スシロー炎上騒動で時価総額「168億円損失」も… “株価下落”を理由に「損害賠償請求」は難しいワケ

弁護士JP編集部

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スシロー炎上騒動で時価総額「168億円損失」も…  “株価下落”を理由に「損害賠償請求」は難しいワケ
「スシロー」ホームページより(https://www.akindo-sushiro.co.jp/)

回転ずし店を舞台に巻き起こった、客による不適切動画“炎上”の余波が続いている。

特に「スシロー」では、卓上の“しょうゆ容器”の注ぎ口に直接口をつけて吸う、湯飲みの飲み口をなめ未使用の湯飲み置き場へ戻す、粉末の緑茶を“さじ”で直接口に運ぶなど、回転ずしのシステムを根底から揺るがすような動画が連続して発覚し、騒動になった。

これらの動画が拡散・炎上したことが原因か、スシローを運営する「FOOD & LIFE COMPANIES」は株価が一時暴落。時価総額にして168億円が失われたことも大きく報道された。

「株価下落→損害賠償」は難しい

SNSでは「株価暴落168億円分の賠償って…」「1%の賠償でも1.6億か」など、株価の下落を元に損害賠償金額を計算する投稿が相次いだ。

しかし企業法務や一般民事の対応を多く行う松井剛弁護士によれば、「株価の下落を元に損害賠償を請求するのは現実的ではない」という。

「たしかに不祥事や炎上があると株価が下がることがありますが、株価はもともと流動的で、また上がることもあります。そのため、企業の時価総額が下がったことが、直ちに損害かというと判断が難しいですし、炎上と時価総額が下がったことの因果関係の証明も難しいです」(松井弁護士)

また、たとえ“損害が生じた”と立証できたとしても、株価の下落は会社ではなく直接的には「株主」の損害と考えられるため、会社が請求するのは理屈に合わないようだ。その上で松井弁護士は「炎上」に対する損害賠償について、このように説明する。

「株価下落と同様の問題はあるものの、会社の損害という意味では『“炎上”前は1か月の売り上げが500万円だったが、“炎上”後に400万円になりました』というように、売り上げが下がったという主張の方が炎上行為の影響は認められやすいと思います」。

スシローの売り上げが1%減ったら?

売り上げは株価のようなインパクトのある金額ではないように思えるが、スシローは回転ずしチェーン最大手である。

全国に626店舗を構え、昨年9月に発表された売上高(2022年9月期)は2813億円に上る。単純に計算すれば売り上げは一か月234億円以上であり、売り上げが1%減ると約2億円のマイナスとなる。

当編集部が実際に東京都内のスシローを訪れたところ、ランチ時の客席は閑散に近い状態であった(詳報は「スシロー「ガラガラ」は本当? 炎上店舗から270km離れた東京で見た“光景”」〈https://www.ben54.jp/news/314〉)。この状態が全国でも起きているのだとすれば、売り上げへの影響は少なくないといえるだろう。

さらにスシローは今回の一連の炎上を受けて、レーンでの寿司提供の一時中止、要望に合わせて卓上の食器や調味料の交換対応、席とレーンの間へのアクリル板の設置を順次行うことを発表した。

新たなオペレーションにかかる人件費や、アクリル板の設置費用などは、迷惑行為がなければ発生しなかったコストだと主張することもできそうだ。

刑事・民事の両面から、騒動の発端ともなった投稿者への厳粛な対応を表明しているスシローだが、どこまでを「損害」として請求するのか、現時点ではわかっていない。ネタなどの原材料費高騰による値上げと、景品表示法違反の不祥事で売り上げが減少していたスシローにとって、起死回生の年として迎えたはずの2023年。お金には換算できないが、出鼻をくじかれた落胆や憤りはいかばかりだろうか。

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