「Snow Manに会うため」TBSに不法侵入? “行き過ぎたマニア”の「執念」に問われる罪
「ジャニオタがTBSの特番『音楽の日』のバックステージに不法侵入した」とのツイートが7月中旬に拡散され、物議を醸した。不法侵入したのは若い女性とみられ、ツイートによれば、その女性は「TBSの制作に携わっている人物」から入館パスを提供してもらい、ジャニーズの人気グループ「Snow Man」と廊下ですれ違ってあいさつしたり、同じエレベーターに乗ったりしたという。
にわかに信じがたい話ではあるが、真相を探るべく、本件の詳細についてTBSの広報に問い合わせたものの、期日までに返事はなかった。
たびたび現れる“行き過ぎたマニア”たち
TBSの件について真偽のほどは不明であるが、本件に限らず“行き過ぎたマニア”による不法侵入事件はたびたび発生している。
- 高校生が電車の乗務員室に不法侵入(2023年、東京都)
JR東日本の社員になりすまし、走行中の電車内の乗務員室に侵入した17歳の男子高校生が、鉄道営業法違反の疑いで家裁送致された。高校生は自作の社員名札を身につけており、調べに対し「鉄道が好きだった」「運転しているところを間近で見たかった」などと話していたという。
- 警察署に侵入し制服を窃盗(2023年、北海道)
庁舎に侵入し、男性警察官のロッカーから夏用制服や制帽などを盗んだとして47歳の男が窃盗、建造物侵入の疑いで逮捕された。男は盗んだ制服に上半身だけ着替えて外に出たところ、パトカーの洗車をしていた警察官に見つかったという。調べに対し「警察官の制服に憧れがあった」と供述したそうだ。
- 偽議員バッジで官庁侵入(2022年、東京都)
偽の国会議員バッジをつけて官公庁や国会への侵入を繰り返していたとして、当時22歳の男が建造物侵入や窃盗の容疑で逮捕された。男は逮捕後の調べに対し「偉い人の気分になりたかった」などと供述したという。
なお、警察官、自衛隊員、国会議員などは、たとえ不法侵入しなかったとしても、軽犯罪法第1条15号(※)により、“本物そっくり”にコスプレすることそのものが違法となるので、注意が必要だ。
※ 軽犯罪法第1条15号は「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者」は拘留又は科料に処するとしている
“行き過ぎたマニア”による不法侵入の法的問題は?
TBSの件については不明であるものの、もし仮に、本来は関係者でないのにもかかわらず、関係者のふりをしてテレビ番組のバックステージなどのような「関係者以外立ち入り禁止」の場所に入った場合、どのような罪に問われる可能性があるのだろうか。
刑事事件の取り扱いも多い杉山大介弁護士は「建造物侵入が一番ピッタリ来ますね」と指摘する。
また、本来は関係者でない部外者を、あたかも関係者であるかのように侵入できるよう手配した人物については「建造物侵入の共犯」になり得るという。
「ほう助なのか共同正犯なのかはあえて議論しようと思えば気になりますが、内部の協力者なしに犯罪は成立しないことや、“オタク仲間”として何らかの対価を得ることもできていたとすると、共同正犯(侵入者とまったく同じ罪の重さ)として扱うのが妥当になるかと思います。
さらには、SNSの投稿が拡散されて、身分証パスの管理体制の確認などが会社に生じたとすると、少し前に話題になった『スシロー』の迷惑行為と同じく業務妨害の問題にも発展するかもしれません。
残念ながら、“行き過ぎたマニア”のように厄介ごとを起こす人物は、見せしめの意味でも、定期的に法を執行しなければ増長してしまうのが現状なのではないでしょうか」(杉山弁護士)
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