会社内上司の悪質な“いじめ”が止まない… 「パワハラ防止法」は対抗手段の“武器”になる?
あけましておめでとうございます!
今年も張り切ってまいりましょう!
・・・といきたいとこですが、仕事始め早々で、
「上司のパワハラがキツイ・・・」
「ヤツを網走に飛ばしたいわ!」
「どうすればいいの・・・」
と悩んでいる方も多いと思います。
この記事では、昨年スタートしたパワハラ防止法を振り返ります。
現在、すべての企業にパワハラ防止法が適用されています。
イコール、あなたはパワハラ防止法を武器として使えます。
「防止」との名前のとおり、この法律を使えばパワハラをストップできる可能性が高まります。以下、パワハラ防止法の使い方などをお届けします(弁護士・林 孝匡)。
会社がすべき10個の義務
2022年4月からパワハラ防止法が中小企業にも適用されることになりました。
パワハラ防止法および厚生労働省指針は、以下の10個の義務を会社に求めています。
①「パワハラを許しません!」と周知せよ
②「パワハラしたヤツを厳正に対処します」と周知せよ
③「相談窓口はココですよ」と周知せよ
④「相談者のプライバシーを守ります!」と周知せよ
⑤「相談しても何の不利益もありませんよ」と周知せよ
⑥相談窓口をキチンと機能させよ
⑦相談があればソッコーで事実関係を確認せよ
⑧パワハラが確認できたら、被害者をレスキューせよ
⑨パワハラが確認できたら、加害者にしかるべき措置をとれ
⑩再発防止策をとりたまえ
この10個の義務を知っていると、いろいろと戦えます。
例えば「パワハラ上司を異動させてください」「パワハラ上司に懲戒処分を出してください」など、会社に求めることができます。
以下、順番に解説していきますね。
パワハラを許しません!と周知せよ
会社は「わが社はパワハラはしません!」「パワハラとは〜のような行為です」と周知しないとダメなんです(周知=みんなに知らせる)。
周知の方法は、例えば以下の通り。
- 就業規則や新たな規則
- 社内報
- パンフレット
- 社内ホームページ
- その他の資料
- 研修、講習
あとは「パワハラしたヤツを厳正に対処します」との周知も義務づけています。意思表明みたいなもんです。
「相談窓口はココですよ」と周知せよ
・・・とはいえ、相談窓口を設けていない企業は、まだまだ多いですね、特に小企業。そんなときは労働局に相談しましょう。
相談も解決依頼も無料です。
「相談者のプライバシーを守ります!」と周知せよ
相談したことをパワハラ上司にバレたくない時ってありますよね。パワハラ野郎は「誰だチクったヤツは!」とか大暴れしないとも限りませんから。
会社は、キチンとあなたのプライバシーを守らなければならないんです。
「相談しても何の不利益もありませんよ」と周知せよ
相談した後、嫌がらせされたら、相談しにくいですよね。
なので、会社は「相談しても不利益なしですよ」と周知しないとダメなんです。
相談しやすくすることが目的です。
相談窓口をキチンと機能させよ
お飾りの窓口は許しまへんで!ってことです。
会社は、上記の動画のように、あなたのお話を丁寧に聞き取ることが求められています。
取りあえず「屁(へ)」みたいに形だけ整える企業もありますからね。
そんな窓口に遭遇したときは、労働局へ駆け込みましょう。
相談があればソッコーで事実関係を確認せよ
あなたが相談したのに、上司が「まあまあ、むにゃむにゃ」のような対応をとることは許されません。あなたがパワハラ相談をすれば、会社は、速やかに事実確認をする義務があるんです。
被害者をレスキューせよ
事実関係を確認した結果、パワハラがあった場合。会社は、アナタをレスキューしなければならないんです。
レスキューの例は以下のとおり。
- あなたと加害者との関係改善に動く
- 配置転換(あなたと加害者を引き離すため)
- 加害者からあなたへ謝罪させる
- あなたの労働条件が悪くなってたらそれを戻す
- あなたのメンタルヘルスに配慮
何のレスキューもしてくれなければ、会社の安全配慮義務違反を問える可能性があります。裁判で安全配慮義務違反が認められた例があります(国際信販事件 東京地裁H14.7.9)。
もし会社が何もしてくれない場合、会社のずさんな対応を証拠に残しておくことをオススメします(メールで催促、録音、時系列で書いたメモなど)。
加害者にしかるべき措置をとれ
事実関係を確認した結果、パワハラがあったなら、会社は加害者にしかるべき措置をとらなきゃダメなんです。
しかるべき措置の例は以下のとおり。
- 懲戒処分を出す
- あなたと加害者との関係改善に動く
- 配置転換(あなたと加害者を引き離すため)
- 加害者からあなたへ謝罪させる
会社は、就業規則などに基づいて、加害者に対して適正な処分をしなければなりません。
なので「上司を配置転換してほしいです」「上司に懲戒処分を出してほしい」、
と申し入れてみましょう。
もし、会社が上司に何の措置も行わなければ、裁判所は「何の措置もとってないがな! 違法!」と判断する可能性が高まると思います。
再発防止策をとりたまえ!
会社は、再発防止策を講じなきゃダメなんです。
『改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・ 啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること』(厚生労働省指針 4(3)ニ)。
上記太字部分のとおり、パワハラではないと判断した場合でも、会社は再発防止策を講じなければなりません。なので、パワハラちっくなことがあれば取りあえず相談窓口に申し入れましょう。「パワハラではない」と判断されたとしても、「再発防止策を講じてよ」と申し入れることができます。
最後に
もう一度、あげておきますね。
以下が会社がすべき10個の義務です。
①「パワハラを許しません!」と周知せよ
②「パワハラしたヤツを厳正に対処します」と周知せよ
③「相談窓口はココですよ」と周知せよ
④「相談者のプライバシーを守ります!」と周知せよ
⑤「相談しても何の不利益もありませんよ」と周知せよ
⑥相談窓口をキチンと機能させよ
⑦相談があればソッコーで事実関係を確認せよ
⑧パワハラが確認できたら、被害者をレスキューせよ
⑨パワハラが確認できたら、加害者にしかるべき措置をとれ
⑩再発防止策をとりたまえ
何かひとつでもしてなければ、安全配慮義務違反を問える(=損害賠償請求などができる)可能性が高まります。上司やパイセンのパワハラで悩んでいる方は、ひとつずつチェックして実践してみてください。
今回は以上です。これからも働く方へ知識や知恵をお届けします。
本年もよろしくお願いいたします!
【筆者プロフィール】
林 孝匡(はやし たかまさ)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP:https://hayashi-jurist.jp Twitter:https://twitter.com/hayashitakamas1
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。