林眞須美、植松聖死刑囚らが作品を出展する「死刑囚表現展2021」が開催
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優れた絵画や詩などの芸術作品は、視点の多様性や想像力の刺激など、人々に何らかのインスピレーションをもたらす。それらが死刑囚によって創られたものと聞いたら、私たちはどう受け止めればよいのか。
観る側に何かを突きつけられること必至な「死刑囚表現展2021」が、11月5日(金)から東京都中央区の松本治一郎記念会館で開催される。
17回目となる表現展の始まりは2005年。連続企業爆破事件を起こし死刑囚となった大道寺将司氏(2017年獄中にて病死)の母親である大道寺幸子さんの「死刑制度をなくしたい」という意思をついで、遺された預金を元に基金が創設された。それらは死刑囚の再審請求等への補助金、死刑囚表現展の開催と優秀作品の表彰のために使われることになったという経緯だ(後に冤罪で出所した元死刑囚赤堀政夫さんから会への資金提供の申し出があり「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金」となる)。
今回は、和歌山毒物カレー事件の林眞須美(60)、相模原障がい者施設殺傷事件の植松聖(31)、秋葉原通り魔事件の加藤智大(39)ら20人の死刑囚が描いた数百点に渡る作品が展示予定。 毎年7月末を〆切として公募し、6~7人の選考委員が講評を行い独自に定めた各賞の受賞作品が決められるという。
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例えば平成20年、7人が死亡、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件(秋葉原通り魔事件)の犯人として死刑囚となった加藤智大は216枚の文字作品と14点の絵画作品を応募。「自己内対話、自分の中で対話が成立している。自分の間違いに気づいているし、人間としての欠点も、このような書き方が甘えであることも自覚している」(選考委員)と評されている。
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また、平成23年、象印マホービン元副社長ら2人を殺害し、金品を奪った罪に問われた事件(堺市資産家連続殺害事件)で死刑判決を受けた西口宗宏の作品は、「美術学校の生徒の作品にも通ずるような本格派。自分の言いたいことを露出したというわけではなく、表現をするにはどうしたら良いか、というプロセスを積んでいる作品」(選考委員)とその完成度への評価は高い。
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「鬼みたいに思っていた死刑囚も、我々と同じように絵や詩を描くんだと。こんな絵を描いた人が、なんであんな事件を起こしたんだろうとみんなが考えることがすごく大事なことだと思います」と展示担当者の深田卓さんは語る。
いまだに多い「死刑囚に表現の自由を与えて良いのか」など開催に対する拒否反応に対しても、「それらの反応は仕方ないことです。ただ、加害者に対して目を背けないで欲しいとも思います」(深田さん)。
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昨年の10月の開催直前には、ネットTVの放送などもあり来場者数1985人と多く、年齢層は10代~80代と実に幅広いという。
「死刑を廃止すべきだと思わないし、主催側との意見は合わない。ただ、表現を見て、死刑囚も生きている人間であると感じた」(アンケートの一部)
など来場者の反応もさまざまだ。深田さんは「死刑廃止反対の人も是非見に来て欲しい」と話す。
死刑囚表現展は11月7日(日)まで開催される(入場無料)。
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