24歳女性ドライバーがはねて自転車の男性死亡… “非難殺到”の加害者「不起訴」処分のワケ
埼玉県杉戸町で、自転車に乗っていた82歳の男性に軽乗用車で追突し死亡させたとして、今年7月に「自動車運転処罰法違反」(過失致傷)の疑いで逮捕されていた24歳の女性が「不起訴」になったと、11月末に報道された。
さいたま地検越谷支部は処分理由を明らかにしていないが、Twitterなどでは「池袋暴走事故」を連想したと思われる「上級国民の娘か」といったコメントも見受けられた。
今回の事件については真相が不明だが、一般的に交通死亡事故で不起訴となるケースや、検察が処分理由を明らかにしない背景には、どのような理由があると考えられるのだろうか。
死亡事故を起こして「不起訴」のワケ
死亡事故に限らず、車に乗っている人が歩行者や自転車を相手に事故を起こした場合、一般的には車の「過失割合(※1)」の方が高くなるイメージを持つ人は多いのではないだろうか。まして歩行者や、自転車に乗っている人が死亡したケースにおいて、車を運転していた人が不起訴になるのは、どのような理由があると考えられるのだろうか。
(※1)交通事故において、当事者それぞれが負う責任の割合
元検察官で、交通事故の捜査経験も豊富な若佐一朗弁護士は以下のように答える。
「まず『過失割合』というのは、民事上の損害賠償請求をするにあたって、相手方に何らかの落ち度がある場合に賠償額を減額する、その『減額の割合』のことを言います。つまり、民事上の責任に関する話です。
一方、交通事故(死亡の有無にかかわらず)で起訴するためには、過失が認められる必要がありますが、この過失があるというためには、当時の運転状況に照らし、事故が発生する可能性があることが予見可能で、これを回避することもできたのに、これをせず、その結果事故を起こしたと言えることが必要です。
つまり、「民事上の過失」があったとしても(相手方が歩行者や自転車であれば車側の過失が大きいと評価されることが多いと思います)、「刑事上の過失」が否定されることがあり得るのです。
たとえば、並走していた自転車が合図なしに進路変更して、急に車の前に飛び出してきた場合、民事上は車側の過失が7割認められることが多いのですが、刑事上は、自転車が進路変更してきた時点でこれに気付いて急ブレーキを掛けたとしても、衝突が避けられないときには、速度超過等その他の過失が認められない限り、刑事上の過失は認められません」(若佐弁護士)
検察が「処分理由を明らかにしない」のは…
では今回のように、検察が処分理由を明らかにしない背景には、どのような事情があると考えられるのだろうか。
「もともと、検察は処分理由を明らかにする必要がありませんし、処分理由を公表することは少ないと思います。今回のケースにおいては、不起訴になった被疑者のプライバシーを考慮しているものと思われます」(若佐弁護士)
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。