JR東日本の男性社員、懲戒処分と出向命令の取り消し求め会社・上司を提訴 東京地裁
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JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)で働く男性・X氏が1月31日、自身がパワハラ・暴行を受けたにも関わらず、不当に懲戒処分や出向命令を受けたとして、会社と上司を相手取り、処分の取り消しなどを求め、東京地裁に提訴した。
同日、原告のX氏や代理人、JR東労組(東日本旅客鉄道労働組合)の担当者が都内で会見を開いた。
「上司の手が首元に…」
訴状などによると、X氏は昨年4月15日、武蔵小金井駅での勤務中に上司Hと口論になったという。
X氏はその日の休憩時間中、上司に対し休憩時間後は駅ホームの巡回業務を行う旨を伝え、駅事務室を退室。
ところが、その事情を知らなかった別の上司Nが、X氏が休憩時間終了後、駅事務室にいなかったことを問題視。X氏との面談を実施した。
その面談の場で、2人の上司と男性の双方が、行き違いがあったと認め、これで問題は解決したかのように思われた。
しかし、休憩に入るときや休憩終了後の「声かけ」について、再び上司HとX氏の間で言い争いが発生。
X氏は、その際に上司Hが感情的かつ一方的な言動を繰り返していたことを主張している。また、自身が改札業務を担当する時間が来たため駅事務室を退室しようとしたところ、上司Hから室内のソファに突き飛ばされたとも述べている。
この時、上司HはX氏の肩を押さえつけ、立ち上がれないようにするなどしたといい、X氏が「パワハラですよ、やめてください」と訴えても、「だからなんだ」と聞き入れられなかったという。
その後、上司Hの手がX氏の肩から首元に移動。息苦しさを感じたX氏は、上司Hを振り払ったが、他の社員が駆けつけ、両者を引き離すまで、もみ合いになったと主張している。
「意に反する反省文の提出強要」
一連のやりとりの後、自身をパワハラや暴行行為の被害者と認識していたX氏は、会社側との面談や報告書でもそのような認識を伝えており、面談や報告書を受けた会社からも、X氏側に対する指摘などは特になかったという。
その後、男性は昨年5月に、JR東日本の首都圏本部のマネージャーと面談。
この際、マネージャーは上司Hの言動を正当化するような発言をする一方、X氏について「上司への暴行だから罪が重くなる」「X氏が自分の非を認め、反省の意を示さない限り重い処分になる」などと、繰り返し述べたという。
その後、男性は反省文の提出を求められたが、マネージャーの発言から、自分の意に反する内容を書かざるを得なかったと主張している。
代理人「22歳での訴訟提起、勇気のいる決断だった」
先述した複数回の面談や文書の提出を経て、会社側は昨年7月24日、X氏に対し出勤停止20日間の懲戒処分を言い渡した。
訴状などによると、同社の規定では、出勤停止処分は懲戒解雇・諭旨解雇に次ぐ3番目に重い懲戒処分だという。
さらに、X氏は懲戒処分を受けたのとほぼ同時に、JR東日本の関連会社であるジェイアールバステック株式会社への出向を命じられた。
一連の処分や命令を受け、X氏側は裁判で次の5つを請求している。
1.懲戒処分(出勤停止20日)の取り消し
2.関連会社(バス会社)への出向命令の取り消し
3.上司による暴行(パワハラ)に対する慰謝料
4.懲戒処分による賃金・賞与カット分の損害賠償
5.強圧的な面談により、意に反する反省文を作成させたことへの慰謝料
代理人の仲田隆介弁護士は訴訟に至った背景と、裁判の意義について以下のようにコメントした。
「X氏は会社側の対応を受け、JR東労組に加入しました。組合と会社の間で団体交渉も行われましたが、会社側は『上司に対する暴行は罪が重い』と述べ、こちらの主張は全く聞き入れられず今に至っております。
こうした背景があり、今回、原告はやむなく訴訟を起こすに至りました。
X氏は22歳と若く、現在も会社に所属し続けていますから、会社や上司を相手に訴訟を起こすのは、非常に勇気のいる決断であったと思います」(仲田弁護士)
X氏「潔白の証明が第一だが…」
この日、会見に出席したX氏も、訴訟について次のようにコメントした。
「この訴訟の1番の目的は、自らの潔白を明らかにすることです。
上司から暴行を受けた際、私は手を出してはいけないと思い、はじめは手を後ろに組んでいました。それでも首元を押さえつけられたときに、あまりの苦しさと恐怖感から、上司を振り払い、払いのけました。
私が友人に懲戒処分を受けた理由を説明すると、友人は私が暴力を振るうはずがないと言ってくれました。私自身、他人に暴力を振るうことは、今後もありえないと思います。
それにもかかわらず、会社側は私を悪者に仕立て上げており、到底納得できません。
ただ、はじめは、さまざまな方から『訴訟を起こすべきだ』と言われても、前向きに捉えられませんでした。
これから40年以上働くことを考えると、話を大きくしても不利になるだけだと思ったからです。
ですが、社内では現在、人手不足や作業量の増加など、社員の負担が増しており、パワハラや人権を無視した言動も見受けられます。
私は幼いころから憧れて、JR東日本に入社しました。
裁判の第一の目的は、先述した身の潔白の証明ですが、希望をもって入社する後輩が、同じ目に遭わないように、好きな会社、好きな鉄道を残すためにも、この裁判を戦っていきたいと思います」
本件についてJR東日本は「記者会見及び訴状の内容も確認できていないため、詳細のコメントは出来かねます」(担当者)としている。
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