学校内のセクハラ・パワハラ見ないふりが日常!? 教職員間ハラスメントの深刻度

弁護士JP編集部

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学校内のセクハラ・パワハラ見ないふりが日常!? 教職員間ハラスメントの深刻度
(写真・PIXTA(ピクスタ))

子どもの手本となるべき教育現場の責任者自らがハラスメント行為で処罰を受けるというショッキングなニュースが続いている。

2021年10月5日、徳島県教育委員会は、自らが校長を務める学校の女性職員に、写真撮影のモデルに誘うなどのセクハラ行為をしたとして、徳島県内の公立小学校の男性校長(61)を停職1か月の懲戒処分を下したと発表した。元校長は女性職員に対し、「良いアルバイトがある。あなたが(撮影対象)モデル」など複数回に渡り誘い、女性に無断でスマホ撮影をしようとしたという。

9月には、福島県内の小学校で、50代の女性校長が部下の男性教諭にパワーハラスメント(以下パワハラ)を行ったとして、県教育委員会から減給3か月の懲戒処分を受けている。この校長は、部下の男性教諭に関して、「挨拶を無視」、「児童の前で叱責、嫌味を言う」など、パワハラ行為を繰り返していたという。

また、これはハラスメントから逸脱する行為ではあるが、2019年秋にはSNSを中心に、被害者の教師に激辛カレーを無理やり食べさせるという動画が拡散され大きな話題となった「神戸 教員間いじめ・暴行事件」なども発生している。

公立学校教員の異常な長時間労働が問題視されるなど、成人となった我々が日常的に接することのない教育現場では何が起きているのか。昨年、東京都教育委員会が行ったアンケート(回答数 1万6815件 ※回答率 約25%)によれば、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した教職員は21.6%。

また、「自身の言動についてパワハラだと指摘等を受けたことがある」と回答した加害者の教職員の職層として一番多かったのが、校長・副校長(34.8%)であり、民間企業同様、職務上の地位の優位性を背景に精神的(あるいは肉体的)苦痛を与えるという構図は変わらない。たとえ周囲の教員がハラスメントに気がついていても、あえていえば閉鎖的な学校内の人間関係に波風を立てまいと「見て見ぬふり」が横行している可能性もある。

学校内で教職員以外に生徒・児童がいるという特殊性

労働問題(含ハラスメント)に数多く対応してきた経験のある横井浩平弁護士に学校の教職員間のパワハラが問題化しやすい理由を聞いた。

横井浩平弁護士: 「学校内に限らず、一般企業でも上司から部下といった優位的地位からのハラスメントの割合が多い傾向にあります。そのような分かりやすい「職位」だけではなく、部下から上司へなど人間関係等の「職場内の優位性」を背景としたケースも実は少なくありません。

一般企業の場合には、取締役、従業員、場合によってはお客さんといった関係性の中でハラスメントが発生します。学校内では、先生以外に生徒・児童がいるという特殊性が挙げられるかと思います。

個別に叱責したのか、あるいは生徒・児童の前で叱責したのかによって被害者のダメージの度合も異なりますし、そこがパワハラ認定のポイントともなり得ます。ハラスメントを行っている側も悪意がなく無自覚な場合も多いので、周囲が気づかないうちに問題化、大ごとになりやすい傾向にあるようです」。

パワハラ防止法で従業員が完全に保護されているとは言い難い

2020年6月から施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、民間労働者のみならず地方公務員や教職員も保護の対象となっているが、現状何らかの効果は出ているのであろうか。

横井浩平弁護士: 「パワハラの定義の明文化、雇用管理上の措置の義務化によって、雇用側の意識という面では、一定の効果は出ていると思います。ただし、パワハラ防止への方針などを明確化しなかったからといって、それに対する罰則は設けられていません。

パワハラが発生した場合には、使用者責任、安全配慮義務により、雇用している側に損害について賠償する責任が生じます。したがって現状、被害者が損害賠償請求を行うということが現実的な対応となりますので、この法律によって教職員を含めた従業員が完全に保護されているとは言い難いかもしれません」

学校のようにコミュニティが狭くなるほど、客観的に状況を見ることが難しく、自分がハラスメントを受けているのかの判断もできなくなることも少なくないという。精神的に追い詰められることのないよう対策が必要である。

横井浩平弁護士: 「被害を最小限に食い止めるためには、まず自分がハラスメントを受けているとはっきりと認識すること。相手の発言・行状を録音などで記録する。そして、可能な限り職場から離れた自分自身を否定しないような味方をつくることが大切です」

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