山上徹也被告の裁判「危険物」届き中止も中身は…「妨害する意図はなかった」送り主も困惑のワケ

弁護士JP編集部

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山上徹也被告の裁判「危険物」届き中止も中身は…「妨害する意図はなかった」送り主も困惑のワケ
奈良地方裁判所が入る建物(Sakura Ikkyo / PIXTA)

6月12日午前。奈良地方裁判所に危険物の可能性があるものが届いたとして、奈良地裁は職員や来庁者を屋外へと避難させ周囲は騒然となった。

同日は午後3時から安倍晋三元首相(当時67歳)を襲撃したとして殺人罪等で起訴された無職・山上徹也被告(42)の第一回公判前整理手続きが本人出席のもとで行われる予定だったが、この騒動で手続きは中止に。危険物と見られたのは縦約33センチ、横約28センチ、高さ約26センチの粘着テープで梱包(こんぽう)された段ボールの箱だったという。

「妨害する意図はなかった」

社会部記者が騒動について説明する。

「金属探知機を使用して職員が段ボールを調べたところ反応があったために職員が警察に通報。通報を受けた警察は爆発物処理班を出動させ段ボールを運び出しましたが、中身を詳しく調べたところ、段ボールの中には危険物はなく山上被告の減刑を求める大量の署名が入っていました」

警察が段ボールの差出人に事情を聴いたところ「送ったのは署名で(裁判を)妨害する意図はなかった」と話したという。

「段ボールの差出人は安倍元首相襲撃事件発生後の昨年7月中旬ごろからオンライン署名サイトで山上被告の減刑を求める署名活動の発起人となり、サイト上に“過酷な成育歴を鑑みての温情”“本人が非常に真面目、努力家であり、更生の余地のある人間である事”を署名活動の理由として掲げていました。署名は約1万3000人分が集まり、発起人はその署名を山上被告、裁判官各位、検察官各位、弁護人各位などに宛てて送ったようです」(同前)

「なんで金属探知機が反応したのか…」

段ボールの送信者の意図とは裏腹に大事に至ってしまった今回の危険物騒動――。

山上被告の減刑署名運動の発起人であり、段ボール送信者本人のものと見られるTwitterには、今回の意図せぬ騒動についての憤りと警察に事情聴取されるまでの経緯などがつづられている。以下、今回の騒動と関連するツイートを抜粋する。

【中身は封筒に入った〇〇〈編集部注※オンライン署名サイト名〉からダウンロードした11日までの賛同者名簿とコメントリスト、それぞれ4分ずつ。それぞれ封筒に分けて、山上さん、裁判官各位、検察官各位、弁護人各位宛。だからかなりの質量にはなっているが】

【どう考えても、金属探知機が作動するような物は入ってない。】

騒動直後には警察に事情聴取を受けるまでの様子について次のようにツイートしている。

【奈良警察が既に東京に向かってるとかで、最寄りの○○駅交番に呼び出されました】

そして警察からの聴取後のツイートには段ボールの中身が危険物ではなかったことが明らかになったことについて安堵(あんど)しながらも、図らずも裁判が中止になってしまったことについて法廷関係者に謝罪の意を示した。しかし、送信した段ボールが金属探知機に反応したことについては以下のように不信感をあらわにしている。

【しかし、なんで金属探知機が反応したのかは全くの謎です。クリップやホチキスすら使っておらず、署名をダウンロードした用紙と、梱包に使った封筒、ダンボール、ガムテだけなのに。威力業務妨害で起訴するというのなら、、金属探知機の件、しっかり調べて欲しい】

「弁護団としても遺憾」

大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹――。

現時点で奈良地裁から次回期日の指定がないことを受け山上被告の弁護団は、「予定されていた公判前整理手続きの期日を開くことができなかったことは、弁護団としても遺憾で、すみやかに次回期日が指定されることを奈良地裁に対して希望する。弁護団としては本件について、平穏な状況下で手続きが進むことを強く望んでいる」などとコメントしている。

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