無灯火、イヤホン運転高校生の自転車が死亡事故誘発…加害未成年に問われる責任

弁護士JP編集部

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無灯火、イヤホン運転高校生の自転車が死亡事故誘発…加害未成年に問われる責任
事故現場付近の環状七号線(写真:弁護士JP)

「前をあまり見ていなかった」

自転車運転の基本的マナー違反が原因とされる、痛ましい事故が発生している。

東京都足立区西新井の環状七号線(通称:環七)で、無職の男性(75)がトラックにはねられ死亡する事故が発生した。先月12月2日午前5時半頃、環七沿いの歩道を歩いていた男性は、反対方向から走ってきた通学途中の男子高校生(16)が運転する自転車と出合い頭に接触、そのはずみで車道側へ倒れ、走行中の2トントラックにはねられたもの。

男子高校生は両耳にイヤホンを装着、早朝の薄暗い中無灯火で自転車を運転し「前をあまり見ていなかった」と話していたという。西新井署において、男子生徒を重過失致死容疑で、トラックを運転していた男性(52)について過失運転致死の疑いで現在も調べが続いている。捜査担当者によれば、男子生徒はショックにより憔悴、事故当日は話をできる状態ではなかったという。今後も未成年というデリケートな立場も鑑み、引き続き実況見分も含めた調べは慎重に進められていく予定だ。

事故が発生した環七沿いの歩道付近(東京都足立区西新井/弁護士JP)

自転車〝加害〟事故の割合は?

近年、自転車関連事故件数自体は減少傾向にあるが、すべての交通事故件数に占める「割合」は微増している。

警視庁交通局の統計によれば、2020年、自転車が第1当事者(過失がもっとも重い者)または第2当事者となった交通事故件数は6万7673件と交通事故件数全体に占める割合は 21.9%。さらに「加害事故」は1万3982件と自転車事故全体に占める割合は20.7%となっている。自転車による加害事故を法令違反別にみると、「安全運転義務違反」が58.3%と多くを占めた。

道路交通法第70条は「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められている。これに反した場合、「安全運転義務違反」として反則金の対象となる。

ルール順守をしないリスク

前述の統計でも分かる通り、自転車は道路交通法で「軽車両」に分類され、自動車やオートバイと同じく「車両」として扱われる。たとえば、原則として自転車は歩道ではなく、「車道の左側端」通行である(道路交通法17条1項、18条)ことなどが未だに認知されていない可能性もある。交通事故の対応経験も多い前田弁護士は基本的なルールを守らないことの「リスク」について指摘する。

「自転車の基本的なルール順守はモラルの手前にあるものともいえます。万が一事故を起こしてしまった時に、ルールを守っていない場合、「過失割合」が大きくなる可能性があるからです」

『自転車は車道が原則、歩道は例外』
『車道は左側を通行する』
『歩道は歩行者優先、通らなくいけない場合でも車道寄りを「徐行」する』
『安全ルールを守る(飲酒運転、2人乗り、他の自転車と並走禁止。夜間ライト点灯。信号を守る。交差点での一時停止と安全確認)』
『子どもはヘルメットを着用』

…これら基本を守らないまま事故を起こした場合、責任割合が大きくなるリスクがあると前田弁護士はいう。

自転車は車道が原則(写真:弁護士JP)

損害賠償責任は過失割合による

自転車で事故の加害者となった場合、刑事責任と民事責任を負うことになるが、冒頭の事故のような未成年のケースではどのような措置がとられる可能性が高いのであろうか。

「相手が亡くなってしまった場合、刑事事件として進められる可能性は非常に高いでしょう。ただし、最初は成人の方と同様に捜査の対象になりますが、最後は20歳以上とは区別して14歳以上の未成年は、「少年審判」で処分がくだされるというのがほとんどです。少年院で更生させるのか、保護観察にして様子を見ていくのかといった判断になるでしょう」(前田弁護士)

一方民事において、損害賠償責任を負うケースでは、「少年とトラック運転手との間で、責任割合の話になります。事故の状況を具体的に吟味した上で賠償金額などが判断されるでしょう。死亡事故の場合、結果が甚大なので、たとえ加害者が未成年であっても成人と同様に相当な損害金が当然請求されるでしょう。」(前田弁護士)

全国の自治体で加入の義務化が進んでいる自転車保険は、加害者側の金銭負担も抑えられるため有効だが、まだ加入が普及しきれていないのが現状とも前田弁護士は語る。

自転車で事故を引き起こしてしまった場合、過失割合によっては、大きな金額を請求されてしまう可能性が高い。基本的な交通ルールを守り運転するということが、万が一回避不可の事故が発生した場合でもせめてもの「保険」にもなり得る。

1年の中で日の入りが早い今の時期は、特に注意を払った自転車運転を心がけたい。

取材協力弁護士

前田 啓吾 弁護士

前田 啓吾 弁護士

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