飲酒せずも「アルコール検知」でセンサー反応!? 運転前に注意「口に入れてはいけない」モノ

弁護士JP編集部

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飲酒せずも「アルコール検知」でセンサー反応!?  運転前に注意「口に入れてはいけない」モノ
年末に向けて飲酒運転の取り締まりが強化されている地域も(MediaFOTO / PIXTA)

「バス運転手がアルコール検出で懲戒処分」「原因は蒸しパン」

11月に報道されたニュースに、驚いた人も少なくないのではないだろうか。

「アルコール検知器協議会(※1)」によると、お酒を飲んでいなくても、薬の服用、喫煙、マウスウォッシュ、歯磨き後などにもアルコール検知器が反応することがあるという。その仕組みを、同協議会に聞いた。

(※1)アルコール検知器の普及によって飲酒運転の根絶に取り組むため、機器の製造・販売に携わる複数の企業により発足した協議会(現会員数55社)。アルコール検知器の品質向上を目的とした認定制度を整備するなど、飲酒運転の根絶のみならず飲酒問題解決に向けた活動にも尽力している。

入れ歯で「酒気帯び運転」になった人も…

「『アルコール検知器=飲酒チェッカー』と誤解されている方が多いのですが、大前提として、その認識は間違っています」

そう指摘するのは、アルコール検知器協議会・常深剛生さん。

そもそもアルコール検知器とは、呼気の中に含まれるさまざまな成分の中から、アルコール成分を検出して数値化するものだ。「お酒を飲んだ」という状況でのみ反応するのではなく、たとえばアルコール成分が含まれているマウスウォッシュなどを口に入れた後、すぐに検知器を使用してしまうと、口の中に残っているアルコール成分が呼気に混ざって検出されてしまう。

2015年には、酒気帯び運転で摘発・起訴され、一度有罪になった男性が「入れ歯安定剤に含まれるアルコールに反応した」として逆転無罪になったケースもある。

「一般的に、パンを食べたりマウスウォッシュを使ったりしたとしても、20〜30分後にうがいをして検知器を使えば、アルコール成分を検出することはありません」(同協議会副会長・酒井規光さん)

ただし、この仕組みは飲酒運転の“常習犯”に悪用されるケースもあるという。前出・酒井さんは「今回報道されたバス運転手については不明ですが…」とした上で、「たとえば昨夜、深酒した→翌朝、職場でアルコール検知器に反応した→『マズい』と思って慌ててパンを食べて言い逃れ、という“抜け穴”は、可能性としてはあり得ると思います」と指摘する。

仕組みの悪用による飲酒運転を回避するためにも、酒井さんは「事業会社には、正しく運用できるよう、社内ルールをきちんと決めてほしい」と呼びかける。

「反応したから即ダメ、ではなく、飲食物を摂取していないか、薬を服用していないかをきちんと確認した上で、時間を空けて改めて検知器を使用するようにしていただきたいです。

また残念ながら、精度の低い機器を使えば『お酒を飲んでいるのに検出しない』といった最悪の事態も起こり得ます。手前味噌ではありますが、当協議会で認定している機器など、ある一定の精度が担保された機器を使用することも重要です」(酒井さん)

ノンアルの“落とし穴”

また、一般的には「ドライバーが飲んでも大丈夫」と思われているノンアルコール飲料でも、アルコールが含まれている場合があるので注意が必要だ。

酒税法第2条は、アルコール1%以上の飲料を「酒類」と定義しているため、アルコール1%未満であれば、法律上は「お酒ではない」とされる。

現在、国内の大手飲料メーカーが発売しているノンアルコールビールのほとんどは、アルコール0.00%だ。主要各社のホームページでも、運転前の飲用について「問題ない」と明記している。

  • アサヒビール
    Q.運転前に飲用しても大丈夫?
    A.アルコール0.00%の炭酸飲料ですので、問題ありません。
  • キリンビール
    Q.ノンアルコール飲料の「零ICHI」などを飲んで運転しても大丈夫でしょうか?
    A.アルコール0.00%の炭酸飲料ですので、運転しても問題ありません。また、警察庁科学警察研究所の論文を参考に、運転シミュレーターでの実験を行い、運転能力に影響がないことを確認しております。
  • サッポロビール
    Q.ノンアルコール飲料を飲んだあとに運転しても大丈夫ですか?
    A.アルコール分0.00%なので問題ありません。
  • サントリー
    Q.『オールフリー』を飲んで、運転しても大丈夫ですか?
    A.『オールフリー』は、アルコール0.00%なので、問題ありません。

しかし、前述のようにアルコール1%未満であれば「お酒ではない」ため、たとえば微量のアルコールが含まれている海外メーカーの製品が、ECサイトや店頭などで「ノンアルコール飲料」として販売されていることもある。

ちなみに、ドイツの「エルディンガー アルコールフリー」はアルコール0.4%。微アルコール飲料として人気の「BEERY(ビアリー)」(アルコール0.5%)に近いアルコール度数となっている。

12月は特に飲酒運転が多く発生する月だ。交通事故総合分析センター「交通事故統計表データ」によれば、昨年12月は飲酒運転事故の発生件数(233件、約10%)も、飲酒運転事故により死亡した件数(17件、約11%)も、ともに1年の中で最多となっている。

パン、喫煙、薬の服用、マウスウォッシュ、歯磨き、0.00%のノンアルコール飲料などでただちに「飲酒運転」と判断されることは考えづらいが、正しい知識を持って運転に臨むことも、ドライバーの使命と言えるだろう。

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