「このバカ女」本妻に嫌がらせ繰り返した“浮気相手”「自分も被害者」主張も“慰謝料アップ”の因果応報
今回は【浮気相手は本妻 or 本夫にイランことしたら払う慰謝料が上がっちゃうよ】をお届けします。
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▼ バトル
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・妻
旦那の浮気にブチギレ
・浮気相手の女性
4年、浮気を続ける
妻が浮気相手の女性に慰謝料を請求しました。
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(!) 浮気相手が妻に嫌がらせ
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ココなんですよ。浮気絶賛進行中に、浮気相手の女性は妻にこんな嫌がらせをしていました。
・1日に何度も無言電話
・妻が運転する車に手袋を投げつける
ーーー 裁判所さん、コレはどうですか?
裁判所
「執拗(しつよう)かつ悪質な嫌がらせです」
そして慰謝料アップの材料となっています。浮気している方は注意しましょう。
ただ、浮気相手の女性にも同情できる部分はあるんです...。そのあたりも交えて事件をお届けします。(東京地裁 H24.6.19)(弁護士・林 孝匡)
※ 裁判を一部抜粋し簡略化、判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換しています
事件の当事者
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▼ 妻
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・38歳
・結婚6年目
・子ども2人
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▼ 夫A
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・41歳
・中国人
妻は日本人なので国際結婚です。
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▼ 浮気相手の女性B子
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・36歳
・元・中国人(浮気後、日本国籍を取得)
※ 夫Aの浮気がスタートした時点での年齢
どんな事件か
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▼ 社内恋愛
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夫Aと浮気相手B子の出会いは会社です。
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▼ 聞いてくれよ...
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夫Aと浮気相手の女性B子が食事に行ったときのこと。夫Aは妻のことをグチります。グチはこんな感じです。
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・妻は利己的だ
・自宅マンションを買うときもお金を出さなかった
・家のものは私だけが用意した
・私は中国に帰りたいが妻が同意しない
・国際結婚は苦しい
・妻が中国人でないことの苦しさ
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B子は「かわいそうだな...」と感じました。
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▼ B子が転職
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その4か月後。浮気相手の女性B子は転職することになりました。B子は夫Aからのアプローチを断っていたのでしょう。「友人以上の関係にはなりたくない」と伝えました。しかし、
夫A
1.「妻との夫婦関係はオワっている」
2.「家庭内別居だ」
3.「妻とは将来離婚するつもりだ」
とプッシュしました。これは既婚男性が女性を口説くときの3種の神器と呼ばれていますね。マジのこともありますけど93.5%はウソです(令和5年度の最新の司法統計で明らかになっていません)。けどこのパーセンテージ、いい線ついてません?w
そのままの流れで、2人は男女の関係になります。
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▼ …中絶
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その後、浮気相手の女性B子は2度、中絶します。
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▼ B子をブン殴る
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おいおい。
ーーー 夫Aさん、なんでまた?
夫A
「B子が交際相手を探すためにネットに自分の写真を掲載していたからです」
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▼ 別れてほしい
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浮気相手の女性B子は暴力を振るわれて耐えられなかったのでしょう。「別れてほしい」と夫Aに伝えますが、夫Aは聞き入れず。
ストーカーと化します。
・B子の勤務先に来たり
・自宅周辺で待ち伏せたり
・しつこく電話をかけてきたり
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▼ B子が警察に相談
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浮気相手の女性B子は、1年以上にわたり警察に何度も相談しました(判決文からは明らかになってませんが、警察は「事件性なし」と判断して動かなかったと推測します)。
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▼ 墓場まで...
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浮気相手の女性B子は再度、夫Aに「別れほしい」と伝えました。
しかし、A夫は「警察のアドバイスなど聞かずに私との交際を続けてほしい」「あなたが私の下に戻るまで待つ。死ぬまでゼッタイにあきらめない」とメッセージを送信しました。
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▼ B子の復讐
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浮気相手の女性B子は「なんで私だけ苦しまなければならないの...」と感じていました。ついに復讐に出ます。
■ 妻に嫌がらせ電話
妻の携帯や自宅の固定電話に無言電話をかけました。1日に十数回。妻の携帯にも中国語で「悪い男」と怒鳴るメッセージを残しました(「このバカ女」とも発言したと夫Aは言ってます)。
■ 手袋を投げつける
浮気相手の女性B子は妻が車を運転しているのを発見します。その車に手袋を投げつけました。
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▼ またブン殴る!
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夫Aがまた暴れます。浮気相手の女性B子を殴りました。B子は病院に緊急搬送されます(どんな暴行かは不明です、左側頭部打撲、右臀部(でんぶ)打撲という症状からすると、殴って蹴った可能性が高いです)。
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▼ 体の関係に終止符が打たれる
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初回の暴行を受けてからも体の関係はありましたが、付き合ってから約4年を経て終了します(暴行を受けてからは関係に応じざるを得ない状況だったのではないでしょうか...)。
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▼ 強盗傷害事件発生!
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夫A、3度目の大暴れです。今回は次元が違いますよ。
浮気相手の女性B子が同僚と中華料理店でランチしていたときのことです。
夫Aと同僚もその店に入ってきました。夫AがB子の席に近づきます。
B子の同僚が不穏な空気を感じたので、盾となります。「B子はアナタと別れたがっているのに、なぜ無理やり付きまとうのか」と言い放ちました。
すると、夫Aがブチギレ。B子の顔を殴りました。やめろ! 夫Aの同僚が止めに入って暴行は収まったものの、怒りは収まりません。
夫A
「別れたければ50万円を払え」
B子は50万円を振り込みました。
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▼ 逮捕
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3か月後。夫Aは逮捕勾留されます。
その後、妻に浮気がバレて、夫婦関係の破綻は決定的となりました。
妻Aが浮気相手の女性B子に慰謝料400万円を請求。
ジャッジ
裁判所
「B子は妻に慰謝料170万円を払え」
ーーー B子さん、不服そうですが
B子
「私が非難されるのは筋が違うと思います。だって、夫Aから妻の愚痴を聞かされ、夫Aのことをかわいそうだと思って交際を始めたからです」
裁判所
「たしかに夫Aはいろいろと愚痴を言ってたようだし、『将来、妻と離婚するつもりだ』なんて言ってたようだけど、あなたと付き合ってる間いつまでも離婚に向けた動きがないし、家庭内別居状態じゃないことも気づいてましたよね。だからあなたには非難されるべき事情があるのです」
B子
「としても、暴行を受けた以降は、夫Aからストーカーのように追いかけられていたんですよ。私は...被害者です。自分から望んで夫Aと接していたわけではありません」
ーーー たしかにそうですよね。拒否したら何をされるか分かりませんもんね。裁判所さん、どうですか?
裁判所
「B子さんが不法行為責任を負うことに変わりはありません。夫Aにカギを壊されたことやカバンをひったくられたことについて被害届を出していないし、警察への相談や110番を繰り返してはいますが性的関係を続けているからです」
■ 雑感
うーん、けっこう厳しい判断ですね。裁判官によっては「ある時点以降は性行為に応じざるを得なかったのでB子に責任ナシ」と判断する人もいると思います。
ほんで、慰謝料なんぼ?
ーーー 慰謝料を170万円とした理由は何でしょうか?
裁判所
「以下の事情を考慮しました」
〈慰謝料アップ要素〉
・不貞行為は約4年も続いている
・2度も夫Aの子を中絶。妻の精神的苦痛は大きい
・夫婦関係の破綻が決定的となった
裁判所
「あと、B子は妻に嫌がらせ電話したり、手袋を投げつけたりしていますが、この嫌がらせ行為は執拗(しつよう)かつ悪質」
■ 注意!
浮気相手が本妻 or 本夫にイランことをすると払う慰謝料がアップする材料となります。
〈慰謝料ダウン要素〉
・浮気相手の女性B子は暴行を受けていた
・精神的にカナリ追い詰められていた
ーーー 嫌がらせで慰謝料がどれだけアップしたんでしょうか? あと、ダウン要素でどれくらいダウンしたのでしょうか?
裁判所
「・・・。当裁判所は本件に顕(あらわ)れた一切の事情を考慮して慰謝料を算定しました」
ーーー もうちょい詳しく聞きたいのよ!
裁判所
「これにて閉廷!」
■ 解説
裁判官の脳内は分かりません。いろんな事情をミックスして判断し、慰謝料をハジき出します。なので、裁判するときには自分にとって有利な事情をドシドシ伝えていく作業が大事です。
裁判官が何を拾ってくれるか分からないのでドシドシ出していくのです。ただし、関係がうっすいものを出しすぎると裁判官にウザがられます。選別が大切です。
今回は以上です。またお会いしましょう!
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