死刑確定から42年「袴田事件」再審が決定 裁判所は捜査機関による「証拠のねつ造」の可能性を指摘

弁護士JP編集部

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死刑確定から42年「袴田事件」再審が決定 裁判所は捜査機関による「証拠のねつ造」の可能性を指摘
東京高裁前で会見を行った袴田ひで子さんと小川秀世弁護士(3月13日霞が関/弁護士JP編集部)

1966年に静岡県静岡市清水区(旧:静岡県清水市)で発生した、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された「袴田事件」を巡って、死刑が確定した袴田巌さん(87)の第2次再審請求(裁判のやり直し)の差し戻し審で、東京高裁は13日、再審開始を認めた。

この事件では、当時みそ製造会社の従業員であった袴田さんが逮捕され、取り調べで犯行を自白。その後の裁判で自白の強要があったとして、袴田さんは無罪を主張したが、1980年、死刑判決が確定していた。

その後、2014年に静岡地裁が再審を開始、死刑および拘置の執行停止を決定、袴田さんは拘置所から釈放された。

2018年には東京高裁が静岡地裁の決定を取り消して再審請求を棄却したが、2020年に最高裁は「東京高裁の決定には審理が尽くされていなかった」として、高裁に審理を差し戻していた。

以後、現在まで、再審を開始する(やり直し)か、改めて再審請求を棄却するか、を決めるための協議が続いていた。

東京高裁へ向かう袴田ひで子さん(3月13日霞が関/弁護士JP編集部)

「第三者が隠匿した可能性」

裁判のやり直しをめぐり争点となっていたのが、事件発生から約1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つけられた、犯人のもの(証拠)とされる5点の衣類に付いた血痕の「赤み」に関するもの。弁護側、検察側がそれぞれ独自に専門家へ依頼し、鑑定や実験を行っていた。

これらについて13日の決定で東京高裁・大善文男裁判長は、「1年以上みそ漬けされた衣類の血痕の赤みが消失することは合理的に推測できる」と弁護側の実験結果を支持し、「5点の衣類に赤みが残っていたことは、確定判決の認定事実に合理的な疑いを生じさせた」と指摘。さらに、「事件から相当期間経過した後に第三者がタンクに隠匿した可能性が否定できず、捜査機関の者による可能性が極めて高い」とねつ造の疑いについても、具体的に踏み込んで言及した。

「57年間待っておりました」

東京高等裁判所での決定後、裁判所から再審開始などの紙を掲げた弁護士が出てきたのに続き、正門前に集まった多くの支援者らに拍手で迎えられた袴田さんの姉ひで子さんは、「皆さま本当にありがとう。この日が来るのを57年間待っておりました。ありがとうございます」と笑顔で語った。

続いて弁護団の小川秀世弁護士は、「支援者が力を尽くしてくれて、本当にありがたかったです。こうやって一緒に喜べることが本当にうれしいです。(決定)内容についてはまだ見る余裕もなかったのですけど、ただ、犯行着衣(5点の衣類)であるということについては否定されたということで、もうそこは覆らない。これで絶対に終わらすことができると思っています」と時折涙で声を詰まらせながら話した。

この後、今回の再審開始決定を受け、ひで子さん、弁護団同席の日本弁護士連合会による臨時の会見が開かれた。

冒頭、日本弁護士連合会会長・小林元治氏は、「袴田事件の第二次再審請求事件について、静岡高等裁判所の再審決定を指示し、即時抗告を棄却する決定について、弁護士連合会としては高く評価したい。事件から実に57年間という長い時間が経過しており、袴田氏は87歳と高齢になっておられます。

検察当局におかれましては、最高裁判所に特別抗告をすることなく、速やかに再審公判に臨んでもらいたいと強く思います」と訴え、引き続きの支援を表明。再審法の改正、えん罪防止のための制度改革に対しても、今後の活動を継続する旨を併せて語った。

ひで子さんと日本弁護士連合会会長・小林元治氏(3月13日霞が関/弁護士JP編集部)

今後は、再審開始の決定を不服とし検察側が特別抗告(5日以内)した場合、再び最高裁に判断が委ねられる。申し立てがなければ、静岡地裁においてやり直し裁判が行われ、無罪への可能性が高まる。

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