志田未来×風間俊介『勝利の法廷式』 若手プロデューサーがまったく新しい“劇場型”リーガルドラマを仕掛けた理由

Nana Numoto

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志田未来×風間俊介『勝利の法廷式』 若手プロデューサーがまったく新しい“劇場型”リーガルドラマを仕掛けた理由
『勝利の法廷式』ポスターの前に立つプロデューサーの多鹿雄策さん(撮影:弁護士JP編集部)

4月13日から読売テレビ・日本テレビ系にて、ドラマ『勝利の法廷式』が放送される。本作は、トラウマを抱えた女性弁護士が謎の脚本家の力を借りて現代社会の闇を暴く、劇場型リーガルミステリーだ。元天才子役にして現在は弁護士という経歴を持つ主人公・神楽蘭役を志田未来が、謎に包まれた脚本家・黒澤仁役を風間俊介がそれぞれ演じる。

裁判の弁論が黒澤によって書かれた“脚本”によって進むという劇中劇の設定など、異色ともいえる「法廷もの」のドラマを制作した意図や、作品の見どころについてプロデューサーである多鹿雄策(たしか・ゆうさく)さんにインタビューを実施した。

「2023年と“タイアップ”しているかのようなドラマを作りたい」

はじめに、勝利の“方程式”ではなく『勝利の法廷式』としたタイトルに込めた意味を聞かせてください。

多鹿雄策さん(以下、多鹿):実は、タイトル決めはかなり難航しました。複数のタイトル案を経て、ようやくこの『勝利の法廷式』に決めました。タイトルだけでリーガルドラマだということが伝わってほしかったので、「方程式」の漢字を「法廷式」に書き換え、耳で聞いた時には、スポーツでも聞いたことのあるなじみのあるワードに。また、本作に登場する脚本家の黒澤が、裁判で勝つために台本上でどんな「方程式」を組み立てるのか? という意味も重ね合わせています。

ドラマの企画の種を探している中で、人生で初めて東京地方裁判所に傍聴に行きました。傍聴するまで、裁判には、ドラマのように勝ち負けを争い、時に白熱するようなイメージを持っていました。ですが、実際に見て感じたのは、「裁判が終わった後、どうやって生きていくのか」「そのために、ご家族の方が、どんなサポートをしていくのか」と、これからのことを話す場でもあるんだ、ということでした。弁護士というお仕事は、依頼人に寄り添って、隣で一緒に歩いていくことも大切なんだと感じました。だから、ドラマタイトルの「勝利」は、裁判での勝ち負けだけじゃなくて、主人公・神楽蘭にとっての弁護士としての信念でもある「“依頼人の未来を照らす”ことが勝ちなんだ!」という意味を掛け合わせたタイトルになっています。

日本の現代社会の問題を題材にしたリーガルドラマを作りたいとの思いがあったそうですね。多鹿さんが特にフォーカスしたかった題材を教えてください。

多鹿:このドラマは、1話完結のエピソードが続いていきます。どのエピソードも「2023年とタイアップしているかのようなストーリー」を作りたいと思っていました。経済ニュースを読み、気になった記事をずっとストックしていたので、その中から題材を選びました。中盤の話で出てくる「闇バイト」は、特に扱ってよかったなと感じています。最近、闇バイトや特殊詐欺のニュースを情報番組や記事でよく見かけるようになったと思いますが、実は、その前からすでにドラマの台本は出来上がっていて、まさに「2023年とタイアップしたい」という想いが、現実とリンクしていった感じでした。

他にもSNSでの誹謗中傷、フードデリバリーの配達員を主人公にしたエピソード、また後継者不在という超高齢社会の日本だからこそ起きている内容なども、ストーリーの題材となっています。幅広い年代の方が主人公になるエピソードを作ることで、さまざまな世代の方々に「こういう社会問題が、今の日本にはあるんだ……」と知るきっかけに、このドラマがなっていったらうれしいですね。

多鹿さんは30歳で、プロデューサーとしては若手だとお聞きしました。上の世代の方々と仕事をする機会が多いと思いますが、大変さはありませんでしたか。

多鹿:初めての連続ドラマプロデュース作品なので、いろいろな人の意見を聞いて、毎回悩んで止まってばかりです。でも最終的には自分が決めないと前に進まないと思って、何とかここまで一歩ずつ進んできました。自分の中で絶対に譲れないものは必ずあるし、それが揺らぐと、周りも揺らいでいく。そうすると、みんなどこを向いていけばいいのかわからなくなる。特にドラマの撮影現場で一番感じたことは、世代なんて関係なく、自分の想いをどれだけ熱量を持って、出演者やスタッフのみんなに伝えられるか、ということ。

もちろん、まだまだできていないことだらけですが…! でも、そういった想いがあるので、ゲストでご出演いただくキャストの方々には、ドラマの概要や人物設定の話だけじゃなく「この題材を選んだきっかけや、今、実際にこんな社会問題があって、このエピソードでは、こんなふうにこの問題を描きたいと思っています」ということを説明させていただいてから、撮影に挑んでいます。

撮影現場での多鹿さん(提供:読売テレビ)

志田未来×風間俊介 実力派キャスティングの思い

丁寧な現場作りをされているのが深く伝わってきました。今回、神楽蘭役が実際に子役時代から活躍されてきた志田未来さんというのは、多くの視聴者にとって納得のいくキャスティングですね。

多鹿:弁護士と脚本家のバディは、両者の長所と短所をはっきりと出した人間にしたいと思っていました。志田さんの演じる蘭は、過去のトラウマが原因で法廷に立てない。だけど、元天才子役から卓越した演技力を持っている。黒澤が書く台本を手にした時、蘭がどんなふうに演じるかという点で、蘭は毎話、色んな姿を見せないといけない、それを「カメレオン弁護士」という言葉でよく表現しています。天才子役でカメレオン、同世代で自分が小さい頃からテレビを通して拝見しており、まさに自分にとっての天才子役だった志田さんに、ぜひ演じてもらいたいと思いオファーしました。

脚本家の黒澤仁役に風間俊介さんを起用した理由も聞かせてください。

多鹿:謎の脚本家・黒澤は、狙いのわからない不気味な人物です。「蘭と黒澤が抱えている謎は何なのか」が、本作の全話通してのサスペンス部分になりますが、そこをガッツリ引っ張っていってもらいたいと思い、風間さんにオファーしました。これまで自分が風間さんの出演する作品を見てきて、「これはやったことないだろう」と思う展開や要素をたくさんぶつけて、新しい風間さんの一面を引き出したいと思って話の展開を作っているので、そこも楽しんでもらいたい要素です。

リーガルドラマに“法曹界”以外の人を登場させたい

リーガルドラマでありながら裁判に脚本が忍ばせてある、それを演じるのは元子役。このような設定を作るにあたりインスパイアされたものはあったのでしょうか。

多鹿:リーガルドラマというと、弁護士・検察官・裁判官など法曹界の人間で作られるドラマがほとんどだと思います。扱う事件や裁判を、今の日本の社会問題に関連させることで「リアリティー」を追求した時に、「エンターテインメント性」をどう出すか? そこで考えたのが、「法曹界と異なる世界の人間を入れられないか」と思ったのが発端です。そして弁護士とバディを組んだときに、一長一短を補い合えるような存在とは何だろうと考え、脚本家が弁論の台本を書いたら面白いかもと思い、このような設定になりました。

芝居の中で芝居を描くというのもユニークな構造だと感じましたが、志田さんには「ドラマの中で芝居をしている」という演出をつけているんですか。

多鹿:そうなりますね。志田さんには、神楽蘭という役でのドラマの台本がありつつ、その中でもカメレオン弁護士・神楽蘭として、さらに脚本家から渡された台本の演技をしないといけません。全10話に渡って、どれだけ法廷シーンでのバリエーションを提供できるか?が勝負だと思っているので、セリフだけでなく、動きを使った展開、もしくは台本自体を使った遊びなど、いろいろな形でお芝居に挑んでもらっています。

この作品には現代社会の問題を包括したところがあると思いますが、それを視聴者の方にどう受け止めてほしいですか。

多鹿:弁護士×脚本家という異色のエンターテインメント性の強いドラマとして、純粋に楽しみながら見てもらった上で、「世界のどこかで、もしかしたら自分のすぐ近くに、こんな問題があるかもしれない」と知ってもらえたらうれしいです。

最後にこの作品の見どころを教えていただければと思います。

多鹿:キャッチコピーである「法廷を去った女性弁護士が、謎の脚本家の力を借りて、現代社会の闇を暴く、劇場型リーガルミステリー」が、このドラマの楽しんでもらいたい要素をほぼ表現できていると思っています。事件の謎がどのように解明されていくのか、ミステリーとしても楽しみながら、法廷で台本を元にどんな展開が繰り広げられるのか?感動あり、爽快感あり、ダイナミックな展開あり!と毎話、違った形でお楽しみいただけると思います。そして、1話完結の各エピソードだけでなく、全10話を通して考察できるサスペンス要素もありますので、このドラマの中で何が起きているのかを初回から最終回まで、楽しんでいただけたらうれしいです。

■放送情報
『勝利の法廷式』
読売テレビ・日本テレビ系にて、4月13日(木)スタート 毎週木曜23:59~0:54放送
出演:志田未来、風間俊介
脚本:小谷暢亮、本田隆朗、富安美尋、蓼内健太
監督:宝来忠昭、本田隆一ほか
チーフプロデューサー:岡本浩一
プロデューサー:多鹿雄策、福田浩之、河野美里(ホリプロ)、奥村麻美子(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:読売テレビ
©︎読売テレビ
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/houteishiki/
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