アダルトグッズ“送り付け”詐欺が急増 「身に覚えのない商品」が自宅に届いたら?

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

アダルトグッズ“送り付け”詐欺が急増 「身に覚えのない商品」が自宅に届いたら?
代引きで荷物が届いたら思わず支払ってしまいそうだが…(Graphs / PIXTA)

「河馬屋という会社から代引きで身に覚えのない商品が届いた」
「配送伝票の連絡先に電話をしたが、つながらなかった」

こんな声が、秋ごろから急増しているという。

2021年7月に「特定商取引法」が改正されたことで、注文や契約をしていない商品が送り付けられてきた場合は「直ちに処分、代金支払い不要」で対応することが可能となった。ところが国民生活センターによれば、今年度の送り付け被害の相談件数は昨年度より増加傾向にあるという。

「河馬屋」とは?

国税庁の法人番号公表サイトで「河馬屋」と検索すると、「河馬屋株式会社」という会社が1社ヒットする。「本店又は主たる事務所の所在地」は大阪市平野区となっているが、サイトに記載されている住所をGoogleマップで検索すると、そこは民家の密集地域のように見える。

また12月27日現在、Googleマップ上の企業名は「河馬屋株式会社(送り付け詐欺)」と表示されている。送り付け商法の被害に遭った人が編集したのだろうか。

Googleマップより

ちなみにTwitterなどで被害報告を見ると、河馬屋から代引きで届く商品は、おおむね「アダルトグッズ」で、引き換え金額は1万〜1万5000円程度のようだ。

送り付け商法「昨年より増えている」

国民生活センターによれば「河馬屋」個別のデータは集計していないものの、11月には20代の男性から「注文した覚えのないアダルトグッズが届き、代金1万6000円を支払ってしまった。配送伝票に記載されている連絡先に電話したところ誰も出ない」といった相談が寄せられたそうだ。

「アダルトグッズの被害相談は年間数十件程度で、年度ごとの相談件数は、ほぼ横ばいで推移しています。しかし送り付けトラブルの被害相談全体で見れば、昨年度に比べて若干上回る傾向にあります」(国民生活センター)

弁護士が警告「業者には絶対に連絡を取らない」

先述のように、2021年7月の「特定商取引法」改正によって、注文や契約をしていない商品が送り付けられてきた場合は「直ちに処分、代金支払い不要」の対応が可能となった(法改正する以前は、商品の送付後14日が経過するまで処分できなかった)。

消費者被害に詳しい荒居聖弁護士は「注文や契約をしていない商品であれば、万が一代金を支払ってしまったとしても返還請求が可能ですので、すみやかに消費者ホットライン『188』(https://www.kokusen.go.jp/map/)へ相談してください」とその対応策について説明する。

また荒居弁護士は、送り付け商法がさらなる消費者被害に発展するリスクも指摘。

「商品を送り付けてきた業者に『生きている宛名情報』であることが判明した場合、悪質な名簿業者のリストに載ってしまったり、少額訴訟制度を悪用した架空請求に発展したりする可能性があります。現に消費生活センターにも、架空請求や不当請求の相談は多数寄せられているようです。

知らない業者から身に覚えのない商品が送り付けられた場合、商品を『直ちに処分』するほかに、

①すぐに消費生活センターに相談する
②自分から業者には絶対に連絡を取らない
③支払いには応じず無視する

という対策が基本になります。

自分から業者に連絡を取ったり、業者からの請求に不安を感じて代金を支払ってしまうと、次から次へと業者から連絡が来たり、頼んでいない商品を送り付けられたり、金銭の請求が来る可能性が高いです」(荒居弁護士)

万が一、悪質業者が少額訴訟を悪用して架空請求してきた場合は、どうすればよいのだろうか。

「通常の架空請求であれば無視すればよいのですが、少額訴訟を悪用してきた場合、これを無視すると、悪質業者の請求通りの判決が出てしまいます。したがって、万が一、裁判所から少額訴訟についての書類が届いたら、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

なお、本当に悪質業者が少額訴訟を起こした場合、裁判所からは『特別送達』という形で、郵便局員の手渡しで書類が届きます。最近では、悪質業者が裁判所になりすます形で、金銭を請求する内容のハガキや普通郵便を送ってくるケースもあるようですので、ご注意ください」(荒居弁護士)

法改正しても被害者続出のワケ

先述のように、2021年7月に改正された「特定商取引法」によって、注文や契約をしていない商品が送り付けられてきた場合は「直ちに処分、代金支払い不要」で対応することが可能となった。しかし国民生活センターによれば、送り付け商法の被害相談件数は昨年度から増加傾向にあるという。その理由を、荒居弁護士は以下のように指摘する。

「法律によって送り付け商法に関するルールが変わったことを知らない消費者が、まだまだ多いものと思われます。今後は注文や契約をしていない商品については『直ちに処分、代金支払い不要』でいいことを広く浸透させることで、悪質業者が『商品を送り付けても消費者は処分するし、代金も支払わない』と考えるようにしなければいけません」(荒居弁護士)

消費者一人ひとりの知識が、送り付け商法の撲滅につながると言えるだろう。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア