“緊急車両”接近「一時停止しない」クルマが増加? 進路妨害で「損害賠償請求」の可能性も

弁護士JP編集部

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“緊急車両”接近「一時停止しない」クルマが増加? 進路妨害で「損害賠償請求」の可能性も
「緊急車両」の進路妨害は許されないが…(Ryuji/PIXTA)

岐阜県可児市で今年1月、出勤中の消防車と乗用車が出合い頭に衝突する事故が発生。消防車の側面に乗用車が衝突し、消防車は横転した。この事故の報道を受けて、SNSやインターネット掲示板では「緊急車両が近づいているのに一時停車しないのはおかしい」と乗用車を非難する声が多く上がった。

運転中でも歩行中でも「常識」

救急車や消防車、パトカーといった「緊急車両」がサイレンを鳴らし赤色灯を点灯させた状態で近づいてきた場合、一般車両は道路の左側に寄せ進路を譲らなければならない。

四日市市消防本部HP(https://www.city.yokkaichi.mie.jp/syoubou/tools/wut001_news/cgi_img/43_6.pdf)より

車の運転中に緊急車両の進路妨害を行った場合、公務執行妨害罪または威力業務妨害罪が成立し得る。また、道路交通法違反(緊急車両の優先) により5万円以下の罰金刑、違反点数1点加算および反則金6000円(普通車の場合)という行政処分が下される可能性もある。

たとえ歩行者であっても同様だ。2021年9月には秋田県秋田市で、病院近くにおいて繰り返し救急車を待ち伏せ、車両の前で立ち止まるなどして緊急走行を妨害したとして、20代の男性が道路交通法違反(道路における禁止行為)の疑いで書類送検されている。

また、今年2月に兵庫県芦屋市で40代の男性が公務執行妨害の疑いで逮捕された事件は、SNSを中心に話題となった。路上で息子とキャッチボールをしていた男性は、近くで救急業務を行っていた救急隊員に道を開けるよう呼びかけられ激高、救急車の窓の隙間から車内に手を突っ込むなどしたという。幸い急病人の命に別条はなかったが、男性の影響で救急搬送は約20分遅れた。

一時停止しない車は増えた?

救急車は一刻を争う病人やけが人を搬送している可能性があり、消防車も1秒でも早く消火活動に取り掛かるべくサイレンを鳴らしている。緊急車両はその名の通り、緊急事態に対応していて、それを妨害することなど許されることではない。

当たり前のことを、と思うだろうが、昨年6月に救命士を名乗る人物がツイッター上に「最近、救急車に道を譲ってくれない車が増えた」と投稿し反響を集めた。

そのような車が増えたという統計はないが、この投稿に対して「俺も最近同じことを思う時がある」「譲らないドライバー増えたよね」と同意する人も多かった。

気になるデータとして、救急車の現場到着までの所要時間が10年前から延伸傾向という、総務省の統計があがっている。

総務省「令和4年版 救急・救助の現況」の公表(https://www.soumu.go.jp/main_content/000856261.pdf)より

新型コロナウイルス感染症の影響をほぼ受けていない2019年(令和元年)までのグラフを見ても所要時間が延びていることがわかる。総務省は原因について発表していないが、一部には、緊急車両に道を譲らない車の存在があるのかもしれない。

「妨害のせいで病状悪化した」損害賠償請求される可能性「ある」

特定の車が緊急車両に道を譲らなかったり、意図的に進路妨害をした場合、「救急車に乗っている病人の状態が悪化した」、「消防車の現場到着が遅れ延焼が広がった」など重大な結果をもたらす可能性もあるのではないだろうか。

大阪府警察で行政職員として勤務していた経験を持つ堀田和希弁護士は、緊急車両の妨害をしたことで、病人の家族や、火災現場の住民、あるいは消防署などから損害賠償請求される可能性について「十分にある」と話す。

「もちろん、緊急車両の出動が要請されている時点で、進路妨害の有無にかかわらず損害(病態の悪化や火災による延焼など)が発生する可能性はあります。そのため、進路妨害に対する損害賠償請求を行う場合には、“進路妨害によって”その損害が生じたといえるかどうか(当該妨害行為と発生した損害との間に相当因果関係が認められるかどうか)が大きな争点になるかと思います」(堀田弁護士)

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