原則「副業」“自由”なハズが…会社の“就業規則”「副業禁止」だったら?
みなさま、今年もあとひと踏ん張りです!
今回は、2022年の労働法まわりの改正を振り返りたいと思います。
取り上げるのは、副業ガイドラインの改定についてです。こちらは7月に厚生労働省のガイドラインが改定されました。
「副業したいなあ〜」
「いまの仕事だけでは厳しくて...」 「副業って、どんな場合にできるんだろう?」
と思っていませんか?
副業は、原則、自由にできます。
裁判所もザックリ「仕事時間以外は、原則、何してもいいじゃん」と言ってます。会社が禁止できるのは合理的理由がある時だけなんです。
ガイドラインでも「副業は原則自由だよ〜」とアナウンスしています。今回、ガイドラインを基に分かりやすくお届けします(弁護士・林 孝匡)
副業をめぐる世の流れ
まずはザッと副業をめぐる世の流れを。現在、副業・兼業をしたい人が年々増加しています。
副業をしたい主な理由は、
- 1つの仕事では食べていけない
- さらに収入を増やしたい
- 活躍の場を広げたい
- 人脈を増やしたい
- 時間に余裕があるから何かやってみたい
というものが多いようです。
副業を推進する会社も徐々に増えてきているようです。
会社側のメリットとしては、
- 従業員が社外から新たな知識や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる
- 従業員の自律性・自主性を促すことができる
- 秀な人材の獲得・流出の防止ができる
というものがあるようです。
国も副業を後押ししています。
今年の7月に副業・兼業の促進に関するガイドラインを改定しました(分かりやすい解説バージョンはコチラ(R2.11))。
このガイドラインを基に解説します。
副業は、原則、自由にできる
声を大にして言わせて下さい。これが大大大大大大大大原則です!
副業は、原則、自由にできます。多くの裁判例で判示されています。
ザックリ言うと「仕事時間以外は、原則、何してもいいじゃん」です。
【マンナ運輸事件】では、以下の通り述べられています(京都地裁 H24.7.13)。
『労働者は勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができ、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)す るために当該時間を利用することを、原則として許さなければならない』
厚生労働省のモデル就業規則でも副業原則自由が謳われています。 「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」 との条項がモデルとして挙げられています。
ウチ、副業禁止なんですが・・・
副業禁止の会社、まだ多いと思います。だいたいは就業規則に「副業禁止」をうたっていますね。
しかし!
就業規則で定めていようが、副業は、原則自由です。 副業を禁止できるケースは限られているんです。
副業を禁止できるケース
副業を禁止できるのは以下のケースです。
裁判例でもほぼ以下のような考え方です。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により会社の利益が害される場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
1つ目は、副業をすると労働時間が長くなりすぎて本業に支障をきたす場合などです。 副業を禁止するには、会社が「これにあたるから禁止します」と立証する必要があります。 特に支障がないのに副業を禁止することはできません。
就業規則に違反したから懲戒処分?
会社が「副業禁止の就業規則に違反したから懲戒処分だ!」と言ってくることがあると思うんですが、懲戒処分できるとは限りません。
上に述べた4つの「どれかの弊害」が生じた場合に懲戒処分ができるんです。
裁判例でも、形式的に就業規則の規定に抵触したとしても、職場秩序に影響せず、使用者に対する労務提供に支障を生じさせない程度・態様の ものは、禁止違反に当たらないとして、懲戒処分を認めていません。
過去の裁判例
副業をめぐる裁判例を1つ紹介します。
運輸会社での事件です。
社員がアルバイトを4回申請しました。その社員さんは、子供の養育費の仕送りやローンなどでカツカツだったんです。しかし・・・会社はすべて却下しました。
Xさんが損害賠償請求したところ、裁判所は30万円の慰謝料請求を認めました。
裁判所はザックリ、
- はじめ2回の申請は過労のおそれがあり却下OK
- あとの2回は週1じゃん。3〜4時間程度じゃん
- 会社の業務に支障が生じないよね
と認定しました。
この裁判例に照らしても、ポイントは、「副業することで、今の仕事に支障が生じる?」かどうかだと思います。
会社から「副業はダメだ!」と言われた方は「支障が生じない」と説得しましょう。
労働時間の通算
副業先でも雇用される場合、労働時間が合計されます(労働基準法38①)。下図の赤枠【以外の○】の方(※)は労働時間が合計されます。
残業代の計算で若干、煩雑になるのですが、まぁコレは会社がすべきことなのであなたはあまり気にする必要がありません。「両社での労働時間が合計されて残業代がキチンともらえるんだ」ということを押さえておいてください。詳しくは副業・兼業の促進に関するガイドラインをご覧ください。
※赤枠バツの方は労働時間は合計されません。多くは、副業が業務委託などの方ですね。
労災について
少し細かいのですが、労災の計算方法も変わります。
今までは、事故が発生した会社での賃金分だけをもとに算定されていました。 しかし、2020年9月1日〜複数の会社での賃金額を合算して労災が算定されています。
あと、注意点として、20万円を超える副収入がある場合は、個人による確定申告が必要になります。その他、気になることがあればQ&Aをご覧ください。かなり詳しい解説です。
最後に
人生100年時代。さらに終身雇用が崩壊しつつある時代。
己のスキルを培うために副業を始める方も多いと思います。
副業は、原則、自由ということを押さえていただいて、可能性を広げていただければと思います! 不合理な理由で副業を禁止された時は、社外の労働組合か弁護士に相談してみましょう。
今回は以上です。これからも働く方に向けて改正情報や知恵をお届けします。
では、よいお年を!
【筆者プロフィール】林 孝匡(はやし たかまさ)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP:https://hayashi-jurist.jp Twitter:https://twitter.com/hayashitakamas1
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