事件のあった時間帯は「自宅や自宅付近にいた」 江戸川区の男性殺害“完全無罪”主張の教師が「被告人質問」で潔白を訴える
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東京・江戸川区の民家で住人の男性(当時63)を殺害したとして住居侵入と殺人の罪に問われ、「私は犯人ではありません」といずれも無罪を主張している同区立中学教諭・尾本幸祐被告(38)の被告人質問が、30日に東京地裁(中尾佳久裁判長)で開かれた。
事件は2023年2月に発生し、被害者と同居していた母親に助けを求められた通行人の110番通報によって発覚。警察や消防が臨場した際には、すでに現場から犯人は姿を消していたが、周辺の防犯カメラの映像などから被告人が関与したと裏づけられ、同年5月10日に逮捕された。
【初公判】「私は犯人ではありません」新たなえん罪事件か、虚言か…中学教諭が江戸川区の男性殺害で“無罪”主張
事件のあった時間帯は「自宅や自宅付近にいた」
事件は2023年2月24日夕方に発生しており、犯人は17時43分から18時28分の間に現場の民家へ侵入。18時37分までに被害者を殺害したとされている。
殺害の瞬間を直接的に示す証拠は存在しないものの、検察は付近の防犯カメラに映っていた不審人物を、その歩様(ほよう:人が歩く姿)や、被告人のスマートフォンのヘルスケアアプリの履歴、被害者宅に残されていたマスクの付着物や血痕のDNA鑑定結果などから、被告人が犯人であると裏づけしている。
事件のあった時間帯にどこにいたか問われた被告人は「自宅や自宅付近にいた」と主張。この日は勤務先の中学校が定期考査だったため、午後休を取得して13時15分頃に退勤したといい、その後の行動について次のように説明した。
14時
散髪のため美容院へ。カット、パーマ
16時40分頃
退店
17時前後
帰宅。翌週月曜(※事件当日は金曜)に予定されていた「卒業生を祝う会」の準備のため、1人になれる自宅駐車場へ移動(※被告人は事件当時、妻と3人の子どもと暮らしていた)。終了後、趣味のトレーニングため自宅1階に置いてあったランニングマシンを使用、自宅前の道路で縄跳びやダッシュなどもした
19時
夕食。その後、子どもたちの髪の毛をドライヤーで乾かす
19時30分
コンビニに出掛けて酒とタバコを購入。帰宅後、出し忘れていた可燃ゴミを近隣の集積場に捨てた
被告人はこの日、勤務先のタイムカードを打刻し忘れたが、被告人の申請によって後日、19時15分に修正されている。
検察はこれを「犯行後にアリバイ工作をした」と指摘。
一方、被告人は「逮捕前に警察が自宅へ聞き込みに来た際、事件当時に(被告人が)何をしていたかわかるもの、たとえば出退勤記録などがあれば私(被告人)に対する捜査は一発で終わると言われた。警察が自宅にくることもなかなかなく驚いたことと、幼い子どもがいたこともあり、(事件のあった時間帯に職場にいたことになるよう)退勤時刻の訂正を依頼してしまった。今考えれば本当に浅はかだった」と述べた。
事件前に二度、被害者宅へ
事件現場に残されていたマスクの付着物や血痕からは、被告人のものと一致するDNA型が検出されており、検察側はこれも被告人が犯人である証拠としている。
これについて被告人は、事件前に被害者宅を二度訪れたことがあり、その際に残されたものであると説明した。
被告人によれば、一度目の訪問は事件約1か月前の1月下旬頃。被害者宅は被告人の勤務先の学校と最寄り駅の途中にあったが、学校の勤務が終わり、最寄り駅に向かっていると、被害者から「荷物を運んでほしい」と頼まれたという。
「特に断る理由もなかったので、助けられるならという気持ちで段ボール3箱を1階から3階まで運びました」
見知らぬ人の自宅に入ることに抵抗がなかったのか尋ねられると、「以前は島の学校に勤務しており、そこでの生活ではこのような人助けは普通だった。その感覚の延長だった」と述べた。
二度目の訪問は2月上旬から下旬頃。被害者宅の前を通ると、「この前のお礼がしたい」と呼び止められた。「家の中で待ってて」と言われたため、くつを脱いで玄関を上がり階段の下で座って待っていると、上からおりてきた被害者がバランスを崩し、その際に何かが被告人の鼻と口の付近にあたって出血。着用していたマスクに血がついたという。
その後、被害者が新しいマスクをくれて、血のついたマスクは処分すると言ったため置いて帰ったとする。
動機は「借金」?
検察は被告人が犯人だった場合の動機として「借金」をあげている。
事件当時、被告人には住宅ローンのほか、友人に600万円を貸すために利用したカードローン(200万円×3社)、クレジットカードの支払い約100万円などの借金があったという。事件前には競馬の馬券14万円分を購入した履歴があり、検察官から「借金を補填(ほてん)するために購入したのではないのか」と尋ねられると、「競馬は趣味の一環。借金返済のためではない」と否定。また、これまで返済が滞ったことは一度もないと主張した。
なお、逮捕時には「外国為替証拠金取引(FX)の損失を抱えていた」とも報じられたが、これについては「通帳を確認していただいてもわかるが、FXは一切やっていない」と否定した。
裁判は注目を集め、期日のたびに傍聴希望者が長蛇の列をなしている。
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