『死刑囚表現展2022』が開催 加藤智大元死刑囚、植松聖死刑囚らの作品を展示
日本国内の拘置所に収監されている死刑囚(確定・未決問わず)によって創作された、文芸・絵画作品の公募展覧会『死刑囚表現展2022』が10月14日(金)から開催される。
18回目となる本年度は、文芸作品13人、絵画作品16人の応募(重複含)があり、今年7月26日に死刑が執行された、加藤智大元死刑囚の作品も展示される。文芸では、自らの心情、世相に対する思いを詩や俳句に込めたもの、絵画では色彩豊かなものや、メッセージを描き入れたイラストなど、見るものに強いインパクトを残す作品も少なくない。
選考委員による作品への講評
10月9日には、公募作品の選考委員による講評が行われた。彫刻家 小田原のどか氏は、全81点を応募した加藤智大元死刑囚の作品について、「ボリュームに圧倒される。1枚、1枚何を書いているのか、同じようなテーマを反復しているわけではなく課題が明確である」と全体の印象を語った。
植松聖死刑囚(相模原障害者施設殺傷事件)の作品について、文芸評論家 川村湊氏は、「文章作品について、作品、表現とは言えない。差別用語を使っていることにも、憤りを感じ、文章はまったくダメだと思う」と厳しく批評した。
前出の小田原氏は、2020年に植松が表現展に参加し、それに対して非常に大きな異議申し立ての動きがあったこと。そして、表現展の応募要項の「他人を誹謗中傷する作品があった場合に、それを受けつけない」という内容を踏まえ、個別の作品についてきちんと議論したい、と選考委員を引き受けた経緯を説明。その上で、「細部において、過不足なく画面上の表現が実現されている」と絵画については評価している。
「第1回から完成度が高いと思った」(川村氏)と評されるのは、風間博子死刑囚(埼玉愛犬家連続殺人事件)の作品。小田原氏も「ほのかに光り輝いている表現に驚かされた」と高く評価した。
堀 慶末死刑囚(闇サイト事件他連続殺人)の作品については、選考委員で基金の運営委員会のひとりでもある太田昌国氏は、「短歌などは今の世界状況を的確に読んだ作品だと思った。絵も印象に残る」と話した。
以上は一部であるが、開催期間中には、応募作品のすべてが展示される予定だ。
「死刑囚が描いたということを一瞬忘れてしまう」
昨年(2021年)の開催時には900人、10代~80代の幅広い年齢層の来場者があったという。開催に対する賛否の声が交錯する中、来場者のアンケートから見られる感想もさまざまだ(以下 アンケートの一部より抜粋 ※原文ママ)。
『罪というよりも死刑に向き合い過ごしているように感じる作品が印象的だった』(20 代)
『生に対するすさまじい執念を感じました。と同時に(人によると思いますが…)死に対する恐怖が作品を通して伝わってきました。私は死刑制度が正しいか間違っているかは分かりませんが、死刑囚の精神状態を作品を通して世の中に発表する事は極めて有意義だと思います』(40代)
『自分が犯した罪は棚に上げ、死刑廃止を表現する作品に怒りを感じました。このような表現展で死刑囚の思いや感情を知ることができ、貴重な場だとは思いますが、死刑廃止には賛同できません。私はケースワーカーをしていますが、様々な生い立ちでも全うに懸命に生きている人がたくさんいます。どんな状況に置かれても自分の罪と向き合い反省し、命で償うべきだと思います』(40 代)
『死刑囚が描いたということを一瞬忘れてしまうくらい鮮やかな絵、繊細な絵があった。元の事件を知らない死刑囚も居たので、これを描いた人が何をしたのか気になった』(30 代)
「興味本位でもいい」
死刑囚表現展の展示担当者 深田卓さんは、今回の開催について、次のように話す。
「これまで何人もの作品を応募してくれた死刑囚たちが死刑執行で突然命を絶たれました。彼らが表現することで少しずつ自己変革していく過程で、突然殺されてしまう。とりわけ今回加藤智大さんの作品が遺作となってしまいましたが、もっと生きて書き続けて欲しかったと思います。興味本位でもいいのでぜひ来て、作品を見てください」
『死刑囚表現展2022』は、10月16日(日)まで開催される(入場無料)。
死刑囚表現展2022
主催:死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金
共催:死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90
【会場】
松本治一郎記念会館5階会議室(東京都中央区入船1‐7‐1 ※エレベーターで5階に上がる) 【開催日時】
10月14日(金)13:00~19:00
10月15日(土)11:00~18:00
10月16日(日)11:00~17:00
※香山リカギャラリートーク 10月15日(土)18:00~
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