18歳自衛官候補生「小銃発砲事件」“実名掲載”に賛否…「特定少年」犯罪報道の在り方とは?
6月14日、岐阜市の陸上自衛隊射撃場で男性隊員3人が死傷した小銃発砲事件――。6月22日に発売された『週刊新潮』は殺人容疑で送検された18歳の自衛官候補生(18)の実名と顔写真を掲載した。これまでも『週刊新潮』は令和3年に甲府市で発生した放火殺人事件で逮捕された19歳少年の実名と顔写真を掲載した過去がある。
「違法であり、到底許容できない」
昨年4月に施行された改正少年法では18、9歳は「特定少年に」あたり、起訴されると氏名や顔写真など本人を推定させる「推知報道」が可能となったが、今回の自衛官小銃発砲事件の場合、逮捕された自衛官候補生は起訴前の特定少年であった。この報道に対し、日弁連は、「違法であり、到底許容できない」との声明を発表。
一方の『週刊新潮』編集部は、「無差別大量殺人の惨事になる恐れもあり、社会に与えた影響はすさまじい。自衛隊への国民の信頼を揺るがしかねない問題で、重大性に鑑み、実名・顔写真を含め、背景を探る報道をすることが常識的に妥当だと判断した」とのコメントを出している。
実名報道の“メリット”はない!?
果たして今回のような特定少年が犯した重大犯罪の実名報道にはどのようなメリット、デメリットが考えられるのだろうか?
長年、少年事件の弁護に携わってきた杉山大介弁護士は特定少年の実名報道のメリットについて、「ないです。大衆の興味が満たされ、雑誌が売れるだけ」と一蹴する。
「(実名報道をすることで)事件がフィクションでないことが確定しますが、そこに(事件に)疑いなんて持っていないので。逆に(改善更生や社会復帰の阻害等)デメリットに関して言えば、少年事件に関わらず、実名報道一般に言えることですが、捜査の初期段階は情報としての精度が低いにも関わらず、実名とセットでいい加減な情報がばらまかれ、特に是正もされないまま放置される危険性があります」
そして、少年事件の手続きは後々も非公開であり、約1年後に刑事裁判が行われる時には「その頃には(事件のことで)騒いでいた人たちは次の話題に移っているので誤りは是正されにくいです」と指摘する。
さらには今回のケースのような特定少年が重大犯罪を起こした場合の報道機関の報道の在り方については次のような見解を示す。
「捜査機関の最初の想定が後から覆る場面は山ほど存在しています。そうした理由からも報道機関は少年事件に関わらず大人が起こした事件の場合でも、これから(捜査機関が)調べていく話である、という意識を持つことが必要です」(杉山弁護士)
そして、「事件は一つ、一つ、当事者の人生がかかっている」ことを杉山弁護士は強調する。
「今回も人が死んでいる話です。本当に(報道機関が)問題意識を持っているなら、それをたかが数日で雑に消費しようとせず、ちゃんと掘り下げてから話をしていくことが大事だと思います」(同前)
報道に携わる側の意識も問われているのではないだろうか。
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