靴専門チェーン「ABCマート」に労働組合が賃金アップなどを要求 「勤続年数が10年や20年でも基本給がほぼ上がらず」

弁護士JP編集部

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靴専門チェーン「ABCマート」に労働組合が賃金アップなどを要求 「勤続年数が10年や20年でも基本給がほぼ上がらず」
会見を開いた水嶋氏(右)、鈴木氏(左)(1月27日都内/弁護士JP編集部)

1月27日、靴専門チェーン「ABCマート」の従業員労働組合「Backup(バックアップ)」が、会社への申し入れ行動や要求について知らせる記者会見を開いた。

29日に本社申し入れ行動を実施

東京都渋谷区に本社を置く「ABC-MART(ABCマート)」は、靴小売専門店の国内最大手。1979年の創業から2024年までの45年間、労働組合は存在しなかった。

2023年からパートや非正規職員を中心に組合を作る動きが始まり、後に店長職などの正社員も加わって、昨年8月に「Backup」が正式に結成された。現在では、昨年12月に立ち上げられたユニオン「カント」の支部となっている。

29日、BackupとカントはABCマート本社に対し賃金の引き上げや有給休暇の取得に関する要求を行う、申し入れ行動を実施する予定。

昇給が行われず、有給休暇も取得できない

Backup執行委員長の水嶋由美子氏によると、昨年の結成以来、会社とは2度の団体交渉を行ってきた。しかし、会社からの回答は得られなかったという。

会見で水嶋氏やカント執行委員長の鈴木剛氏が指摘したのは、ABCマートでは昇給がほぼ行われていない、という問題だ。

「勤続年数が10年や20年でも基本給がほぼ上がらず、手取りは20万円に届かない」(鈴木氏)

「残業と休日出勤がなければ、まともな給料にならない。コロナ禍の時期は店舗が閉じていたため残業できず、基本給しか入らなかったが、とうてい、生活できるような金額ではなかった。

賃金の低さに慣れてしまっていたところもあるが、近年の物価高騰で、我慢の限界がきた」(水嶋氏)

また、多くの店舗が人手不足の状態にあり、残業しなければ仕事がまわらない状況にある。さらに、有給休暇を自由に取得することができず、夏季休暇や冬季休暇の時期に会社命令で消化させられているという。

申し入れ行動について、水嶋氏は「まずは生活を守るための賃金アップと、大切な休息。この2つは必ずセットで求めて、問題解決にあたっていきたい」と語った。

具体的には、6%を最低ラインとした賃金アップ、法令通りの有給休暇取得、シフトの見直しなどを要求する予定だ。

会社の業績は好調だが……

会見には、水嶋氏のほかにも複数の組合員が参加。

入社2年目の若手社員であるA氏は、昇給がないために社員のモチベーションが低下している、と指摘。「昇進しても責任だけ増えて給料は上がらない」と感じ、数年勤続した後には転職を目指す風潮が、社員の間でまん延しているという。

「また、特に東京都内の店舗は近年のインバウンド需要により多忙になっており、現場が疲弊している」(A氏)

勤続約5年のB氏は「もう限界と感じたので、組合に参加した」と語る。

「同年代の友人は有休を使って家族と旅行しているのに、こちらは有休を取れない。

また、組合に入ってから、勤続年数がはるか上の社員でも自分と給料がほぼ変わらないことを知った。

世間では物価が上がり給料の見直しがされているが、弊社はそうではない。このままでは、生活するのが難しくなる」(B氏)

入社19年目で店長を務めているC氏は、ABCマートの業績は昨年に引き続き今期も過去最高であり、株価も上場以来の高値になっているにもかかわらず、従業員の待遇は改善していないと指摘。

「ABCマートは、世間からは将来性のある会社として高い評価を受けている。

靴小売業界の最大手企業として、全従業員が安心して長期的に働ける労働環境に変えてほしい」(C氏)

また、C氏はABCマートが企業理念・経営方針として「人々の幸せを実現するためにライフスタイルを創造・提案します」と掲げていることに触れつつ、「われわれ従業員の幸せは保障してくれないのか」と問いかけた。

本件についてABCマートは「当社は記者会見の内容について把握しておりませんので、コメントを差し控えさせていただきます」(担当者)としている。

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