交通事故発生後“加害者側”が「ドラレコ」データ削除… どんな罪に問われる?

弁護士JP編集部

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交通事故発生後“加害者側”が「ドラレコ」データ削除… どんな罪に問われる?
事故が起きたら「ドライブレコーダー」のデータは“必ず”提出しなければならない?(FINEDESIGN_R/PIXTA)

交通事故やあおり運転の被害を受けた際などに、証拠映像を残すことができるドライブレコーダー。

現在、自家用車にドライブレコーダーを搭載する義務はないものの、その普及率はここ5年ほどで飛躍的に伸びている。一般社団法人ドライブレコーダー協議会によれば、ドライブレコーダーの国内出荷台数は、2020年に新型コロナウイルスの影響で一度下がったものの、それ以外の年では増加が続いている。

ドライブレコーダー協議会HP「ドライブレコーダー出荷統計」(https://www.jdrc.or.jp/document/statistics/)より

中でも特に出荷台数が伸びたのは、2017年の第3四半期(10月から12月)からだ。直前の第2四半期が約43万台の出荷だったのに対し、第3四半期では約86万台と倍増した。

ドライブレコーダー普及のきっかけとなったのは…

これは2017年6月に、あおり運転が原因で起きた「東名高速夫婦死亡事故」の影響が大きいと言われている。事故は6月だが、加害者の逮捕が11月になったため、第3四半期からドライブレコーダーの売り上げが伸びたとみられる。

この事故では、被告のあおり運転を証明するため、神奈川県警が、事故当時に周辺を走行していた車のドライブレコーダー映像を活用。公判でも、事故現場を通過した車、十数台分のドライブレコーダーの映像が証拠として採用され、法廷で流されるなど、社会的にドライブレコーダーの「証拠能力」が認知されるきっかけとなった。

ドライブレコーダーつける理由は事故の“記録”

国土交通省作成「付けてますか?ドライブレコーダー。」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03driverec/resourse/data/drive.recorder.pdf)より

一方で、2020年の国土交通省の調査結果(上図)からもわかるように、ドライブレコーダーを導入した理由として、「あおり運転対策」を上回ったのが「交通事故の記録」だ。

ドライブレコーダーの普及に努める国土交通省のチラシには、下記のように搭載するメリットが記されている。


事故後、当事者間の言い分が食い違い、確たる証拠がないまま、あなたが一方的に悪者にされてしまい、予想外の損害賠償を求められるといったケースがないとは言えません。
ドライブレコーダーを搭載していれば、現場の状況を映像で正確に再現する目撃者となります。
事故後の様々な手続きもスムーズに進めることができ、きっとあなたの証言を裏付けてくれる心強い味方になります。

これらはすべて“被害者”側に視点に立ったメリットだが、もし自分が事故を起こす“加害者”側になってしまったら一転して立場は逆転する。その状況になった場合、ドライバー自身はどのような行動に出るのだろうか。

事故後にドライブレコーダー記録を隠ぺい…罪に問われる?

昨年9月、群馬県の県道で路上にしゃがみ込んでいた女性が、大型トラックにはねられて死亡したひき逃げ事件で、運転手が事故後にドライブレコーダーのデータを削除するなど隠ぺいを試みていたことが判明した。

通常、ドライブレコーダーとそのデータの所有権は運転手にあり、事故の際のデータ提出も任意とされる。たとえば自分に「不利」に働く可能性のある事故映像であっても、警察や保険会社には提出するべきなのだろうか。交通事故の対応に注力する鈴木淳志弁護士に聞いた。

加害者側として事故対応している場合、警察・保険会社からのドライブレコーダーデータの提出要請を、拒否し続けるということは現実的でしょうか。

鈴木弁護士:人身事故の場合、提出を拒否し続けた場合、警察は令状を取って強制的にドライブレコーダーを見ることも可能なので、拒否し続けるのはあまり現実的ではないと思います。

保険会社の場合は、保険の約款上、調査に協力する義務が設けられていますので、提出を拒否したことが原因で賠償額が増えるということになれば、保険金の支払いが受けられないということも起こりえますので、望ましくありません。

データの提出を拒否し続けた場合、なんらかの罰則や、裁判で不利に働くなどの可能性はありますか?

鈴木弁護士:提出しないこと自体に罰則があるわけではないですが、前述のような不利益は起こりえますし、訴訟の場においては、提出しないという態度自体から、映像の内容が不利なものと判断され、結果的に不利な判決につながるおそれがあります。

では、自分に不利な映像が残っていた場合、警察・保険会社からデータの提出を求められた時に、どのような対応を取るのが適切でしょうか。

鈴木弁護士:弁護士の立場としては、基本的には提出すべきと考えます。そもそも、有利・不利というのは、専門家の目から見れば異なる場合がありますので、素人判断で不利と決めつけて隠されるのは望ましくないと言えます。

群馬県で起きた事件のように、データを提出前に削除し、悪質な隠ぺいなどを行った場合、最悪どのような罰則が下される可能性がありますか?

鈴木弁護士:証拠隠滅等罪(刑法104条)という犯罪はありますが、これは他人の刑事事件の証拠を隠滅等した場合の犯罪なので、群馬県の事件の様に、自分の事故の証拠を隠滅した場合の罰則はないです。

ただし、証拠を隠滅しようとする態度から、本人の反省の態度がない、悪質性が認められる、などの判断につながって、下される刑が重くなるということは考えられます。隠ぺいなどせずに素直に提出し、正直に事実を伝えるべきです。

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