成田悠輔氏 “集団自決”発言もMC新番組スタートで物議…テレビ局の“起用リスク”は?
「高齢者は集団自決」発言が炎上した経済学者・成田悠輔氏がMCを務めるテレビ朝日の新番組「ソレいる?六本木会議」が、7日(木)深夜2時47分から始まった。
成田氏の起用を巡っては、発表当初からSNSなどで「視聴者をナメている」「倫理観より視聴率」など批判の声も多かったが、『女性自身』によると、テレビ朝日は「番組にご出演頂く方々については、企画内容などそれぞれ個別の状況を踏まえて総合的に判断しております」(原文ママ)とコメントしたという。
あくまで「レピュテーションリスクの問題」だけど…
モラルはさておき、成田氏は犯罪にあたる行為や、特定の個人を名誉毀損したわけではない。しかし、その発言は『ニューヨーク・タイムズ』でも「これ以上ないほど過激」と報道されるなど、波紋は国外にも広がっており、一視聴者としては成田氏の起用はリスクが大きいようにも思える。
テレビ朝日の新番組を含め、他のテレビ局の番組にも成田氏は引き続き出演を続けているが、ガバナンス・コンプライアンスなど企業法務の視点から、これらテレビ局の対応に問題はないのだろうか。
企業法務に詳しい杉山大介弁護士は「純粋に企業目線で考えると、あくまでレピュテーションリスクの問題なので、世間が問題視しなければどうとでもなるという、身もふたもないところがあります」とした上で、「ただし」と苦い顔をする。
「高校生との対談みたいなのも見ましたが、ある種の“グロテスクさ”を感じずにはいられませんでした。テレビや出演者が『そういうことを言っていい』と後押しするため、子どもが『老人を日本から退場させるべき』みたいな話を平然と語るんですね。
子どもに対して『親を刺せばいい』と助言していたひろゆき氏もそうですが、『こういう人が出てるからこういうことを言ってもいいんだ』という空気は、たとえ多数が実際の行動には移さなくとも、誤った行動にいたる人間を生みやすい環境を作るため、警戒すべきです」(杉山弁護士)
テレビ局は「自分たちが危うくならない限りは起用をやめない」
「テレビを見ない人が多くなった」と言われて久しいが、それでもなお、テレビが持つ世の中への影響力は絶大だ。一民間企業だとしても、社会的責任は大きいと言えるだろう。杉山弁護士は以下のように続ける。
「過激な発言をする人を起用し続けることで『そういうことを言っていい』という空気が作られるとは思わない、あるいはそういう想像ができない人ばかりになると、テレビ側は特に不利益を受けないということで、今回のような“無視する”という態度に出ます。残念ながら今に始まったことではないです。
たとえば三浦瑠麗氏も、過去に『スリーパーセル』(※1)など特定の外国人差別につながる根拠のない発言で物議を醸しましたが、メディアは起用し続けました。ところが、夫に司直の手が伸びた瞬間、パタリと起用しなくなるわけです。
(※1)一般市民を装ってターゲット国に潜伏している工作員のこと。2018年、三浦氏がテレビ番組で言及したことで、不安の声や、在日コリアンへのヘイトにつながると批判する声など、議論が広がった
そもそも成田氏の肩書について、日本における『助教』の立場の人間を見栄えが良いからと『助教授』と紹介するメディアなどを見ていると、もともと正確に事実を伝えるということに関心がない人たちなのではないかとすら思えてしまいます。きっと、自分たちが危うくならない限りは起用をやめないでしょう。
良識ある市民としては、それでも忘れずに問題を指摘して、少しでもスポンサーが嫌な顔をするような空気作りで対抗するしかないです」(杉山弁護士)
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