必要とされる場面が増えているのも事実です。
直轄警察犬を増やそうにも、面積の大きな道府県ではどのくらいの範囲に何頭配備できるのかという問題が出てきます。もし各地に嘱託警察犬がいれば、要請から出動まで短い時間で対応できる。そのためにも、募集する犬種の間口を広げて、嘱託警察犬を増やしていくことが重要だと考えています」(梅村さん)
しかし、「警察犬=シェパードなどの大型犬」というイメージは根強く、中・小型犬には無縁だと思っている人もまだまだ多い。
「警察犬の活躍をもっと広く知ってもらえるようにしないといけないと思っています。
愛犬を警察犬にする最大のメリットは『社会貢献』です。たとえば『行方不明のお年寄りをたった15分で見つけ出した』となれば、その喜びは飼い主にとって何物にも変え難いのではないでしょうか。
愛犬家の方にはぜひ、嘱託警察犬に興味を持っていただけると嬉しいです」(梅村さん)
嘱託警察犬になるための採用試験「嘱託警察犬審査会」は年1回、各道府県警察で実施している(※2)。まずは、 各都道府県にある民間の訓練所 でトレーニングを重ね、事前に適性を身につけるのが一般的だ。
(※2)直轄警察犬のみで運用する警視庁と大阪府警察は除く。その他、犬種を指定している場合もあるので、詳細は各道府県警察に問い合わせ
犯人や行方不明者の捜索によって、難事件解決のキー“ワン”となるのは、あなたの愛犬かもしれない。
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